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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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223 θ10(シータテン)【他世界の話】

 鳥山イツキはこの仮想空間に異世界を創造してみる事にした。

 彼女はこれが今後の戦いにおいて必ず重要な要素となる事を確信していた。


 とは言え、取りえずはゼウスの絶対防御空間内に収めておかなければならない。

 それを越えてしまえば相手に勘付かれてしまうかもしれないし、何があるか分かったもんじゃない。


 何より嫌な予感がしたのだ。

 ゼウスの絶対防御領域の外、つまり元来の空間はわばGmUゲームの領域とも言える。


 現実の宇宙で幾多の生命が誕生しているのと同様、もしかしたら敵はこの世界の何処かで生み出されているとも考えられる。

 特に第四階層の情報については殆ど皆無と言った状態なのだ。


 仮に空間のみをコピーしたのだとしても、その空間、特に第四階層には敵を作り出す何かが仕込まれているのかもしれない。

 つまり、折角せっかく創り出した異空間にも敵が蔓延はびこり出してしまう可能性があるのだ。


 さて、この作業がどんな効果をもたらすのかは、まだ彼女の想像の範囲でしかなかった。

 しかし、彼女の思惑通りならば、それこそ想像を絶する威力を引き出す事が出来る可能性を秘めていた。


 彼女は先ずサポート役の端末『エリプス』を作り上げた。

 エリプスは白い輝きを放つ柔らかな毛に覆われた齧歯げっし類の様な形状だ。

 エリプスは黒い瞳で彼女を見つめながらぷかぷかと浮遊していた。


 鳥山イツキは取りえずエリプスに挨拶をしてみた。

「ええと、鳥山イツキだ。よろしくな。ま、イツキとでも呼んでくれ。」


 エリプスは彼女の言葉に反応した。

「はい、こちらこそよろしくお願いします。イツキ様。」


 思ったより流暢りゅうちょうな話し方だ。

 流石さすがはQCと言った所だろうか。

「ああ、さまとかいらんから。そんじゃあ、これから『異世界創造』ってのをやってみるから解析とかよろしくね。」


 エリプスは無機質な声で応答した。

「かしこまりました。イツキ。」


 彼女は目をゆっくりとつむりこの世界を構成するプログラムを解析、掌握した。

 それから今いる世界とは少しずれた場所にもう一つの世界を創造してみた。


 この『少しずれた場所』をイメージするに至っては、物質消滅の過程を利用した。

 今いる仮想現実では敵を討伐するとそれは跡形も無く消失してしまう。


 これは現実リアルいて絶対に有り得ない現象であり、異世界をイメージさせるには好都合な事象と言えた。

 跡形も無く消え去ったそれらの物体は一体何処へ消えてしまったのか。


 彼女は小さな球体をつくり出し、それを破壊した。

 球体を構成していた物質はエネルギーに変換されるわけでもなくわずかな粒子さえ残さず完全に消え去ってしまった。


 その消失した残骸の欠片の行先を第四の座標を用いて現す事で彼女の中に異世界のイメージが構築されていった。

 他にも何も無い所にものを出現させる能力スキルや現象など異世界を想起させるものは多々あったが、一番単純な方法を取ったのだ。



 さて、異世界の構築はしてみたものの周囲には何の反応も感じない。

「ん? 出来たのかな……世界。」


 周囲を見回したがこれと言って変わった様子も見当たらない。

「どうにもよく分からんな。アバウト過ぎたか?」


 さて、こんな時の為のエリプスだ。

 彼女は早速エリプスに聞いてみた。

「ここってその……別の世界?」


 エリプスは即答した。

「はい、先程の仮想空間ではなくあなたが創造した方の世界です。」


 どうやら『世界創造』は成功したらしい。

 問題はこれからだ。

「エリプス、取り敢えずこの世界と元の世界の位置関係を知りたいんだが。」


 何せかなりアバウトな感じで世界を創造してしまった為、細かなところはオートメーションでまかなってしまっていたのだ。

 エリプスが即席で構成したスクリーンに図解の映像が映し出された。


 その図解によれば現在ちょうどθ(シータ)10だけズレているとの事だった。

「このθってのは単位みたいなもんかな?」


 エリプスは応答した。

「はい、始めに設定されたズレをθ10とさせていただきました。ズレの座標はほぼ無限の要素から成り立ちますがθを使用する事によって単純化されます。」


 鳥山イツキは頷いた。

「成程、元の世界を原点と仮定して、それを中心とした半径10の距離にある4次元球面上の全空間をθ10とするわけか。」


 エリプスは現状の解説をした。

「実際には距離が9より上、10以下である空間すべてをθ10として一つにまとめています。また、異世界への確率的拡散を防ぐ為、現状θナンバーは10以下となる様設定してあります。」


 鳥山イツキはエリプスの性能に感心した。

「そいつは気を効かせていただいて……どうも。で、話し戻すけど、そのθはつまり0から10の11段階あるって事か。」


 エリプスはその質問に答えた。

「はい。θ0で元の世界に戻ります。」


 鳥山イツキはこれをどう扱ったものか悩んだ。

最初ベースの世界に戻るのはいいが、それでは元の木阿弥もくあみだな。……そうか! 非天が言ってた様に情報だけならやり取り出来るかもしれない。」


 エリプスはしばらく計算している様子だった。

「……それなら私をコピーして0から10の各θ世界に置いてください。但しある装置を私たちの内部にほどこさなければなりません。」


 鳥山イツキはゴクリと喉を鳴らした。

「ああ、つまり量子もつれの状態を利用した情報交換装置を作れって事だよな。しかも十二個。こいつは……かなり厄介やっかいだぞ……。」


 エリプスは無表情な声で応援した。

「イツキなら必ず出来ます。頑張ってください。」


 鳥山イツキはニヤリと笑った

「言うねエ。ああ、分かったよ。やりゃいいんだろ、やりゃあ。但し今は無理だ。次回までの宿題って事にしといてもらうよ。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き

 香々美かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持

<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織

 ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。

 クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。

 ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹

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