39 蛯名モコの休日
ミネルヴァが覚醒した翌日。
蛯名モコは先日の土日出勤分の代休を消化すべく部屋でゲームに勤しんでいた。
「よし! やっぱりバフ入れといて正解。」
そう言えば、春日クルミがオーナーを務めるニーケ・ヴィクトリアの言っていた事は本当なのだろうか。
「うわ、やばい! 回復回復回復!」
株式会社3Dボーカロイドの第6研究開発部主任である彼女は、その肩書からは想像もできない程の美人である。
今まで何度もスカウトされたり、周りの人に芸能界入りやオーディションを勧められたりもして来た。
しかし、蛯名は全く意に介さないどころか、こう思うのであった。
何故好き好んで有名になりたがるのか全く理解できない。
人に顔を知られたら何もできなくなるじゃない。
芸能界なんて忙しそうで窮屈で疲弊しそうで、何より変な人が集まる確率もメチャ多そうで……。
自分には何の魅力も感じない。
まあ、だからこそ芸能界で仕事をきっちりやり切ってる人は逆に尊敬できる。
でも私には絶対無理。
さて、蛯名がこの若さで主任となったのには理由があった。
切っ掛けとしては大学時代に講師としてお世話になった蟹江ジュンの存在があった。
蛯名は蟹江がこの会社に勤務している事を知らずに入社したのだが、初任者講習で再会してからは色々と話をする様になった。
そうこうしていく内にお互いのことを知り合う様になったのだ。
と言うよりは単純に馬が合っただけなのかもしれないが……。
実は蛯名が主任を務めるこの第6研究開発部というのは、想定外または他の開発部の何処も対処できない様な問題を取り扱う部署であった。
こんな何が飛び出すかわからない様な部署は当然成り手も無く、ましてや主任など誰も引き受けようとしなかったのだ。
実質『第6』の仕事は『第1』の主任である蟹江が対処していた。
蟹江は蛯名こそ、この仕事に適任だと考えていた。
蛯名は特に断る理由もなかったので首を縦に振ったのだった。
「やってみる?」
「ええ、いいですよ。面白そうだし。」
さて、現在蛯名はそのお陰でエキサイティング且つスリリング、それでいてジョイフルな毎日を送ることができていた。
連日起こる不可思議な事象。
ほとんど号泣していて思考停止してはいたが、冷静になって振り返ると……また泣けてくる……。
しかし、先日の『ニーケの前世』の話しはあまりにも異質、正に不可思議の極みと言えた。
そう。『魔法』や『ジョブ能力』の存在である。
まるでゲームの世界……。一体何故そんな世界が成立するのか。
蛯名は1つの可能性を探っていた。
ニーケたちのいた世界は今と同じような世界、つまりバーチャル空間だったのではないだろうか。
そういうのどっかで読んだことあるし……。
けど、それにしては彼女たち、あまりにも『人間』である。
相当高度な文明だったのか。それとも……。
「うおーい! 一撃で乙った……。調整間違ってんじゃないの? これ……。」
【時系列】※参考なので読まなくてもいいです。
6/25土 私、転生す
6/26日 イベントお知らせ
6/28火 イベントエントリー
7/3日 叔父と会う。サナ友4人登場
7/10日 イベント結果発表。蟹江さん登場
7/11月 カラオケ予告
7/16土 カラオケ大会。部屋の増築
7/17日 山本擬人化
7/19火 前世の話。蛯名さん登場
7/21木 アテナ覚醒。サユリはレポート作成中
7/22金 クッキー事件。ナミエ擬人化。サユリレポート終了
7/23_24土日 株式会社3Dボーカロイドで会議
7/25月 ファランクス残り3名の『覚醒』計画が提案される
7/26火 ファランクス残り3名の『覚醒』計画が始動する
7/27水 ファランクス残り3名についてオーナーの了解を得る
8/1月 メーティス覚醒
8/2火 ニーケ覚醒?
8/3水 ミネルヴァ(ミナミ)覚醒。夏フェス参加決定。【36話】
8/4木 レッスン部屋増築。サナとサユリの両親帰国【38話】【39話】←今ここ
8/10水 ミネルヴァ沈黙【37話】




