204 イマジネーション【他世界の話】
一通りゲームの説明が終わると生徒たちの目の前にそれぞれ1つずつ扉が現れた。
扉にはそれぞれ6人の名まえが記されていた。
歌寺ミナモは早速文句を言った。
「ちょっと、何よこの面白味の欠片もないドアのデザインは! まるでトイレのドアじゃないのよ! テンションだだ下がりよ!」
担任の海野ランは「言うと思った」と心の中で呟きながら歌寺ミナモに指導した。
「なら良い機会だ。歌寺、お前そのドアのデザイン変えてみろ。イメージを練り上げて……そう、それを目の前の扉に反映させる。」
歌寺ミナモは言われた通り扉のデザインを頭の中で練り上げた。
そしてそのイメージを自分用のドアに重ねた。
するとそのドアは緑地に赤いライン、黄色い花柄模様の美しい扉に変化した。
「わ、やったわ! イメージ通りよ!」
鳥山イツキは感心した。
「成程、そんな芸当も出来んのかい。流石は電脳の世界だな。」
北守カズミは目を見張った。
「おお、こいつは戦闘でも役立ちそうだな。」
蛇代ヨウコは無邪気におねだりした。
「ミナモ、私のもやってやって!」
他の生徒も自分のドアを変化させようとイメージした。
非天レイカの扉は真っ白な大理石に美しい彫刻が施されたものになった。
北守カズミの扉は巨大で重々しい鋼鉄の扉に変化した。
鳥山イツキは特撮に出て来る様なスチームパンク調のドア。
香々美フジコは「え、え~」と言いながら戸惑っていた。
「ミナモ、私のもやって。」
歌寺ミナモは満更でもない顔をして面倒くさそうに言った。
「はいはい。それじゃあ蛇代はスクロールゲームだったわね。で、香々美はシミュレーションゲームだから……。」
すると蛇代ヨウコの扉は遊園地のアトラクションにある様な楽し気な扉に変化した。
蛇代ヨウコは小躍りして喜んだ。
「やった~! テンション爆上がり!」
香々美フジコの扉は美しいシルバー。
タイル状のデザインが見事なバランスで施されていた。
香々美フジコも喜んだ。
「やった~。テンション爆上がり~。」
ドアの一件が片付いた所で海野は扉に入る様促した。
「まあ、こんな感じで現実世界とはかなり違う特性がある。今日はゲームの中でそれを体感してくれ。」
生徒たちが扉に入るのを見届けるとゼウスは空間にちょっとした部屋を創り出した。
ゼウスら3人はそれぞれ部屋に設置された椅子に座り、前方のモニターを見た。
「先ずは北守カズミと非天レイカかな。まあ前回同様、ここは問題は無かろう。」
北守カズミが重い扉を押し開けて中に入ると遠方に敵らしい人影が……。
気付いた瞬間その甲冑は凄まじい速さでこちらに接近して来た。
「おわ、速え!」
2メートル程ある巨漢の敵は躊躇なく剣を振り翳して来た。
「だがまだだ。」
北守カズミは一瞬にして敵の背後に回り込み右掌で相手の耳部を叩いた。 するとそのまま首が吹っ飛び消滅してしまった。
北守カズミは気合いを入れた。
「ほら次! さっさと来んかい!」
非天レイカは身体を動かしながら数えていた。
「S1終了……S11……S21…………S100終了。次、お願いします。」
ランクが進むにつれて数が10体、100体と増加したが彼女の進撃は止められなかった。
二人がSランクをすべて終了させるのに5分弱。
敵のスキルは武器中心の火力系のものが多かったが二人にしてみればどうという事は無かった。
ゼウスから連絡が入った。
「早! ……ほんじゃまあ、次はSSだね。まあ無理はしない様に、一応言っとくけど。」
海野は二人に指示を出した。
「出来たら他の能力も試してみるといい。」
二人は了解し、早速使用してみた。
SSランクのレベル1はいきなり四百体で向かって来た。
「試すには丁度いい数だな。」
北守カズミは『密球』を使って我が身を超硬質の球に変化させた。
超硬質の球は目ではとても捉えきれない速さで次々と敵を貫通し消し去った。
更には『分身』でその球の数を百以上に増加させ、レベル11五千体を1分程で撃退してしまった。
非天レイカも使った事が無い能力を試してみた。
「どんな能力があるんだ?」
そう彼女が頭の中で考えると、目の前に透明のモニターが現れ大量のスキルが一覧として表示された。
非天レイカはその名称を見るだけで能力の内容を把握できた。
「取り敢えず上から順番に使ってみるか……。」
SSランクのレベル1四百体は能力『喝』の一撃ですべて消滅した。
「これじゃ仲間も一緒に巻き込んでしまうな……検証の余地ありだ。」
『喝』は空間に激しい衝撃波を生じさせる技なのだが今一つ面白みに欠けた。
もっと戦ってる感じがする能力の方がいいな……。
レベル11が五千体。
非天レイカは『掌』を使ってみた。
すると途轍もなく巨大な掌の分身が宇宙空間に出現した。
その掌は彼女の右掌と連動していた。
非天レイカが自分の右掌を軽く右から左へと動かすと、その巨大な掌の小指は軽く触れるだけで五千体の敵を一撃で弾き飛ばしてしまった。
またも一撃。
能力『視』で確認してみたが残っている敵はいない様だ。
「弱すぎだな……練習にもならん……。」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持




