46 本題
午前中はサナと一緒に歌のレッスンをした。
サナは朝のラジオ体操が終わるとすぐ今日の分の宿題を終わらせて、私の為に付き合ってくれたのだ。
幾つかダンスをアレンジしたので見てもらい、その中で一番いいものを選んでもらった。
また、気になる所や改善策を一緒に考えたりもした。
ところで、この小学生めっちゃセンスあるんですけど……。
時は過ぎ現在午前11時。
サナも学校のプールに行ってしまった。
そして今、私は居間のソファーに座っている。
目の前には先程やって来たAIポリス兼見習いナビゲーターのナミエさんがドカッとソファに座り足を組んでいた。
私は彼女を睨みつける様にして言った。
「あなた知ってましたよね。」
ナミエさんも私を見下ろすような鋭い目つきで言った。
「勿論、知ってたわよ……。当たり前でしょう。」
私は彼女に詰め寄り怒鳴った。
「じゃあ何故あの時教えてくれなかったんですか!」
彼女はフンと横を向きながら言った。
「言えるわけないでしょうが! 社……。」
私は身体を震わせながら堪えていた……。
彼女は満を持して遂に叫んだ。
「言えるわけないでしょう! 社長の名前がモジャオだなんて!」
ブワーーーーッハハハ!
ヒャーッハッハッハッハ!
「や、やめて~。もう、もうダメ耐えられない!」
アーーーーッハッハッハッハ!
2人は笑い転げた。
ナミエさんは一息ついて呼吸を整えながら言った。
「はあはあ、いやいや参った。参りました。」
私も込み上げる笑いを抑えながら言った。
「ふうふう。でも他の事は私にばんばん言ってくれたのに何で言ってくれなかったんですか。」
「え、何? モジャオの事?」
ナミエさんが『モジャオ
』の所を変な風に言うもんだから再び笑いが込み上げて来た。
アーーッハッハッハ!
ヒャーッハッハッハッ!
「もう、折角収まって来たのに!」
「ごめんモジャ。」
ダーーッハッハッハ!
アッハッハッハ!
私たちは手を叩いて笑い転げた。
「はあはあ。もうやめましょう。ホント苦しい。」
「そうですね、ホントやめましょう。はあはあ。」
「……。」
「……。」
ナミエさんは私の油断に付け入る様に言った。
「冒険王子モジャ?」
プフッ!
更に変顔で私を追い立てる。
「冒険王子モジャモジャ?」
アーーーーッハッハッハ!
ブヒャーッハッハッハッハ!
私は笑いながらもナミエさんにハッキリ言ってやった。
「ちょっともう! 本当に怒りますよ! はあはあ。いい加減にしてください!」
ナミエさんは笑いを何とか堪えながら謝った。
「いやいやいや、ごめんなさい。ホントもうしません。はあはあ。」
「ふう……。」
「はあ……。」
「……。」
「……。」
ナミエさんは目を寄らせて下唇を突き出しながら変な声で言った。
「こんにちは。社長のモジャオです。」
アッハッハッハ!
「ちょっと! 変な顔で変な声出さないでよ!」
変顔変声は更に強烈になった。
「モジャオにぴったりの声モジャ。」
ダーーッハッハッハ!
アーーーーッハッハッハ!
「もう! モジャオ……ウプッ……モジャオ禁止‼ ……あと冒険王子……ぷっ」
アーーーーッハッハッハ!
ヒャーーッハッハッハ!
「いや、今のは自爆だから! ふぅふぅ。私じゃないから……!」
「もう! で、今日は、はあはあ、何の用事だったんですか!」
「あ、山本なんだけど、脱獄しました。」
「え?」
【人物紹介】
私 … 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のオーナー】
本田サユリ … 私のオーナー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のオーナー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
ナミエ… 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。新米ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手




