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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
23/624

23 異世界って難しくない?

 蟹江さんは話を元に戻した。

「あ、ごめんね。話しが脱線しちゃったみたい。続けて。」


 蛯名さんは先程の続きを話し出した。

「すみません。私が考えるに、これは存在する確率の大きさによるものと思われます。」


 蟹江さんは嬉しそうに言った。

「あ、量子論っぽい。」

 また、難しくなって来たぞ。付いて行けないのは蟹江さんではなくむしろ私だった件。


 蛯名さんは例を挙げて説明してくれた。

「雨が降っているとします。過去のデータから約3時間で雨が止む事が分かっています。 で、これが3時間以内に止む世界Aとそれ以降に止む世界B、人間にそれを確実に予測する術がない場合、どちらも確率はほぼ同じであると考えます。」


 蟹江さんは分かり易い様に言い換えた。

「コインの裏か表かみたいな?」

「はい。で、特殊な条件下でなければ、どちらの世界A,Bにも私たちは行き易いと考えられます。」


 蟹江さんは蛯名さんの言葉を反復しながら考えている。

「つまりどちらの世界の未来もあり得るって事でいいのかしら。だから、どっちに転ぶのもあり、可能だって事かな。」


 蛯名さんは真面目な顔でうなずいた。

「はい。ところが、もう一つの世界を考えてみましょう。例えば雨が全てキャンディになる。こんな世界には行けないという事です。仮にそれが転生後の世界であったとしても……。」


 蟹江さんは楽しそうに言った。

「そんなアニメあったなぁ。子どもたちと一緒に見た覚えがある。雨をキャンディに変えちゃうやつでしょう。」


 蛯名さんはニコリと微笑んだ。

「あ、見られましたか。多分それです。で、そのアニメみたいな、雨をキャンディに変える機械でもあれば、その世界に行ける確率は少しですが大きくなるわけです。」


「つまり納得の行く……人間が理にかなった手段で確認できる、根拠が明確な世界であれば行ける確率が上がると。で、そこには転生もしやすいと……。」

「はい。」

 ん? 何? 話しが難解すぎて私置いてきぼりナウ。


 蟹江さんは私が話しに付いていけない事を心配しつつも蛯名さんに確認した。

「そっか……成程。さっきの話しだとマナの登場で魔法のある世界に少しは近づいたって事になるのかな?」

「まあ、これは私の妄想ですけどね。」

「いやあ、あんたもしかしたらコペンハーゲン解釈の謎解けちゃうんじゃない?」

「いや、それは無理かと。」

 話し終わるといきなり物静かになる。いやあ、いいですねヲタクって。


 蟹江さんは私の気持ちを考えながら話をまとめた。

「今の話からすると、フィナさんが元々の……その、前世で、異世界の人間だったって事はあり得るってことになるのね。」


 蛯名さんはやや難しい顔をした。

「まぁ、それでも確率的にはほぼありえないと思います。ですが、現にフィナさんという実例が目の前にあると話しは全くもって違って来ます。」


 蟹江さんはうんうんと頷いた。

「後は前世の記憶があるってのが確率的にどうかってことね。」

「はい、そこは最重要だと……。」


 話が一段落した所で、蟹江さんと蛯名さんは今後の事について話し出した。

「成程ね。まあいずれにしてもこれはここだけの話にしときましょう。」

「はい、そうですね。フィナさんの個人情報でもありますから。」

「あ、フィナさん。この回線は他からは見られないから。それに今ここに他の人もいないし、大丈夫だから。」


 さすが蟹江さん。抜かりなし!

「そうですか。ありがとうございます。」

「いえいえ今日は話してくれて本当にありがとう。」


 私は笑顔で感謝を示した。

「いえ、こちらこそ聞いてもらってスッキリしました。」


 うんうん、理解者がいるといないのとではえらい違いだね。

「そうだ、サナちゃんたちには言った方がいいんですかね。」


「うーん。」

 蟹江さんは少し考えてから言った。

「サユリさんなら言ってもいいかもしれないけど、サナちゃんはどうかな。」


 蛯名さんはハッと気が付いた様な顔をした。

「もし、何かでバレたりしてマスコミに騒がれると、ちょっと面倒くさいかもしれません。」


 蟹江さんは心配そうな顔をした。

「そうね。いい風に書いてくれればいいんだけど。変に書かれて嘘つき呼ばわりなんかされたら、サナちゃんたちが可哀かわいそう。」


 蛯名さんもうなずきながら言った。

「変な噂流されるのもできれば避けたいですね。」

「そうね。フィナさんの今の状態がバレるだけでも大きな事件になると思う。確実に大きく扱われるから。」


 つまり、世間に公表すれば何が起こるか分からないってことだ。

 サユリならまだしもまだ幼いサナにこの様な迷惑をかけるわけには行かなかった。

「私、しばらくは言わないでおきます。まあ、言うとしてもサユリさんだけにしておきます。」


 二人共うなずいた。

「その方がいいかも……いえ、絶対そっちの方がいい。」

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