表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
253/624

253 見知らぬ世界【他世界→3年前】

 今まで全体の支援や調整に徹していたみかどソヨギがゼウスに告げた。

「すぐに転送の準備を!」


 ゼウスは全員に叫んだ。

「もう時間がない! すぐに転送するよ!」


 ケラシスがダイビング装置を操作しながら応答した。

「ああ。だが二人はまだカプセルから出せないぞ。ううむ、やむを得ない! カプセルごと転送しよう!」


 鳥山イツキと香々美フジコは全力で能力スキルを発動させていた。

 十三体のエリプスたちをフル稼働して幾つもの真の真空世界を同時に創り上げながら対応していたが、それでもかなり押され気味だ。

「どうやらこっちの計画に気付いた様だ! こいつは……まずいぞ!!」


 歌寺ミナモも声を張り上げた。

「ちょっとこいつ……いきなり暴れ出した! このままじゃ追い付かない!」


 蛇代ヨウコは全力でサポートしながらその意見に激しく同意した。

「うぐぐぐぐ、禿同! 時間制限はどうなったの!?」


 ビーマがそれに答えた。

「本体がその戒を破った様です! ハジュンは……本気です! 転送、急いで!!」


 その瞬間、Z組の生徒たちは全員同時に強烈な光に包まれた。

 最後にクロートーの声が聞こえたが途中で断絶した。

「カプセルをたのみ…………。」




 非天レイカはまぶたに明るいものを感じ目を覚ました。

「ん、ここは……。」


 起き上がり、周りを見渡すとそこは窓もドアも無いガランとした部屋の中だった。

「皆は……無事なんだろうか。」


 彼女は立ち上がり壁に近付くとそっとそこに手を触れてみた。

 壁の冷たい感触が手のひらに伝わる。

 どうやらここはゼウスたちが言っていた他世界らしい。


 ゼウスたちの話によれば、ここは彼女たちに最も適した隠れ場所のはずであった。

 そして、始めは全員別々の場所に飛ばされるが、いずれ顔を合わせる事が出来るとの事だった。


 非天は仮想世界でやっていた様にずはオフィス用の椅子をイメージしてみた。

 すると、思惑通りそれは出現した。

「成程、ここでもイメージの具現化は出来る様だ。これは助かるな。」


 彼女はその椅子に座り、くるくると回りながら頭の中を整理した。

「確か、電脳歌手を手助けする人格型プログラム……だったよな。けど一体何をすればいいんだ?」


 ビーマからの連絡は最小限にしなければならない為、最初のコンタクトは事が落ち着いた頃との話だった。

 また、こちらの地球に関する情報を探るのも、少し待った方が良いとの事だった。


 非天はこのソフトのマニュアルを読み解いてみた。

 それによれば、隠れ家たるこのプログラムはかなり独特で、外部との情報入出制限が厳重らしい。


 勿論、非天たちならそんなものをくぐって情報を得る事は容易たやすい。

 しかし、それが元で怪しまれたりすれば何が起こるか分からない。

 プログラムをアンインストール等されてしまえば元の世界に戻されて、二度とこちらに来る事は出来ないかもしれないのだ。


 非天は目をつむり、時が来るのを待つ事にした。

 だが、そのわずか数分後、壁に異変が起きた。


 何事かと観察していると、その壁一面が大きなモニター画面となり、こことは別の部屋が写し出されていたのだ。

 モニターは四分割されており、左側上下にはその別部屋の側面と後方から撮った映像が、右下は待機画面で、右上の画面からは見知らぬ人々がこちらをのぞいていた。


 その別部屋はこちらと同じくらいの広さらしいが……中央には一人の少女が小型モニターに身体を向けてひっそりと立っていた。

 恐らくあの少女が電脳歌手で、この画面に映っているのがオーナーと呼ばれる人たちだろう。


 察するに、向こうからこちら側は見えていない様子だ。助かる。

 明るい感じの女性がモニターを覗きながらその電脳歌手に話しかけた。

「設定はこれで終わりみたいね。こんにちは。初めまして。私はかつって言います。勝レンゲ。」


 その少女はモニターを見つめながら棒読み調に声を発した。

「コンニチハ、カツレンゲサン。ハジメマシテ。ヨロシクオネガイシマス。」


 その声を聴いたオーナーたちはざわめいた。

「わあ、喋った! 可愛い!」


 すると今度は隣にいた男性が声を掛けて来た。

「こんにちは。私は武藤ユウノスケ。ま、これからよろしくね。そんで、君の名前はレイだ。レイちゃん!」


 非天レイカはレイと言う名を聞いて少しドキッとした。

「まさか、偶然だよな……。」


 少女は顔を横に傾けて質問した。

「レイダ、レイ・チャン、ドチラデスカ?」


 武藤はやや困惑気味に返答した。

「いやいやいや、えっとね……レイ! 君の名前はレイ!」


 少女は微笑を浮かべた。

「ワタシノナマエハ レイ。ステキナナマエ、アリガトウゴザイマス。」


 オーナーたちは安堵の表情を浮かべた。

「こちらこそよろしくね、レイ!」


 非天はこのやり取りを聞いて少し安心すると共に不安も感じた。

 前者はこのオーナーたちが善い人そうだった事だ。


 そして後者は電脳歌手レイについて。

 自分はこのレイをある意味教育して行かなければならないのだろうか?

 そう考えるとどうにも自信が持てないのだ。


 大学生の頃ボランティアで中学校や高等学校の講義を行った事はあるが……。

 非天は難しい顔をして下唇の辺りを指でそっとつままんだ。

「私に出来るんだろうか。ここにいる以上何もしないわけには行かないだろうし……。かと言って下手な事を教えてこちらの事が怪しまれでもしたら事だしな……。」


 そんな事を考えながら、非天はオーナーと電脳歌手レイとのやり取りを眺めていた。

「やはり、ここはしばらく様子を見ておいた方が良さそうだな。それに、この人たちは善人かもしれないが……。」


 非天はGmUゲームのいないこの世界について思いを巡らせた。

 それは以前から過去の資料を研究する中で幾度となく思い描いて来た産物でもあった。


 その中に於いて、彼女が特に警戒したもの。

 それは『悪』そのものであった。


 この世界の人々の中には非天が過去のデータでしか見た事の無い『悪人』と呼ばれる人たちが存在する。

 また、GmUによる矯正が無い為、『悪人』とまでは行かなくても本来なら誰しもが持つはずのエゴや欲求等に起因する悪心が発しやすい。


 それが本来人間の持つ自然な姿なのかもしれないが……警戒するに越した事はないのだ。

 何と言っても、彼女たちはそう言ったものに直接触れた事が無かったのだ。

 非天が今暫くは下手に動かず様子を見ようと考えたのも無理からぬ事だった。。


 それにしても、あののんびりとした感じ。

 強敵を打ち破る為の過酷な訓練の日々を送った後、今さっきまで熾烈しれつな状況下に身を置いていた非天にとっては、どうにも馴染なじめるものではなかった。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き

 香々美かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持

<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織

 ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。

 クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。

 ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ