217 記憶の選別【他世界の話】
北守カズミは質問した。
「それじゃあゼウス氏にも本名があるって事かな?」
ゼウスは素っ気なく答えた。
「ああ、そのはずだね。」
北守カズミは訝し気な顔をした。
「どうゆう事?」
ゼウスは彼女の問に答えた。
「記憶がないのさ。と言っても故意に持って来なかったんだけどね。闘いが熾烈になるにつれて人間関係や自分についての記憶が邪魔になって来たんだよ。」
北守カズミは少し考えながらも理解を示した。
「成程、分かる気がするな。戦闘と言っても長期接戦となるれば人間同士の蟠りや己心が大きな弊害となる。だがもしそれが無ければ良い意味で機械的な最短の対応が可能になるってわけだ。」
非天レイカはまたしてもゼウスたち、即ちGmUが持つ驚異的な科学力の片鱗を見せつけられた気がした。
「そんな事も出来るんですか? まさか本人の持っている記憶を一つ一つ分析するとか?」
ゼウスはその質問に答えた。
「いやいや、そんな面倒な事はしないよ。GmUもよく使っている方法だけどフィルターを掛けて記憶を抽出するんだ。例えば怨恨や憎悪、または殺人を犯した記憶なんかはある特殊な形となって情報形成されている。それを人元次元でフィルタリングする。そうすればそれを行った人物を篩に掛ける事が出来るだろ? この原理を応用したんだよ。」
非天レイカは少し悔しそうな顔をした。
「やはりと言うべきか……そんな事が可能だったんですね。悪い予感が当たってしまいました。」
歌寺ミナモは渋い顔をした。
「うへぇ~、そんな……自分の記憶まで消して……信じられない!」
鳥山イツキはポツリと呟いた。
「うん。だが何れ私たちもそれを免れないのかもしれないな。」
歌寺ミナモは熱り立った。
「え? ちょっと! まさか私たちも……? 嫌よ! 断固反対! 記憶なんか消させませんからね!」
海野は青ざめた顔の歌寺ミナモを宥めた。
「大丈夫だ。記憶を消す様な事はしない。寧ろ記憶を消してしまえばこの計画は進まないんだ。」
北守カズミは少し残念そうだ。
「な~んだ、私ぁこの際ごっそりと記憶を消してもらって何の気兼ねも無く思う存分暴れたいんだがな。」
歌寺ミナモは北守カズミを睨みつけた。
「ふんだ。そんじゃあんただけ記憶を消してもらえば?」
北守カズミはにこやかに片手合掌で謝った。
「いやいや、失敬失敬。でも記憶は消えて無くなるわけじゃないんだぜ。」
歌寺ミナモは北守カズミを横目でジトっと見た。
「そんな事分かったもんじゃないでしょう。私の記憶は超次元の天才的に複雑なんですからね! あんたのはどうか知らないけど……!」
北守カズミは思わず苦笑いした。
「うひゃ~、言うね! こいつは一本取られた。ははは。」
歌寺ミナモは少し落ち着いた様だ。
「ま、ちょっとは安心したわ。その計画とやらがどんなもんか知らないけど。」
海野は話が一段落した所を見計らって皆に指示した。
「さて、そんじゃあそろそろ始めるか!」
非天レイカと北守カズミは皆が見守る中クロートー、ケラシスと共に第四階層へと移動した。
「今回の扉は流石に重厚な感じがしたな。」
北守カズミの言葉を聞いてクロートーが扉のイメージについて説明した。
「ええ、この入り口はかなり複雑な仕組みになってるからそれが具現化したのでしょう。」
北守カズミは呑気に辺りを見回した。
真っ白な広い部屋の中央には湾曲したデザインの黒い大テーブルとその周りに椅子が七つ。
非天レイカたち四人がそこに近づくと、前方にゼウスたちの3D映像が現れた。
そこには他の生徒四人の姿は無かった。
「あれ、みんなは?」
海野は北守カズミの問いに答えた。
「ああ、もう自分たちの場所に向かったよ。で、そっちはどうだ?」
北守カズミは不思議そうな顔をして言った。
「どうと申しましても……まだ部屋に入っただけですから。」
ゼウスは「え、何も感じないの?」と言いながら二人を見た。
「いや、普通はそこに入っただけで圧倒的な威圧感に襲われるんだが……本当に何ともないの?」
非天レイカと北守カズミは自身の感覚を改めて確認した。
「う~ん、特に何も感じませんが……。」
その時ケラシスの顔が険しい表情に変わった。
「勘付かれたぞ!」
北守カズミは嬉しそうに言った。
「早速お出ましか! で、どうやったら外に出られるのかな?」
クロートーがさっと右手を一振りすると部屋は一瞬にして消え去り周囲には前回の戦場と同様の星無き宇宙空間が広がっていた。
ケラシスが叫んだ。
「真上!」
躱せない!
非天レイカはスウェイバックしながら両腕を交差して頭上から振り下ろされた黒い右拳を受け止めた。
バチィーーーンッッ!!!
凄まじい衝撃が非天レイカの両腕に伝わった。
「……強い!」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持




