27 サユリに打ち明けてみた
今日は金曜日。
サナは学校だが、サユリは既に夏休みモードだ。
モニターの向こうに昨夜爆睡して起きたばかりのサユリが映し出された。
「何か久しぶり~。」
私は久しぶりに会えた嬉しさもあり、笑顔で答えた。
「レポートお疲れさまでした。」
サユリはまだボ~としている。
「いや~。やっと休みに入ったわ。」
「夏休みですか。何かご予定でも?」
サユリは少しずつ目が覚めて来た様だ。
「まあ、これから考えるかな……。あ……。」
サユリは何か思い出した様な顔をした。
「そうだ。昨日蟹江さんから連絡来てたらしいんだけど、私寝ちゃって……。」
「お疲れでしたから……。」
「で、朝起きたらそれに気づいてさ。」
もしや、例の件かも。
「何か言ってました?」
「えっとね、私とフィナと蟹江さんと後……誰だっけ。」
「蛯名さん?」
「ああ、多分その人。4人で話しがしたいって言ってた。」
やっぱりあの話しっぽいな。
「いつですか?」
「う~ん。なるべく早い方がいいみたいな事書いてあったから……。昼頃連絡してみようか。」
「そうですね……。」
「何かある?」
「実は……。」
私は思い切って例の事を口にした。
「実は先日蟹江さん達と通話した時、私の話しになりまして……。」
「まあ、そうだろうね。」
「で、今までサユリさんにも黙っていた事なんですけど……。」
サユリは怪訝な顔をして私を見た。
「ん、何?」
私は少し緊張しながらも話しを続けた。
「私、ボカロになる前、普通の人間だったんです。」
「冗談……ではないよね。」
「はい。残念ながら。」
サユリは何度か頷くように首を縦に降った。
「わかった。まあ何かあるとは思っていた。正直ね。」
私は苦笑いしながら言った。
「最初の頃、かなり疑ってましたもんね。」
サユリは真顔で言った。
「そりゃ疑うって。疑うでしょう。だって……。」
「そうですよね。そりゃまあね。」
「でも……、まさか前世の記憶を持ってたなんて……。それは気が付かなかったわ。」
「すみません。今まで伝えようかどうか迷ってまして……。」
「いや、言われてみれば合点が行く事ばかりだよ。成程……。」
私は蟹江さんたちにしたのと同じ様に前世の事を簡単に話した。
「そうか、フィナ見直したよ……友だち庇って死ぬなんて……。」
あんたもそこか~い!
「てことは今日話す内容はそれ関連てことでいいのかな。」
「はい、恐らくは……。」
サユリはちょっと顔洗って来ると言って下へ降りて行った。
すると程なくして蟹江さんから通信が入った。
「はい、フィナです。」
「ああ、ごめんね。急に連絡しちゃって。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
蟹江さんの声聞くと安心するなあ。
「あの、それでサユリさんの方にも連絡入れたんだけど……。」
「あ、聞いてます。昼頃連絡するって言ってましたよ。」
「ああ、それならいいんだけど。はあ、良かった。今朝私が席を外してる間にサユリさんから連絡もらったみたいだったから。」
「はい。今ちょっと下に行ってます。多分シャワーかと……。」
「うん。あ、いいのいいの。そんなにすぐじゃなくても。」
私は蟹江さんに先程の事を伝えた。
「あ、蟹江さん。今さっき例の、前世の事、サユリさんに伝えました。」
蟹江さんはいつも通りの笑顔だ。
「そうなんだ。何だって?」
「ええ、最初は驚いてたみたいですけど、取り敢えずは信じてくれたみたいです。」
「うん、それなら話しが早いかもね。」
「ただ……。」
「ん、どうしたの?」
私はサナを通してヨナちゃん兄妹からも頼まれていたアテナ『覚醒』の件を伝えなければならなかった。
「実はもう一つお話ししなければならない事がありまして……。」
「なあに?」
「先日、サナちゃんの友だちのヨナちゃんが遊びに来まして、その子の家のボーカロイド、アテナっていうんですけど……。」
「あ、もしかしてアテナ・グラウクス? 4人でユニット組んでる。」
「はい、そのアテナです。ヨナちゃんの紹介で昨日初めて交信してみまして。」
蟹江さんは興味津々な顔をしながら聞いて来た。
「もしかして初めてだったんじゃない? 他のボカロに会うのって。で、どうだったどうだった?」
「それが……。あ。」
ちょうどその時、タオルで髪を拭きながらサユリが部屋に入って来た。
「あ、丁度よかった。今、蟹江さんと繋がってます。」
サユリは少し慌てたように言った。
「あ、ごめんなさい。そんな事とは知らず。ちょっと髪乾かして来ます!」
「あ、急がなくて結構ですよ。私も蛯名を呼んで来ますから。」
「あ、わかりました。じゃあ10分後位でいいですか?」
「わかりました。では10分後位に。」
サユリは言いながら自分の部屋の方に走って行った。
取り敢えず通信は繋ぎっ放しでいいよね。
さて、アテナのことどう言ったらいいのか。う~ん。




