表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
229/624

229 お助けシステム【他世界の話】

 ガーネットはずヨーコの素性について話した。

「あの子は私のめいの娘さ。村を全滅させられてここへやって来た。」


 エチャームはうなずいた。

「ええ、それはあの子に聞かせてもらったわ。聞きたいのは……。」


 ガーネットは皆をゆっくりと見回し軽く微笑んだ。

「ああ、そうだね。あの子の”力”の事だろう……?」


 ウストレンジはヨーコとの顛末てんまつについて語り出した。

「私はヨーコに倒された。そう、あれは一瞬の出来事だった。あの時私がどの様にして倒されたのか、今以いまもって理解できていない。更に彼女は魔物に奪われていた私の記憶を取り戻してくれた。すべてを思い出した私は自害しようとしたが……それすらもさせてもらえなかった。そして、私は見たんだ……彼女の『神』にも匹敵するその力を!」


 皆が注目する中、ガーネットが口を開いた。

「一体今度は何を仕出かしたんだね。あの子は。」


 ウストレンジは目を大きく見開いた。

「彼女は上空を見上げると誰かに命令でもするかの様に呪文を唱えた。確か『セッテイシリョウノデータヨリキャラクターヲグゲンカ……』だったと思う。すると死んだはずの妻と孫娘が目の前に……。」


 ガーネットとエチャームは顔を見合わせて息をんだ。

 イダウンは驚愕きょうがくの表情を浮かべながら尋ねた。

「まさか……生き返ったとでも言うのか!」


 ウストレンジの顔には薄っすらと赤みが差していた。

「ああ、ほんの数分間だけだったが、確かに二人は私の目の前に現れたんだ。」


 エチャームは喜びの笑みを浮かべた。

「それじゃあ、最後に二人と話す事が出来たのね!」


 ウストレンジは苦笑いした。

「いや、ずは二人にボコボコにされたよ……。ボッコボコにね。それで、私たちは天国にいるからあんたは地獄で反省してなさいって一喝いっかつされた。」


 三人と一匹は苦笑いしながらも内心では彼の小さな幸運を喜んだ。

「お前さんの奥さんと孫娘さんもかなり強かったからね……。」


 ウストレンジは皆の反応にかつての友情を感じた。

「その後、妻と孫娘はヨーコの手を取って感謝していた。くれぐれもこの世界の事を宜しくってさ。」


 エチャームは真面目な表情で改めてガーネットにうた。

「ガーネット、改めて聞くけどヨーコって本当に……何者なの?」


 勇者たちが注目する中、ガーネットは苦笑いして首を左右に振った。

「あれは……私にも分からない。あの力はまさしく神……いや、それ以上の何かかもしれないね。」


 この状況を”外”から見ていたヨーコは思わずニヤけた。

「よっしゃあ、最高の誉め言葉キター!」


 この後、四人と一匹の元勇者たちは少しでもヨーコの力になりたいと考え、県魔主以下の魔物を順次片付けて行ってくれる。

 普通の主人公にとってこれはとても大きな力となるのだが、ヨーコの場合は少し事情が違っていた。


 元勇者たちもガーネットの魔術『隠匿いんとく』を使用しているので魔王軍に見つかる事はない。

 だが、ダミー等の戦術が使えない為、戦闘を重ねるごとにその存在を勘ぐられるおそれがあるのだ。


 更にはNPCにんげんの死者を一人も出さずに敵を討伐する事はほとんど不可能だった。

 にも拘わらず元勇者による『お助けシステム』なるものが自動的に発動されてしまうのだ。


 このシステムでは一定時間経過ごとに元勇者たちが魔主どもを討伐しに行ってくれる。

 そして討伐が終了する度に下の様な表示が出て来るのだ。


>〇〇県の県魔主△△を討伐!

>被害 死者3名

>入手アイテム……等など


 しかも、ゲームが終盤に差し掛かると、確率で次の様な事態にも成り兼ねない。


>魔王軍に存在を勘付かれた!

>魔王軍が敵対勢力の存在を調査し始めた!

>魔王軍が人質を取って敵対勢力に投降を命じた。

 投降しなければ1秒につき一人が殺害される!

 (仕様上、元勇者たちは投降しない。) ……等々。



 このシステムで死者が出ても当然ヨーコのパーフェクトエンディングは消えて無くなってしまう。

 ヨーコは何としてもこの事態を避けなければならなかったのだ。


 先に国魔主すべてを攻略したのはこの様な意図があった。

 倒すべき相手がいない場合、元勇者たちは魔王軍に手を出さなくなるからだ。


 つまり、このお助けシステムを介して死者数が増加する事態は避けられるのだ。

 一つの危惧きぐを打ち払ったヨーコは次に将軍ブガン(SSSLv.51)の討伐へと向かった。


 将軍ブガンは三匹の部下、三軍神(SSLv.100)を従えていた。

 空の指揮官ソラキル、陸の指揮官リッキル、海の指揮官カイキルだ。


 少しでもヘマをしようものなら三軍神のエリート部隊、各十万、計三十万の大軍勢(SSLv.1~81)が人々を襲い始めるだろう。

 しかし、この三軍神を倒さない限り将軍ブガンは主人公と交戦状態にならないのだ。


 しかも、ヨーコは前回のゲームでSランクのレベル100までは討伐出来ていが、ここから先はSSランクが大勢押し寄せて来るのだ。

 大方の作戦は決めてあったものの、終盤についてはある程度このゲームの特性を知った上で考えた方が良いとしていた為、ここから先の計画を立てる必要があった。


 ヨーコは「さて、どうしたものか」と考えた。

 三軍神の軍勢のうち一体でも倒されると、その情報が将軍ブガン、そして大魔王バルンへと伝わってしまう。


 そうなれば魔王軍も反乱分子の存在に気が付いてしまうだろう。

 しかも、倒されたのが三軍神のエリート部隊とも成れば躍起やっきになって捜索して来るに違いない。


 つまりは三軍神諸共もろとも、全軍を一度に潰さなければならないのだ。

 しかし、そんな中でもヨーコは余裕の表情を浮かべていた。

「ま、SSランクLv.51の国魔主もどうって事なかったし……大丈夫でしょう!」


 ヨーコは三軍神にそれぞれニセの召集メールを送信した。

 本来、このメール機能は大魔王バルンと参謀ビスス、そして今回のターゲットである将軍ブガンからしか送信する事は出来ない。


 ヨーコはその暗号コードを解読し、将軍ブガンに成り済まして部下である三軍神に伝令する様伝えたのだ。

 三軍神は疑う事も無く各々の部隊全員に将軍ブガンの元へ召集する様命じた。


 召集は一時間後。

 その間、将軍ブガンに気付かれてはならない。

 ちなみに将軍ブガンと交戦状態と成る為の条件が揃っていなくても接触する事は出来た。


 ヨーコは魔術『時間伸縮』で将軍ブガン周辺の時間を千倍程縮小させてみた。

 すると将軍ブガンの動きが止まったように見えた。

「おお、何とかうまく行った。」


 交戦状態にならなくても環境を変化させる位は出来るはずだったが、実際可能かどうかはやってみなければ分からなかったのだ。

 その際、雲の移動速度等で気付かれない様に魔術『忘却』を使って将軍ブガンの記憶を調整した。


 初めての試みではあったが、どうにかヨーコの思惑通りに事が運んだ。

 つまり召集までの一時間が経過していても将軍ブガンにとっては4秒弱しか経っていない状態となったのだ。


 ヨーコは集合した三十万のエリート部隊と三軍神を一度にダミーへと摩り替えた。

 さて、問題はここからだ。


 三軍神は既に倒されているので将軍ブガンがヨーコと一戦交える為の条件は揃っていた。

 しかし、将軍ブガンからすれば三軍神(実はダミー)が存在しているにもかかわらず主人公と交戦状態になると言った、有り得ない現象が生じる事になる。


 この様な不測の事態が起これば当然将軍ブガンから大魔王に伝わってしまう。

 そうなれば大魔王は全人類に対して総攻撃を開始するかもしれない。


 大魔王程の力があれば一撃で大都市ごと吹き飛ばしてしまうだろう。

 それだけは何としても回避しなければならなかった。



 さて、いよいよ召集の時間となった。

既に三軍神と三十万のエリート兵は将軍ブガンの元に結集していた(すべてダミー)。


 そして、一時間を4秒に収縮した魔術『時間収縮』の効果も切れた。

 将軍ブガンは踊り場から何やら騒がしい大広場の方を向いて顔をしかめた。

「む……。」


 そこには将軍ブガンの元に集結した三十万の大軍勢が整然と並んでいたのだ。

「何だ? どう言う事だ、ソラキル。」


 既にダミーとなった三軍神が一角、ソラキルがそれに答えた。

「将軍ブガン様からの伝令に従ったのですが……。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き

 香々美かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持

<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織

 ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。

 クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。

 ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ