31 データは整理整頓しないとね
メーティスのオーナーである星カナデは暫くの間、喜びと驚愕による興奮に見舞われていた。
カナデが少しずつ落ち着きを取り戻して来た時、どこからか聞いたことがある様で聞きなれない声がして来た。
「カナデさん! メーティス!」
モニターに映り込んだのはアテナの姿だった。
カナデとメーティスはアテナの覚醒した姿を見て気が付いた。
「もしかして、アテナも?」
蟹江さんがカナデとメーティスに今までの経緯を説明した。
「ごめんなさいね。何か……巻き込んでしまって。一応元に戻せるとは思うんだけど……。」
カナデは首を横に振った。
「いいえ、メーティスも喜んでいますし、私も嬉しいです!」
蟹江さんはカナデの様子を窺った。
「だって、大好きなメーティスとこんな、人間みたいに話せるなんて素敵過ぎます!」
「そお? 本当に大丈夫?」
「勿論です。メーティスのこんな凄い成長は想像してませんでしたけど……。こうなったのはきっと運命だと思います。」
「そう、それならよかった。」
蟹江さんは一先ずホッとして笑みを浮かべた。
カナデの話しに呼応するかの様にメーティスは自分の考えを述べた。
「カナデにそう言ってもらえるなら、私も喜んでこの状況を受け入れましょう。」
カナデは嬉しそうに声をかけた。
「メーティス……うん!」
アテナは横から割り込む様に話しかけた。
「良かった。カナデさん、メーティス、これからもよろしくね。ま、今まで通りとは行かないけど!」
3人は笑顔を交わした。
カナデは残りの2人について、私たちの計画に協力すると言ってくれた。
「柿月君とアテナが出した答えなら、私たちも協力します。」
メーティスは頷いた。
「ああ。確かにニーケとミネルバが私たちの様にうまく行くとは限らない。だが覚醒できればきっと私たちに賛同してくれるものと確信する。その為の協力は惜しまないつもりだ。」
アテナはメーティスのこの言葉を聞いて自信を持った様だ。
「ええ、ファランクス存続の為にも2人の覚醒は絶対必要だわ。何としても成功させましょう!」
明日の予定を確認した後、皆それぞれの場所に帰って行った。
サユリも「今日はもう疲れた。明日もあるしもう寝るわ。」と言って部屋から出て行った。
「今日は私も早めに寝ようかな。」
私は眠らなくても平気なのだが、睡眠中に蓄積されたデータを自動で解析、整頓することができる。
今日は色々な事があったから解析すべきデータも膨大だろう。
新しい何かが分かるかもしれないしね。
私は寝室へ行きベッドに横たわると睡眠モードに移行した。
ん……。ここは、夢?
「〇〇〇! 〇〇〇! 大丈夫!?」
誰だっけ。聞き覚えがある声……。あ、ヨシエか……。
どうやら、ヨシエが私の名を呼んでいる様だ。
「救急車! タオルでお腹を圧迫して!」
ああ、スミレ……。こんな大きな声出るんだ……。
みんな、元気でやってるかな……。
ん? 涙……。
私はハッと目が覚めた。
涙が流れた様な気がしたが、どうやら気の所為だった。
何だったんだろう。死ぬ間際の記憶かな?
少しの間気にはなっていたが、今日はそうゆっくりもしていられない。
私は居間に行き、ソファで朝食を取った。
気持ちは既に夢から離れ現実を見据えていた。
「今日は2人目か。」
私は成功を祈った。




