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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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246 情報が早すぎる【他世界の話】

 ここにいた全員がそうであった様に、非天レイカはこの新たな展開に光明を見た思いがした。

 この子は(子と言ってしまって良いのか分からないが)高次元生命体の事を知っている!


 副担任の帝ソヨギはしゃがんだ姿勢のまま尋ねた。

「ビーマちゃんはわざわざそれを私たちに教えに来てくれたの?」


 ビーマは少し照れながら微笑んだ。

「はい、そうです。るお方に申しつけられて皆さんの所へせ参じました。エヘヘ。」


 蛇代ヨウコはそれを聞いて一人ほくそ笑んだ。

「キター! ご都合主義満載スキル持ちの助っ人ちゃん!」


 北守カズミは帝にならってビーマのそばまで近付くと同じ様にしゃがんだ。

「初めまして、その……ビーマちゃん。」


 小さい子に慣れてない様子の彼女に対してビーマは微笑んだ。

「北守さん。こちらこそよろしくお願いします。」


 その笑顔で北守カズミは少し落ち着きを取り戻した。

「あのさあ、ちょっと聞きたい事があるんだけど……。」


 彼女が聞きにくそうにしているとビーマは彼女の疑問を言い当てた。

「何故今なのか。それと、ハジュンの目的は何か。ですね。」


 北守カズミはまさに今質問しようとしていた事を言い当てられて驚いた。

「あ、ああ。お願いします……。凄いね……。」


 ビーマは舌足らずではあるがやや難解な事を話し出した。

「私が今現れたのは皆さんの共有情報がそこまで成熟したからです。ハジュンがあなた方に接触して来たのもそうです。皆さんがあれの存在に気が付き、それが理路整然とした思考や対話を経て確信と呼べるものに変わりました。それが起点となりすべてが回り出したのです。」


 ゼウスは「うんうん」と頷きながら聞いていた。

「成程、そう言う事か……。ん? てえ事は僕たちがもっと早くこの事に気が付いていれば……。」


 ビーマはゼウスの方に身体を向けた。

「それは仕方がなかったのです。ハジュンの力によってその『気付き』は阻害されていたのですから。ですが今回、新たに生徒さんたち六人が加わった事でその力が破られました。」


 ケラシスは手をポンと叩いた。

「そうか、私たちも何故それに気が付かなかったのかと不思議に思っていた所だ。」


 アトロポスは目を少し落として呟いた。

「恐るべきはハジュンの力。恐らくその力はこの三次元世界全てに行使されているのでしょう。」


 ビーマはそれを肯定した。

「はい、その通りです。ハジュンの力はこの三次元世界の人元をこの場に縛り付けるかせであり、鉄格子なのです。けど皮肉な事にそれはこの世界の人々を守る役割をも担っているのです。」


 海野は渋い顔をした。

「確かにそうかもしれないな。全てに対して『気付き』を得れば人間はその真実に耐えかねて絶望してしまうかもしれない。」


 歌寺ミナモはげんなりした顔でボヤいた。

「今の私が正にそうよ。そんな敵とやり合おうってんだから……。」


 鳥山イツキはモニターを通してビーマに聞いた。

「けどさ、今までもそれを予想する人はいたと思うんだけど。GmUゲームを何者かが操っているみたいな予想がさ。一部だけどまことしやかにささやかれていたし……。」


 ビーマはモニターの鳥山イツキに向かって微笑んだ。

「確かにその通りですね。ただ、それは根拠のない想像の範疇はんちゅうでしか在りませんでしたし、仮にそれが皆さんと同じほど確かな情報であったとしても彼らでは起点に成り得ないんです。ここにいる皆さんの様な……高次元生命体をおびやかす存在でなければ。」


 帝ソヨギはビーマに椅子をすすめた。

「ビーマちゃん、疲れてない? ずっと立ちっぱなしで、こんなにいっぱいお話ししてもらって。」


 ビーマは帝にお礼を言った。

「ありがとうございます。でも、お気遣いなく。ハジュンと違って私には時間制限がありませんので。」


 ビーマが椅子に座ったので北守カズミも近くの椅子に腰を下ろした。

「そっかあ、やっぱりあれは時間制限だったのか。ゼウスさん、無視されたんじゃなかったみたい。よかったね。がっはっはっは!」


 ゼウスは彼女の言葉を軽く受け流した。

「あ、ああ。それにしても……ビーマちゃん。あなた一体何者なんだい?」


 ビーマはその質問に答えようとしてくれた。

「○○○○○○、○○○○○○……。あ、伝わってない様ですね。この情報はまだ伝達出来ないみたいです。えっと、じゃあハジュンの事からお話します。先程も少し言いましたが、あれはこの三次元世界の監視者みたいなものです。ここで言う三次元世界とは、そうですね……生物が三次元までしか感知出来ない制約をかけられた『場』みたいなもんだと思ってください。そして、皆さんが言う所の八部衆をこの三次元世界の内壁とするならハジュンはその外壁に当たります。」


 恐らく三次元的な図解で理解出来る様に伝えてくれているのだろう。

 分かりやすいが、高次元生命体と自分たちが見えている世界はまったく違うのだろうとここに居る全員が感じざるを得なかった。


 ビーマはそんな皆の感情を知ってか、少し苦笑した。

「とは言いましても私、それとハジュンもそうなんですが、ここに姿を現すときは皆さんと同じです。物理的には三次元までしか感知出来ていません。違いと言えば情報位なものです。」


 北守カズミは率直に尋ねた。

「ビーマちゃんやハジュンって奴はやはり次元を落としてるって事でいいのか? でも何でわざわざ……そう言えばビーマちゃん、さっき自分が四次元体って言ってたけど三次元体じゃあないんだよね?」


 ビーマは即答した。

「高次元体がこの世界に対して物理的に直接触れたらたちまち消滅してしまいますから。それはまるで泡の様に。ですから最小限の媒体を使って情報の交換のみを可能にしました。仮の本体である私のこの身体はハジュン同様この三次元の外壁、つまり三次元世界にぎりぎりまで寄せた四次元体とでも申しましょうか……。」


 北守カズミは苦笑いした。

「つまり、ビーマちゃんやアルキオネウスは三次元に近い四次元体ってことでいいのかな……? いやいや、改めて考えると何だか途方もない話だなあ。」


 ビーマは次いで先程の質問に答えた。

「本来なら三次元体まで数字を落とした方が良いのかもしれませんが……。私たち、いえ、恐らくどれ程高次の生命体ですらも、この三次元世界に取り込まれてしまうと二度と元の次元に戻れなくなってしまうのです。」


 北守カズミはじめ全員がビーマのこの言葉に眉をひそめた。

「え、そうなの? なんかここヤバくね? まるで……。」


 ビーマは少し言いにくそうに顔をゆがませた。

「はい、私たちにとってここ、三次元世界は『奈落』そのものなんです。」


 北守カズミは頭を抱えた。

「うへえ、そうなんだ。いや、そうなんだとしか言いようがないんだけどさ。」


 非天レイカは多次元生命体と言うものを少しでも理解しようと考えた。

「ビーマさん。ハジュンの本体に身体ってもんがあるとして、それはやはり高次元生命体と呼べるものなんですか?」


 ビーマはやや困惑しながら答えた。

「えっと、『人元』と言う言葉を使わせていただければ、それはみなさんと同じです。ただ本体はと言えば五次元生命体と言う言葉が当てはまるでしょう。違いはと言えば、そうですね……。一つの方向から例えさせていただきますと、この三次元世界にいる場合、実際に見えているのは選択された一つのケースのみ。無数にある可能性の内の一つの帰結だけが現在のすべてと認識されています。」


 非天レイカは納得してうなずいた。

「確かにその通りですね。他の可能性を想像する事は出来たとしても、現実そのものは変えられない。」


 ビーマはゆっくりと頷き、話を続けた。

「ところが次元が高くなるほどあらゆる可能性を同時に認識する事が出来るのです。そしてそのすべての可能性について自在に選択し自分の場所とする事が出来ます。私たちにとってはそれが当たり前で、むしろこの世界は不自由この上ないと言わざるを得ないのです。」


 次に香々美フジコが「はい」と小さく挙手してから質問した。

「そもそも私たちのこの世界、三次元までしか認識できないと言うこの『場』は何故存在するのでしょう。仮にその『場』があったとしても私たちがそこ、つまりここに存在する理由って何なのかしら。ここに在る私たちとあなた方との違いは一体何処から生じたのかしら?」


 ビーマは少し難しい顔をした。

「それにつきましては正直、私たちにも分かっていません。私の本体はどうやら九次元生命体らしいのですが、それより高次元の生命体も無数に存在します。次元と言う概念が崩壊した所謂いっわゆる『懐次元』や『絶次元』、更にはそれさえ超越した世界観も存在すると言われています。最近の研究ではその超高次元に何かしらの起因があったのではないかと予想されていますが、はっきりした事は分かっていないのです。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き

 香々美かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持

<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織

 ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。

 クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。

 ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹

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