222 創造主が自分で創造したものを自由に出来るとは限らない【他世界の話】
鳥山イツキはこの三日間と言うもの、ずっとSSSランクの攻略に向けた対策を考えていた。
様々な文献を参照したり、最近開発されたばかりの新素材を調査したり、高度な設計図を見直したりと忙しなく動き回っていたのだ。
彼女は今日のダイブについてゼウスたちにシミュレーションゲームをしない様申し出ていた。
何故なら今後の準備と実験に時間を割きたかったからだ。
千を超えるFスターを始め、無数のイツキポッド、イツキボット、イツキロイド等など。
今やその大軍勢が鳥山イツキの手駒となっていた。
この他にも現在、砲台星キャノンスターや大規模工場群を収めた星ファクトリースターを建設中だ。
さて、イメージさえすれば様々なものを実現化出来るこの仮想世界。
では何故わざわざこの様な工場群が必要なのか。
それには創造物の完成度が大きく関係していた。
戦闘機を一つ作成する場合でも一つ一つの部品形成や材質、接合部に至るまで配慮すべき多種多様な要素が混在している。
鳥山イツキの頭の中には現実世界の電脳機器や諸々(もろもろ)の兵器を含めた、ありとあらゆる工作物の設計図と作業工程が蓄積されていた。
しかし、イメージだけでは細部に至る所で気を回せない所が出て来るし、何より改良の余地を見逃してしまうのだ。
例えばネジとネジ穴の一組を取ってみても、用途によってその材質や精巧さ、または締め具合如何で全体の性能に大きな差が出てしまう。
イメージすれば細部まで考えが及ばずともコンピューターが全体の機能を考慮して当たり障りの無い様調整してくれる。
だが、より高性能を目指すならとことん細部にまで拘る必要があったのだ。
現実での制約を取っ払える仮想空間であれば猶更改良の余地は広まって来る。
鳥山イツキはこの様な細部に至る配慮や改善を自分の代わりに実行してくれるシステムをこのファクトリースターに取り込んだのだ。
この星は既存の装置や兵器を改良しつつ大量生産する機能を持つ。
それは彼女がこの仮想現実世界に居る限り継続された。
敵は現時点でさえ千万単位の数で押し寄せて来ていた。
今後も更に強くなり、その数も天文学的に増加する事が予想出来た。
つまり、ファクトリースター建設の意義は現状に於いてとても大きいのだ。
しかし問題はまだまだ山積していた。
それはイツキロイドをはじめとする全ての兵器がオリジナルのコピーである事に起因していた。
彼女たちがダイブする仮想現実の世界では一つを設計、製造してしまえば、それを大量にコピーする事は容易だ。
問題はそれを操る能力がどれほど高いかなのだが、ゼウスから見ても鳥山イツキのそれらを掌握及び操作する能力は尋常ではなかった。
だがコピーであるが故、攻略法が一つでも見破られてしまえば全てが同様の方法で殲滅させられてしまうのだ。
ファクトリースターでの細かな改良は常に行われる事になるが確率的に全てを払拭出来るものではない。
鳥山イツキはこの弱点を懸念していたのだ。
勿論、ある程度は数で押す事も可能だろう。
しかし敵のランクが上がって行けばその力量や相性等で一機に形成を逆転される事も十分にあり得る。
それをさせない為には前以て準備をしておかなければならなかった。
その一つが研究開発星シンクスターだ。
この星は情報を分析する事で現存する兵器をより進化させたり新たな兵器を提案したりするコンピューター機関だ。
ファクトリースターとの連携によりその効果を存分に発揮してくれる事だろう。
また、このシンクスターは戦闘中に於いて常に敵の能力や動向を捉える機能を有していた。
更にそれらのデータから今後の展開を高速でシミュレーションし、対策を算出する事も出来た。
そして、その情報と作戦を適時全兵力に送信するのだ。
また、解析衛星アナスターはシンクスターの手足となり敵を観察、解析する。
この様に戦闘を補助する為の機能を多々取り入れる事により攻防の進化をより早く推進する事が出来るのだ。
だが、これだけ準備しても鳥山イツキに取ってはまだまだ心許無かった。
彼女の性格もあるのだろうが、それは真っ当な気付きと言えた。
もしこちらの攻撃が一切通用しない敵が現れたら……。
もしFスターを一撃で消滅してしまう程の敵が出現したら……。
その時、鳥山イツキの脳裏に一つの考えが過った。
「だが、そんな事が果たして可能なのだろうか……?」
彼女は今正に、この仮想空間で”それ”が可能なのかどうかを試そうとしていた。
”それ”とはこの仮想空間そのものをコピーし、平行世界として存在させると言うものであった。
つまりはこの電脳世界における『異世界創造』だ。
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持
<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織
ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。
クロートー … ニュクス先駆隊。長身で細身。モイラ三姉妹の長姉。
ケラシス … ニュクス先駆隊。屈強。モイラ三姉妹の次女
アトロポス … ニュクス先駆隊。少女の様な見た目。モイラ三姉妹の末妹




