03 私の最後…そして何か始まっちゃった?
会計は新人のカナちゃんだった。
「お会計お願い~」(←しゃがれ声)
私が近づくとカナちゃんはにこやかに対応してくれた。
「声、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫大丈夫!」(←しゃがれ声)
「え? え?」
カナちゃんは急に困惑した感じで後ずさりし出した。
私は後ろを振り返った。
すると、帽子をかぶった小太りの男がナイフを手にしてつかつかとヨシエに向かって一 直線に歩いて来るではないか。
ヨシエもスミレもこちらを向いており気付いていない。
私は咄嗟にヨシエと刃物男の間に入り叫んだ。
「やめなさい!」
その瞬間お腹の辺りにドンと強い衝撃が加わった。
大量の血が床に流れ落ちるのが見えた。
『刺されたか。』
薄れゆく意識の中、刺した男の匂いがした。
「く、臭ぃ……」(←しゃがれ声)
それが私の今生最後の言葉であった。
気が付くと私は暗闇の中に居た。
「死んだのかな? 私……。」
どうやら宙に浮いてるみたいだし、お腹も全然痛くない。
「まさか、ずっとこのまま真っ暗闇じゃないわよねぇ。」
私は少し不安になった。
「あ~あ~あ~。うん! 声、元に戻ってる!」
不安の方向が少し変化した。
だが、せっかく声が治ったのに聞かせる相手がいない。
「な~んてこった~い!」
その時パッと光が刺した。
眩しくて思わず閉じてしまった眼をゆっくりと開く。
目が慣れるのに数秒かかったが、何とか薄ぼんやりと見えてきた。
目の前の光源はモニターの様なものであった。
モニター越しに少女がこちらを見つめており、目をパチクリさせていた。
「お姉ちゃん、これでいいの?」
「うん、大丈夫」
少女の後ろから姉らしき人物が映り込んだ。