224 ロープレらしい【他世界の話】
ヨーコ異蛇代ヨウコは、とある村から少し離れた森の中で日々生活していた。
家族は親戚のガーネットと二人きりだ。
この世界は三十五年前に突如として出現した大魔王バルンによって支配されていた。
人々の生活はとても貧く、心は荒れ果てていた。
ヨーコはここに来る以前、他の村で両親と暮らしていた。
その村は小さく、魔物も終ぞ近付く気配は無かった。
そのお陰か、村民たちも貧しくはあったが時流にそぐわずほのぼのとしていた。
ヨーコはその様な環境で毎日元気に暮らしていた。
しかし彼女が10歳の時、トカゲ型の魔獣が集団で村を襲って来た。
そして彼女以外、村人全員が命を落としてしまったのだ。
母親が今際の際に教えてくれた遠縁に当たる女性の存在と居所。
何もかも失ってしまった彼女は絶望の淵から何とか立ち上がり一人旅立った。
道中何度も危険な目に会いながらも旅は続けられた。
そして一年後、ヨーコはやっとの事でこの親戚の家に辿り着いたのだ。
母の叔母に当たるその女性はヨーコから事の次第を聞くと不愛想な表情のまま一言呟いた。
「だから言ったんだよ……。」
この母の叔母であるガーネットは村から離れたこの場所で一人暮らしていた。
村人との交流もほとんど無い。
食料や生活に必要な物資を何処からか調達して来て、それを生活の糧にしている様子だった。
ヨーコはここに行き着いてから暫くの間は家事手伝いをして過ごしていた。
ガーネットは無口だが生活に必要なものは与えてくれた。
ヨーコがここを訪れて一月ほどたったある日、ガーネットは自分が魔導士である事を彼女に告げた。
そして魔王がこの大地に出現した時、反乱軍として闘っていた事を打ち明けたのだ。
彼女は最強と謳われた討伐グループの一人として魔王の軍勢と闘っていたらしい。
しかし、魔王軍の力は途轍もなく強大で人間の力では全く持って太刀打ち出来なかった。
敗北が濃厚となったその時、仲間たちが彼女を逃がしてくれたのだ。
ガーネットは『隠匿』の術を幾重にも巡らせて魔王軍に見つからぬ様、完全に気配を消し去って生活していた。
それは魔王軍でさえも打ち破れない魔術だった。
ガーネットは母の叔母に当たる人物であったが、母やその娘であるヨーコにも魔術の素質はあるらしかった。
「私にも出来るかな。その魔術。」
その日から魔術の修行が始まった。
そして一年後、特訓の甲斐もあってヨーコはある程度の魔術を使用できる様になっていた。
実際はここまで10分程度。
これは所謂チュートリアルの様なものだった。
チュートリアルとは言え、平面型術式水晶(要はモニター)で魔王軍の横行情報が入って来たり、痛みや空腹を感じる等と感情移入しやすい仕様になっていた。
「う~む、魔王軍め……許さん! にしても設定が少々過激だな。これってR指定じゃないの?」
このゲームではルール内で自分の能力を使用する事が認められていた。
ヨーコ異蛇代ヨウコは能力『プログラムがわかる』を使ってこのゲームに於ける魔術等のシステムやゲームの流れを大まかに理解していた。
さて、修行開始から一年ほど経ったある日、ガーネットはヨーコに『最後の試練』を与えた。
「まさかたったの一年で最終試験まで辿り着けるとは思わなかったわ。けど、この試験は今までとはレベルが違うわよ。無理そうであれば直ぐに止めるからその心算で。」
12歳となったヨーコの見掛けは蛇代ヨウコそのものだ。
因みに今まではストーリー上年齢が低かったのでその分補正が掛かっていた。
これまでヨーコは最小限のパワーでイベントを熟していた。
しかし、この試験の成果如何で初期ステータスが決定する為、ここだけはフルパワーを出さなければならなかった。
ガーネットは『最後の試練』としてレベル100のモンスター百体の討伐を提示した。
これはAランクのレベル100に相当する標的だったが当然彼女の敵ではなかった。
ガーネットの合図と共に試練は開始され1秒もかからず終了した。
「始め! …………え?」
ガーネットは固唾を呑んで後退った。
「あなた、一体……!?」
流石はQCを組み込んだゲームだけの事はある。
通常のゲームに於いてこうゆう時の反応は一通り、いい所三通り位しか用意されていない。
最高の台詞を言わせる条件が3分以内なのであれば、それが1秒だろうがぎりぎりだろうが同じセリフで返される所だ。
だがこのゲームではNPCとは言え人間に近い状態で台詞が構築されていた。
つまり、このガーネットの台詞は試験の結果が最上級である事を示していたのだ。
そしてそれはステータスの値についても同様の事が言えた。
結果、ヨーコはまだレベル1であったにも拘わらず全ステータス値がlevel MAXとなってしまった。
但し、まだ手に入れてない魔術につては後々のイベント等を攻略して行かなければ身に付かない。
実は能力を使ってプログラムを改竄し、無理やりゲーム内の全魔術を習得する事も可能だった。
が、勿論そんな事はしない。
ゲーム内での最低限のルールを守って攻略しなければ彼女に取ってそれはもうゲームでさえないのだ。
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持
<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織
ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。
クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。
ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女
アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹




