225 勇者討伐【他世界の話】
このゲームは蛇代ヨウコが前回攻略したゲーム(顔玉が出て来るやつ)の進化版だが大きな違いが一つあった。
それはNPCが守るべき対象である事だ。
さて、魔王軍による制圧後、魔人たちの奴隷となり心身が疲弊しきった人々。
荒んだ心は脆く、魔王に誘導されるがままに歪曲した。
そして何れは人間同士が互いを積極的に迫害し苦しめる様になって行った。
その中でも魔族の為に残虐の限りを尽くした人間には権力が与えられた。
それが魔神官や魔天子と呼ばれる者たちであった。
征服された直後は全てのエリアを魔主と呼ばれる魔物が統治していた。
だが、ある程度体制が落ち着いて来ると、この魔神官や魔天子がその代役を担う様になった。
憎む相手が魔物ならまだ救いはあるが、今や人間と人間が憎しみ合う構図が形成されつつあったのだ。
勿論、全ては魔王軍の目論見通りと言うわけだ。
ヨーコ異蛇代ヨウコは魔王を討伐すべく再び旅立つ事にした。
ガーネットの下で習得した魔術は次の通りだ。
『隠密』(level MAX) …… 指定された第三者以外には見つからない。
ガーネットの『隠匿』と同じ系統。
『熱の魔術』(level MAX) …… 粒子の振動を操る。
『光の魔術』(level MAX) …… 粒子を自在に移動させる。
『異世界交信』(level MAX) …… ゲームのプログラムデータを確認できる。
旅立ちの朝、ガーネットはヨーコに初めて優し気な眼差しを向けた。
「私が教える事はもう何もありません。四人の勇者を訪ねなさい。あなたの力になってくれるやもしれない。ただ、中には救わなければならない者もいる。その時は力を貸してあげて、ヨーコ。」
ヨーコは初期装備と回復薬等のアイテムを手に入れた。
今のヨーコにとって正直この装備もアイテムも必要なかったが有難く受け取った。
ヨーコは『光の魔術』で空中に浮遊すると物凄いスピードで目的地に向かった。
ガーネットは目を大きく見開いて暫くその場に立ち尽くしていたが、やがてフッと微笑んだ。
「頼んだわよ、ヨーコ。」
勇者の名前はアップス、イダウン、ウストレンジ、エチャーム。
ヨーコは魔術『異世界交信』で彼らの事を含め、このゲームの全容を把握していた。
勿論この魔術を使わなくても、能力『プログラムがわかる』だけで事足りるのだが、それの使用は最低限に抑えておきたかったのだ。
チートではないが何となく多用する気になれなかったのが理由の一つだ。
また、もう一つの理由として、このゲームにおける力、『魔術』をなるべく多く使用しておきたかった事もある。
この『魔術』の使用回数が足りないと、目標である最高のエンディングに行き着けないのだ。
彼女はうっかり『魔術』を使用し忘れた等という事が無い様にそうした危惧を取り除く工夫をしたわけだ。
この様に敵を殲滅する事だけに専念出来る為の環境を一つ一つ整えて行くのもゲーム完全攻略には欠かせない要素なのだ。
さて、ヨーコが魔術で調べた四人の勇者については次のような事が分かっていた。
勇者アップスは現在行方知れずとなっている。
イベント終了後、村人の話から既に死亡している事が明らかになる。
村の外れで小さな魔獣を助けるとそいつが仲間になるのだが、実はその魔獣こそが転生したアップス。
彼は勇者の一人であるエチャームの魔術で記憶を保持したまま魔獣に転生していた。
そこで魔王討伐の機会を窺っていたのだ。
ここでヨーコは魔術『使役』を会得する事が出来る。
二番目の勇者イダウンは故郷の村人を人質に取られており魔王軍の言いなりとなっている。
彼は村を統括する魔物から魔術を使える人間と接触した時点でその命を奪う様命令されている。
ガーネットに逃げられてからと言うもの魔王軍は魔術持ちの人間に対し執拗に警戒していたのだ。
その様な理由から当然主人公であるヨーコの命も狙われる事となる。
このイベントでは救う事の出来た村人の人数と倒した敵の数に応じて三つの魔術、『マーキング』、『全体防御』、『忘却』が会得出来る。
また、村人全員を漏れ無く救う事が出来れば四つ目の魔術『荒稼ぎ』がおまけで付いて来るのだ。
三番目の勇者ウストレンジは訪ねて来た主人公を温かく迎えてくれる。
だが既に敗戦直後から魔王軍に寝返っており主人公を亡き者にしようと企んでいた。
ウストレンジを討伐すると『移動自在』が手に入る。
また、改心させるとその内容に応じて『万能薬』、『攻撃強化』も会得できる。
四番目、四人の中では紅一点の勇者エチャームは仮死状態となり海底神殿の奥底に身を隠している。
神殿の守護システムを破壊し、彼女を復活させると仲間となり魔術『仮死』と『時間収縮』が会得出来る。
さて、これらのイベントをすんなりと完全攻略してしまったヨーコ。
いよいよ魔王軍との戦闘が開始される。
ヨーコは叔母の家にいる時、平面型術式水晶で魔王軍の横行情報を収集していた。
それらのデータを基に能力『近道がわかる』を使い、魔王討伐までの道のりをある程度算出していたのだ。
とは言え、ストーリー上救う事が出来なかったNPCもいた。
特に小さな子どもや友だちになった少女を救えなかったのはきつかった。
他にも自分を助けてくれた人々や魔獣たち、たくさんのキャラクターが命を落としてしまった。
蛇代ヨウコは主人公ヨーコに成り切っていた。
「魔王……絶対に許さん!」
勇者イベントをパーフェクトで完遂したヨーコは以前訪れた事のあるペード村へと向かった。
この村にはガーネットの家に行き着く前に宿と食事を取るため立ち寄ったのだ。
だが、前回この村に立ち寄った時には酷い目に合わされた。
この村の人々は徒党を組んでヨーコを迫害したのだ。
何も売ってくれなかったし何処の宿屋も宿泊させてくれなかった。
石や棒切れを投げつけて来る者もいた。
人買いの手先に捉えられた時等は隙を突いて逃げる事しか出来なかった。
これはチュートリアル上のストーリーだったのでヨーコは一切手が出せなかったのだ。
理由としては、下手に討伐すると魔王軍に存在を感知されてしまうから。
勿論、蛇代ヨウコの特殊能力、『性質改変』を使えば台詞も話の内容も書き換えられたのだが、それこそ無意味と言うものだった。
ゲームにはそれぞれテーマみたいなものがある。
気持ちに揺さぶりをかけて失敗を誘ったり新たな能力を引き出す切っ掛けを作るのもこのゲームの狙いなのだ。
蛇代ヨウコは今までのゲームで殆ど自分の能力を使用せずに攻略してしまっていた。
ゼウスが彼女の為にこのゲームを選択したのも能力使用によるレベルアップが第一の理由だった。
さて、村人全員から迫害を受けていたヨーコ。
ここでは空腹感や眠気、疲労や痛みまでがリアルだった。
ヨーコ異蛇代ヨウコは「やり過ぎでしょ……」と思いながらもそのチュートリアルを熟した。
そんな中、村人に内緒でヨーコを自宅に匿い食事まで与えてくれた老婆とその孫がいた。
仲良くなったのも束の間、次の日二人とも捉えられて処刑されてしまった。
しかも火炙りだ。
村人全員がその火柱を囲み、村祭の歌『善人は要らぬ』を楽し気に大合唱した。
大人も子どもも狂った様に踊り、騒ぎ、酒をくらった。
だが、それにしても……蛇代ヨウコはぼやいた。
「私まだ12歳なんだけど。これ明らかにR指定だろ! まあ、これより過激な設定も見た事あっけど……このゲーム、リアルすぎるのよ!」
蛇代ヨウコは自分で言っていてハッとした。
まさかバレてる? 私が普段R指定にも手出しまくってる事……。
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持
<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織
ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。
クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。
ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女
アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹




