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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
219/624

219 音を奏でる格闘技【他世界の話】

 チャンチャンズッチャチャン! チャンズチャッチャチャン!

 歌寺ミナモを取り囲むように並べられた百の四角い枠が様々な色に点滅していた。


 光った場所に攻撃を入れると音が鳴るのだが、色によってその攻撃方法を変えなければならなかった。

 赤ならパンチ、青ならキック、緑ならサーベル、黄色なら光弾と言った具合だ。


 運動能力は常人並みの彼女ではあったが能力スキル『加速!』と『身体強化!』を使う事で超人と化していた。

「うわっ! こんだけ身体が動くと運動も楽しくなってくるわ! それにいくら動いても全然息が切れないし!」


 ゲームはまたもやパーフェクトで終了した。

 アトロポスは彼女に次の練習を指示した。

「今度は枠の中に1から10の数字が出るからその強さで攻撃して。」


 歌寺ミナモは元気に返事をした。

「はい、アット先生! よろしくお願いします!」


 アトロポスは小さな少女の様な見た目だが、そのアドバイスは的確だった。

 そのお陰もあって歌寺ミナモの能力スキルは見る見る上達していった。

 歌寺ミナモが『先生』と呼ぶのはそんな経緯いきさつからだった。


 的は高速で点滅するも歌寺ミナモにとってはスローモウだった。

「これくらいなら余裕ね!」


 ゲームが一段落するとアトロポスは彼女に告げた。

「それじゃあ準備運動はここまで。」


 歌寺ミナモが「ふう」と一息いていると目の前に彼女より少し大きい黒い甲冑を身にまとった敵が現れた。

「うわ! 何よこいつ!」


 あせる歌寺ミナモにアトロポスは無表情で告げた。

「さっきより簡単。これも音ゲーの一種だから。形が違うだけ。」


 歌寺ミナモは師匠の言葉で少し落ち着いた。

「あ、音ゲーなんですね。それならやれる気がします。」


 アトロポスはルールを説明した。

ずは相手の攻撃を防御する所から。受けてもいいしかわしてもいい。で、敵の身体の一部が光るからそこを攻撃する事。」


 歌寺ミナモは生まれてこの方格闘技などした事は無かった。

「受けるって……? そうだ、確かそんな能力スキルがあったような……。」


 彼女は先程能力スキル一覧で目についた『格闘!』を発動させてみた。

 すると格闘技について古今東西の知識が頭の中に流れ込んで来た。


 アトロポスはその様子を見るとゲームを開始させた。

「それじゃあ開始。」


 黒い甲冑のその敵は武器を持っていない。

 どうやら素手で来る様だ。


 敵は歌寺ミナモの顔面に向けて二度、三度と素早く拳で突いて来た。

「ジャブ。威力は無いが速度があり連打しやすいリードブロー。牽制けんせいやコンビネーションの突破口として有効……か。」


 歌寺ミナモはそのジャブをスウェイバックでけ続けた。

 しばらくすると敵の腹部が白く光った。

 その時、彼女の頭の中で何かがひらめいた。


 彼女は敵の左ジャブを左手の手刀で右に受け流すと、素早く身体をかがめながら左前方に移動させ、左足を『踏板』で踏ん張りながら強烈な右足の蹴りを相手の腹部に打ち込んだ。


 足裏の母趾球にズンと重い感覚が伝わった。

 すると敵は音も立てずに消え去ってしまった。

「何か……まったく音ゲーって感じしなかったけど……何か、めっちゃ楽しい!」


「音ゲーっぽくなるのはこれから。」

 アトロポスがそう言うと今度は二体の敵が現れた。


 ズッチャン、ズチャチャン!

 一体目は先程と同じ蹴りで、二体目はカウンターブロウでとどめを刺したらこんな音が鳴った。


 歌寺ミナモは大きく深呼吸した。

「ああ、私の一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくがリズムを刻み……そして今、最高の芸術おとが生まれる!」


 敵の数は十体、百体と増えて行ったが歌寺ミナモはまるでダンスでもするかの様に敵の攻撃を軽々とかわしながら撃破して行った。

 その都度つどつむぎ出される旋律せんりつは正に芸術であった。


 アトロポスは思わず呟いた。

「美しい音色……。」


「ありがとうございます! 師匠!」

 歌寺ミナモは嬉しかった。


 文化芸術関係の師匠は多くいたが格闘技となると教わった事もなく、自信など微塵みじんも無かった。

 アトロポスは生まれて初めての格闘技の師匠であり彼女の苦手意識をいとも簡単に振りほどいてくれた恩人なのだ。


 その恩人が自分の奏でた音色をめてくれた。

 歌寺ミナモの気分は高揚こうようし、その芸術的才覚は時に無敵の剣となり、時に獰猛どうもうな野獣と化した。


 SSランクのレベル51が十万体。

 ここでは既に音ゲーから離れていたが彼女は冷静に対処した。


 能力スキル『閉鎖!』で敵全体を閉鎖空間に閉じ込め、特殊能力スキル『弱点の解!』で敵の弱点を分析。

 とどめは能力スキル『重振動!』ですべての敵を跡形も無く粉砕した。


 歌寺ミナモは何だか一つ大人になった様な気がした。

 ……のも束の間、直ぐに元に戻った。

「はっはあっ! これがSSランク? ちゃんちゃら笑わせるっての!」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き

 香々美かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持

<反乱軍オリュンポス>GmUから仲間を奪還し正常化を目指す組織

 ゼウス … 総司令。敗戦後ガイアの中に隠れ潜む。

 クロートー … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。モイラ三姉妹の長姉

 ケラシス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。モイラ三姉妹の次女

 アトロポス … ニュクス先駆隊『運命の三女神』。モイラ三姉妹の末妹


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