04 鏡の中の私
一体何が起こっているのか。
私は少女たちに向かって叫んだ。
「お~い!」
何度呼びかけても反応がない。
少女は画面の下の辺りを見ながら言った。
「部屋の色を決めてください。だって。」
「あぁ、好きな色でいいんじゃない。」
「じゃあピンクで。」
すると真っ暗だった周囲にピンク色の壁が出現し、光り出した。
「ここで明るさとか、濃さとか調節できるよ。」
「わかった。」
壁のピンクが薄い桜色に変化して行く。
「そしたらエンター押して」
「はい、完了っと!」
どうやらゲームか何かの初期設定をしているみたいだ。
私の呆けた間抜け面であろう顔面は向こうからは見えていないらしい。
「キャラメイクはこれを押すだけ?」
「そうだね。それ、押してごらん。」
モニターの枠が白く発光し、画面右上には『交信中』の青い文字が表示された。
「こんにちは!」
少女はこちらに向かって挨拶をして来た。
え? 私に話しかけてる?
困惑したが、『え~い! ものは試しだ!』と、思い切って挨拶を返してみた。
「こんにちは~。」
姉は少女の後ろからこちらを覗き込みながら言った。
「お、結構かわいいじゃん。」
「うん。」
少女は満足気に答えた。
かわいい……私のこと言ってんの?
しかしてこの状況。
まぁ取り敢えず、異世界ほぼ確定ですな。まじか~~!
状況が呑み込めず色々面喰っていると、いきなりのリクエスト。
「ねぇ、パラキューレのドキドキSP歌って。」
お姉ちゃんが横から口を出す。
「あぁ、まだ無理無理。最初はもっと簡単な歌じゃないと。」
「簡単な歌って?」
「ほら、このマニュアルに載ってるやつとか。」
おぉ。この世界でもパラキューレやってんだ。
パラキューレとは女児用魔法少女アニメである。当然大人のファンも多い。
「多分歌える……。」(てか十八番です。)
私がポツリと言った言葉に少女は喜びの笑みを、お姉ちゃんは驚愕の表情を浮かべた。
「え、まだ調整もしてないのに会話に入って来てる……。」
「歌って!」
すると曲が流れてきた。
『もう破れかぶれじゃ~い!』
私は歌った。しかも振り付きで! 完璧なまでに見せつけてやった!
『ドヤーーー!』
この高揚感は夏祭りの歌唱大会「子どもの部」で優勝した時以来だった。
「うま~い!」
途中から一緒に踊っていた少女が息を切らしながら褒めてくれた。
お姉ちゃんの方はビックリした様子でこちらを眺めている。
「確かにAIも最新バージョンだし、QCもいいやつ載せてるけど……。」
少女はこちらをキラキラした眼で見つめながらリクエストした。
「ねぇ! もう1回歌って!」
出たー! 子どもならではのタフネス!
でもどうだろう。
あんだけ歌って踊ったのに全然疲れてない。
寧ろもっと歌いたい。
より完璧に!
問答無用で曲が流れて来た。
「よーし! もう1回行くよ~!」
アイドルの口癖、抜けてない様だ。やったるか!