２００ 敵が来ないんですが【他世界の話】
ゼウスは張り切って言った。
「よし、先ずは十体ほど相手にしてもらおうか！」
だが暫く経っても敵は姿を見せなかった。
北守カズミはゼウスの方を見た。
「ん？ 敵は何処だ？」
ゼウスは不思議そうに言った。
「あれ？ 何処かな……。」
担任の海野ランは苦笑いした。
「いや、ゼウス氏が出したんでしょ、敵……。」
ゼウスは「もう一回！」と言った。
だが、やはり何処にも敵らしきものは現れなかった。
ゼウスたちが不思議がっていると蛇代ヨウコの身体が突然青白く光った。
「何か……分かったよ！ 敵は確かに出て来てたみたい。一度目は十体、二度目は三十体。」
ゼウスはギョッとした顔で蛇代ヨウコを見た。
「その通り、二回目は三十体だ。でも何故現れない……いや、やはり現れたのか？」
蛇代ヨウコは頷いた。
「うん、でもカズミンの能力で出て来た瞬間に消滅しちゃった。」
「何と！」
ゼウスたちは声を揃えて驚きの声を上げた。
海野は眉間に皺を寄せた。
「北守の能力ってのは『夜叉王』のものか……。凄まじいな。」
当の北守カズミはキョトンとしていた。
「ん？ 私何もしとらんよ？」
帝は真面目な顔をして言った。
「基本的な能力には自動的に発動するものが多いのよ。因みに蛇代さんがその事実を掌握できたのは『乾闥婆王』の能力。波動の性質を瞬時に解析する力だと思われます。」
ゼウスは首を横に振った。
「うむむむ、こいつは……。敵のレベルを２に上げてみるか……。だが初心者なのにいいのかな？」
蛇代ヨウコはゼウスに言った。
「おっちゃん、大丈夫だよ。それにレベル３までは今と同じ。レベル４以上じゃないと直ぐに消されちゃうよ。」
ゼウスは海野の方を見た。
海野はゆっくりと頷いた。
「いざとなったら私たちが出ます。レベル４からやってみましょう。」
ゼウスは「そう？」とだけ言ってレベル４の敵キャラクターを呼び出した。
「ほんじゃあ取り敢えず一体だけね。」
空間上に何かが現れた……と同時に消え去った。
皆、何が起こったのか分からずそれが消滅した辺りを眺めていると蛇代ヨウコが説明し出した。
「今のはレイカの能力だね。一睨みで消え去ったよ……。」
非天レイカは不思議な顔をした。
「睨んだ覚えなどないが……。」
ゼウスと海野は目を見合わせた。
「これは……！」
蛇代ヨウコはゼウスたちに告げた。
「多分レベル１０までは今みたいな調子で敵を消し去っちゃうよ、一瞬で。まともに姿を現すのは……そうね、レベル４０以上かな。」
海野は目を見張った。
「私たちが実戦用の能力を引き出せたのは３回目、１０時間以上練習を積んだ後だったってのに……。」
ゼウスはモニターに映る非天レイカを見ながら海野に言った。
「まあ、それでも十分早いんだがね……。」
帝も目を丸くした。
「ええ、まさか最初からここまでの能力を発動させるだなんて……。」
ゼウスは海野たちに尋ねた。
「どうする？ 続けるかい？」
海野は困惑していた。
「初日からレベル４０はちょっとな……どうしたもんか。」
すると北守カズミが威勢のいい声を出した。
「おいおい、折角ここまで来て何もやらずに終わりってんじゃあないだろうな。レベル４０でも５０でもドンと出しちゃってくださいよゼウスさん！」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私（フィナ・エスカ）… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。９歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド４人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ（ヨナの兄）
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア（ミーネ） … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵（ナミエ） … ＡＩポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター（仮）
山本春子 … ナビゲーター（自称）。私の喧嘩相手
【株式会社３Dボーカロイド】略して３Ｄボカロ
＜研究開発部＞
蟹江ジュン … 第１研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。２児の母
蛯名モコ … 第６研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Ｚ組】
＜生徒＞
非天レイカ …… Ｚ組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長１２０㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
＜教師＞
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持
