239 常識の裏側【他世界の話】
それから三日間、Z組の生徒たちは今後の事について何度か話し合った。
その結果、次回については非天レイカのみがダイブする事となった。
会議では皆の予想に反して歌寺ミナモがダイブ参加を申し出た。
しかし、現状をある程度把握出来るまでは待機する様、皆に説得されて今回のダイブについては見送る事にしたのだった。
この日、生徒たちはいつも通りダイビング装置のある部屋に集合した。
そして非天レイカ一人だけがダイビング装置に入り込んだ、
他の生徒五人はモニターで第四階層の調査を見学する為、椅子に座って待機していた。
暫くすると非天レイカとゼウスたちがモニターに写し出されその調査は開始された。
クロートーは調査の内容を簡単に説明した。
「私たちの調査は多岐にわたっています。中でも重要なのは仲間のサルベージです。」
蛇代ヨウコは嬉しそうに目を光らせた。
「他にも仲間がいるんだ! で、サルベージって何するの?」
ケラシスはサルベージについて説明した。
「前回も話したが、私たち反乱軍はあの声と共に一部を除いて皆戦場から消し飛ばされてしまった。τファウンデーションを引き剥がされた者や他の世界に飛ばされてしまった者もいるだろう。まあ、それは未だ予測の域を出ないがな。そして中にはGmUの一部にしがみ付き、そのまま仮死状態になってしまった者もいる。私たちの様に。」
非天レイカは確認した。
「つまりモイラの先生方もサルベージされたってわけですか。」
ケラシスは頷いた。
「ああ、私たちはゼウスに助けられたんだ。仮死状態になっていたのは敵に察知される確率を最小限に抑える為だった。故に救助を待つ他はなかったのだ。」
アトロポスは補足した。
「但し、それが出来たのは私たちの様に『絶対防御』のスキルを持つものだけ。因みにこの能力もゼウスから分けてもらったもの。」
胸を張り自慢げに踏ん反り返るゼウスを見ながら北守カズミは苦笑いした。
「これだから尊敬されないんだな……。」
クロートーは先程の話を続けた。
「次に第四階層の勢力分布や特殊空間の把握等があります。今までの調査で分かった事ですが、多少の偏りはあるにせよ外へと広がる程に敵の密度が濃くなって行く。つまり真相に近づいて行くわけです。」
鳥山イツキはGmUの底知れぬ強大さを感じた。
「まったく……常識の真逆を行くな。普通は中心部程密度が濃いもんだろう。」
北守カズミは皆を元気づけた。
「なあに、張りぼてみたいなもんさ。見てくれで恐怖心を煽るなんてのはよくある事だ。GmUも所詮は人間が作り出したものって事よ。」
香々美フジコはぽつりと呟いた。
「人間の比例的推論を逆手に取ったイメージ操作。集中力を拡散するのも目的の一つでしょうね。裏を返せばそんな事をしなければならない弱みがあるって事かな。」
非天レイカは平然とした態度で皆に告げた。
「そうだな。何れにせよ私たちの力の前ではそんな小細工など無意味だ。目標はただ一つ、GmUの裏で糸を引く真の敵を見つけ出して叩く事。存在しないならばそれでよし。GmUに取り込まれた二人を救出するまでだ。」
ケラシスはほんのりと笑みを浮かべた。
「ふ、その意気や良し! だが、くれぐれも油断するなよ。」
クロートーは説明を続けた。
「今回より目下の課題、敵の正体を掴む事を新たな調査項目として付け加わえます。」
北守カズミは方法について質問した。
「敵の正体なんて一体どうやって調査するんだ?」
他の生徒たちも皆、その調査方法が気になっていた。
それに対しクロートーが説明した。
「ゼウスの絶対防御領域は球状に広がって行きますがその都度敵を内部に受け入れてしまいます。そして深部に進むほど敵の強さも増して行きます。そこで第四階層でも当たり障りの無い場所までゼウスの領域を広めてもらい、そこからアトロポスの絶対防御領域を使って進んで行きます。」
鳥山イツキは以前から思っていた事を聞いてみた。
「そう言えば絶対防御領域にも拘わらず敵が踏み込んで来ているけど何でかなと。やはり第四階層までは防御しきれないとか……?」
これには非天レイカが説明した。
「ああ、私と北守以外は聞いてなかったか。第四階層の敵についてだが、奴らは独自の領域を持っているんだ。その為ゼウスの絶対防御領域でも押し返す事は出来ない。」
歌寺ミナモが訝しげな顔をした。
「え? それじゃあ絶対領域の意味がないんじゃないの?」
非天レイカはそれに答えた。
「そうだな、イメージとしてはゼウスの領域が海、敵の領域はその中に点在する泡の様なものだ。つまり、私たちは常に絶対防御領域の庇護下にある。」
鳥山イツキは単刀直入に尋ねた。
「とは言え敵が領域内に入って来れば戦闘は避けられないんだろう?」
非天レイカは一つ頷いてから返答した。
「ああ、その為の通路型絶対防御領域だ。但し、修練が目的である場合はそれとは別にモイラの三姉妹が戦闘領域を設定してくれている。深層部に近づくほど敵は強大になって行くらしいからその辺も調整してもらっているんだ。」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持
<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織
ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。
クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。
ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女
アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹




