28 四者会談
時間となり4人はモニター越しに集まることができた。
「はじめまして。フィナのオーナーやってるサユリと言います。先程は失礼しました。」
恥ずかしそうに頭を搔くサユリを皆笑顔で迎えた。
「えっと、呼ぶ時はサユリで結構ですので。」
「こんにちは。蟹江です。ええ、じゃあサユリさん。でいいんですか?」
「はい。」
「サユリさんとはメールで連絡は取ってましたけど会うのは初めてですね。よろしくお願いします。」
続いて蛯名さんが少し遠慮がちに自己紹介した。
「第6研究開発部主任の蛯名と申します。サユリさん、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
う~む、やっぱりこの人の美しさ、アイドルでもトップ取れるレベルだよ?
何故に研究職……。
「そうだフィナさん、さっきの話し。まだサユリさんにも話してないって言ってたわよね。」
「はい。昨日あった事なんですが、まだ話せてません。」
蟹江さんは蛯名さんとサユリの方を交互に見ながら言った。
「昨日この子ファランクスのアテナと会ったのよ。」
サユリは思い出す様に言った。
「あ、もしかしてヨナちゃんの所の?」
「はい、そうです。」
蟹江さんはサユリの方を見ながら言った。
「ああ、知ってたんだ。」
「はい。この前カラオケに行った時、ヨナちゃんがフィナと会わせたいって言ってたんです。」
「そっかそっか。そうゆう縁てわけね。で? どうだったって所まで話しは行ってたんだよね。」
「はい。で、何と言いますか……説明しにくいんですけど……。」
その時、蛯名さんが話しかけて来た。
「なら、スキルを使ってアテナさんとの会話を再現したらいいんじゃないですか。フィナさんが良ければですけど。」
え? そんなことできるの?
「あ、そうしてもらえると分かり易いかもしれない。」
サユリは蛯名さんの言ったその方法に賛成した。
私は蛯名さんにスキル『見聞(保存)』の使い方を教えてもらい、当時の様子を再現した。
ちっ、スキルのこともっと詳しく勉強しとくんだったな~。
したら、かっこ良いとこ見せられたのに……。
映像が終わると何故か3人とも泣いていた。
「これは……。泣いちゃうよね。」
二人も泣きながら頷いた。
サユリは言った。
「何なの? この感動秘話……私がレポートに翻弄されてる裏で、こんな出来事が起きていたなんて!」
蟹江さんは鼻をすすりながら言った。
「でも、何なのかしらね……これは。あ、ごめんなさい。製造側の人間がこんな無責任なこと言っちゃって。」
サユリは考えている様だ。
「いえいえ。ただ、懸念はありますよね。」
「そうね。これは、向こうのオーナさんにも連絡取らなきゃ。」
蟹江さんは少し慌てている様子だった。
サユリはスマホを取り出しながら言った。
「ヨナちゃんの家に連絡しましょうか?」
蟹江さんはそれに待ったをかけた。
「いえ、これは私の方で、会社からオーナーに向けて正式に連絡した方がいいと思うから。」
「あ、そうですね。」サユリは納得してスマホを元に戻した。
「サユリさんありがとう。気を使ってくれて。」
「いえ、こちらこそ。」
「じゃあ、早速連絡取って状況確かめてみる。また、連絡するわ。」
「はい。何か気付いたことがあればまたメール送ります。」
ところで蛯名さんは、まだ号泣していた。
「あれは反則だよ~。いきなり……びっくりした。」
いや、未だに号泣してるあなたにびっくりだよ。
2人は取り敢えず通信を切った。
そう言えばヨナちゃんとアテナ、お兄さんに言ったのかな。
大丈夫だったのか? ホントに……。
何かめっちゃ不安になって来た……!(←大丈夫でした!)
【人物紹介】
私 … 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【前世】
ヨシエ … 前世で地下アイドルユニットを組んでいた仲間
スミレ … 前世で地下アイドルユニットを組んでいた仲間
カナ … バイトの仲間。新人
【私のオーナー】
サユリ … 私のオーナー。大学生。サナの姉。しっかり者
サナ … 私のオーナー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【サナの友だち】
山梨ユキナ … サナの友だち。9歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる
栗木ミナ … サナの友だち。9歳。元気。
桃園マナミ … サナの友だち。9歳。おしゃれ。
柿月ヨナ … サナの友だち。9歳。物静か。兄のユタカはアテナのオーナー
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … オーナーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
C73EHT-R… 通称ナミエ。新米ナビゲーター
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子




