215 天・龍のスキル【他世界の話】
現在、四度目のダイブ中。
Z組の生徒と担任の海野ラン、副担任の帝ソヨギ、ゼウスの九人は仮想現実空間につくり出された広い部屋の中に集まっていた。
全員注目の中、北守カズミは早速自分の能力を確認する事にした。
彼女は蛇代ヨウコに教えてもらいながらマニュアルの様なものをイメージしてみた。
すると目の前に透明のモニターでも在るかの様に長方形の枠が出現した。
「ええと、これが今の私の能力か……最初見た時より増えてる。やたら沢山あるな。」
【基本能力】
即滅 気合 突破 身躱 切回 踏板 掌撃 密球 分身 ……
蛇代ヨウコはそれを覗き見た。
「もっと下の方に【特殊能力】ってのがあるでしょう。」
「あ、ああ。下の方、下の方っと……これか。」
ページを下の方へスクロールして行くと、そこには北守カズミの特殊能力が表示されていた。
【特殊能力】
起力 元力 廃力 …… 開力
「お、あった。これな、『開力』……。】」
その文字を見た瞬間、北守カズミの頭の中にその能力のイメージが流れ込んで来た。
「成程、こうやって使うのか。」
海野と帝は全員に見える様自分たちの能力をモニターに映し出した。
「で、これが現在引き出されている私たちの能力だ。」
海野ランの能力は次の通りだ。
【基本能力】
一文字 二文字 三文字
【特殊能力】
真一文字 真二文字
そして、帝ソヨギの能力は次の通りだ。
【基本能力】
治癒の雫 拘束の蔓 害毒の影 感知の光 守護の花
【特殊能力】
軍勢の儀
海野は北守カズミに指示した。
「北守、先ずはその『起力』で既に引き出された能力をレベルアップさせてくれ。」
北守カズミは両掌を前方に向け『起力』を使用してみた。
すると海野と帝の身体が一瞬薄っすらと光を帯びた。
海野は次の指示を出した。
「よし、いいぞ北守。次は『開力』で新たな能力を開花させてくれ。」
北守カズミは先程と同じ感じで『開力』を発動させた。
すると今度はブンッと前に向けた掌から衝撃波の様なものが発せられ、それが海野と帝の方へと伝わった。
「大丈夫ですか? 先生……。」
海野は軽く右手を挙げた。
「ああ、何ともない。大丈夫だ。」
帝も大丈夫な様だ。
「ふう、ちょっとびっくりした。うふふ。」
モニターを確認すると二人の能力一覧は更新されていた。
蛇代ヨウコは「ふむふむ」と言いながらそれを読み上げた。
「海野先生は新たに『四文字』、特殊能力の方には『真三文字』が加えられてるね。お! 【固有スキル】『魔一文字』なんてのもある! カッコいい!」
非天レイカは海野の『四文字』と言う能力に注目した。
『一文字』は糸の様な直線で空間を切り裂く。
『二文字』は平面で空間を二分する。
『三文字』は空間そのものを粉々にする。
『一文字』は威力こそ絶大だが時間を喰う。
『三文字』は一撃必殺ではあるが広範囲での使用は不可能と、それぞれ特徴がある。
さて、『一文字』は一次元の直線の刃、『二文字』は平面の刃、『三文字』は空間の刃で切り裂く。
では『四文字』とは……時空の刃で切り裂くのだろうか?
蛇代ヨウコは帝の新たな能力も読み上げた。
「で、帝先生の方は『決起の鐘』、特殊能力には『試練の儀』? あ、後固有能力に『安息の鼻』ってのが追加されてるけ……鼻って何だろ。何か帝先生の能力って分かり難いな……。」
帝はフフッと笑いながらい言った。
「ええ、我ながらね。正直使ってみないとどんな能力か分からないわね、これじゃ。」
帝の能力はどうやら後方支援に偏っている様だが、恐らくこれは二人の闘い方が起因していると非天レイカは考えた。
海野はその性格故、自ら先陣を切って闘ったのだろう。
そうであるなら帝がそれをサポートする役を担うのは必然だ。
そもそも実生活からしてそうなのだ。
北守カズミは二人の能力を見て一頻り感心すると自分の能力ってやつを更に引き出してみたくなった。
「さて、次は私たちの番だ! よろしくお願いしますよ、ゼウスさん!」
他の5人もどうやら二人の教師の力に触発された様だ。
ゼウスは皆の逸る気持ちを見て取った。
「ああ、それじゃあこの前言った通り非天と北守は第四階層に於ける実戦となるから。正直、今までの敵など問題にならないんで。決して油断しない様にね。」
非天レイカはいつも通り冷静に答えた。
「はい、心得ました。ところで質問なんですが、ここで実戦なんかしてGmUにバレたりしないんですか? 今回のは本物の敵、GmUの手下なんですよね。」
ゼウスは胸を張って自慢気に言った。
「ああ、それについては安心して任せてちょうだい! 僕の絶対防御スキルが作用する範囲で闘ってもらうからね。それに……。」
北守カズミは相槌を打った。
「それに?」
ゼウスは手をパンパンと叩いた。
「お三方、出て来てちょうだい!」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持