211 設計は楽し【他世界の話】
鳥山イツキは左腕のシールドをまじまじと見回してみた。
「どうにも使い方がわからんな。まあ何れにしてもビームダガーが躱された、となるとどうにも心許ない。」
彼女は持ち前の知識をいかし、欲しいと思う装備や武器の細部に亘る図面を頭の中で描いてみた。
「どうやらエネルギー元は私自身にあるらしいから……う~ん、ここにこんな感じで……。」
インターバルの時間は好きなだけ取る事が出来た為、彼女は思う存分思考を巡らせる事が出来た。
「さて、では装着してみるか。」
すると今度は両足や胴周りに先程と同様じりじりっとしたものを感じた。
確認するとそれらの場所にもアーマーらしき物が装着されていた。
彼女は等身大の簡易モニターを使って自分の全身を確認した。
腕と足には幾つかのノズルがあり、背中にはミサイルランチャーが宛がわれていた。
ミサイルランチャーには十個の射出口があり、それぞれにマシンガンの様な弾帯が備えられていた。
「おお、カッコいいぜ!」
彼女は胸部に光る直径20㎝程の円形をした赤い石を見て頷いた。
「よし、これも設計通りなら行けるだろう。」
次の敵はAランクのレベル11。
数は40体と表示された。
「お、早速お出でなすったか。しかも全方向から来るとは御誂え向きだ。」
彼女は出現した敵全てをロックオンすると背中にある小型ミサイルを丁度40発ぶっ放した。
ド、ドドド、ドドドドドシュ~ン!
「背中からいい感じの振動が伝わって来た。」
ミサイルは百発百中で40体の敵を木端微塵に吹き飛ばした。
彼女は拳を握って喜んだ。
「おお、思った通り行きやがった……。」
次はAランクのレベル21が100体、その次はレベル31が400体出て来たがすべてミサイルの餌食となった。
鳥山イツキは難しい顔をした。
「う~ん、流石に400体以上ともなるとオートマーキング機能が欲しくなるな。ミサイル発射時に動けないってのも今後大きな隙になる……。それと背中の振動もちょっとウザくなって来たし……。」
彼女は全長6メートル程の葉巻型簡易要塞を作ってみた。
ドアを開いて中に入ると設計通りコックピットからは全方向が見えており、要塞らしく様々な武器や装置が備えられていた。
「よし、次は何体だ? う……!」
彼女はその数字を見て眉を顰めた。
「二千体? う~む、ちとやり過ぎたか。まあ、先程の武器だけでもこれ位は行けるだろうっちゅうコンピューターの判断なんだろうな。取り敢えずやってみっか……。」
彼女は要塞に命令した。
「敵全体をロックオン後、直ちに攻撃開始!」
すると、4台のミサイルランチャーが要塞から切り離され、そこからミサイルが次々と発射された。
二千体の敵は次々と消滅して行った。
「うん、振動は無い。それにオート機能もうまく行った様だ。設計通りだな。」
次は全長40メートル程ある巨体のロボットが40体現れた。
「ちょ、デカ過ぎだろ……。」
先程の様にミサイルを打ち込んでみたが一発当てただけでは消えてくれなかった。
また、放ったミサイルの幾つかは敵に撃ち落とされてしまっていた。
「ほう、さすがにAランクのレベル51ともなれば簡単には行かないか……。」
鳥山イツキは葉巻型要塞から一人外へと飛び出した。
彼女がグッと集中すると胸の赤い石が輝きだした。
「行け!」
彼女の掛け声とともに無数の光線が胸の赤い石から発射された。
そして40体いた敵の巨躯はすべてその熱線に貫かれ焼失した。
「ははは、見たか! 超高出力マルチレーザーの威力!」
しかし彼女はこれだけでは満足出来なかった。
葉巻型要塞は全長20メートルの巨大ロボットに改造された。
この巨大ロボットは敢えて人型にデザインされていた。
そして操縦者である鳥山イツキの全身の動きにそのまま関連付けられていた。
これは様々な状況下を想定した場合、彼女自身が最も動き易いと思われた形態を考えた結果だった。
何より「巨大ロボと言えばやっぱり人型でしょう」と言う本人の好みが大いに影響していた。
普通で考えれば人型には難点が多く、宇宙空間での戦闘に於いては殊更無駄が多い事は承知していた。
それを少しでも補うべく、首と胴、両腕、両足は脱着が可能で鳥山の思い通り自在に動かす事が出来る様になっていた。
また、両肩から射出される四つの移動式カメラ端末で距離を置いた場所から客観的な映像を捉える事により、全方向からの攻撃にも対応し易くさせてあった。
最初は戸惑う所もあったが、慣れて来るとかなり使い勝手が良く次々と強敵を打倒す事が出来た。
その後も戦闘を進めて行く度に彼女は更なる兵器の改良、増産を推し進めた。
先程の巨大ロボット『イツキロイド』も自動化し、大量生産した。
他にも自律型の小型要塞や母船、各種兵器を大量に作り出した。
そして今、それらすべてを収容しコントロール出来る直径1000kmの球形大要塞、Fスターを完成させてしまったのだ。
因みに月の直径は約3474㎞で重力は地球の凡そ6分の1。
このFスターは平均密度を約7000(㎏/㎥)とし、重力が地球とほぼ同じになる様調整してあった。
Fスター内部ではシステムを支えるための大小様々なロボットたちが絶え間なく働いていた。
また、無数の建造物の中にはこれまた無数の兵器やコンピューターが収納されていた。
鳥山イツキの意志の元、すべての活動を支えるコンピューター群の城。
ゼウスたちが目の当たりにしたものは正にそれであった。
副担任の帝ソヨギはその広大な近代都市を眺めながら呟いた。
「こっちはこっちで何やら大変な事になってますね……。」
担任の海野ランもその光景を唯呆然と眺めていた。
「ああ、何やら大変な事になってる……。」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持




