196 おっさんに命を預けるとか【他世界の話】
北守カズミは質問した。
「で、その御大層な八人が揃って一体何すりゃいいんだ?」
モニターに映る海野ランは右手の人差し指を立てて頷いた。
「本来なら人類の方向性をも変えてしまう程の影響力を持つ我々だが……あ、これは私じゃなくてゼウスさんが言った事なんで……相手が異世界の怪物となると話は別だ。」
非天レイカは無表情で言った。
「つまりこのままでは太刀打ちできないと。」
担任の海野ランは非天レイカに視線を移した。
「残念ながらな。だが、手は無くもない。」
この話の先が見えてしまった香々美フジコは悲痛な顔をした。
鳥山イツキはアワアワしながら問うた。
「まさか……そっちに行くなんて話じゃないだろうな……。」
歌寺ミナモは眉を顰めて鳥山イツキの方を見た。
「イツキ何? それってどうゆう事よ。」
鳥山イツキは歌寺ミナモの言葉が聞こえなかったかの様に顰めっ面で頭をガリガリと掻いた。
「え、まさかだろ……。勘弁してくれ。」
歌寺ミナモは苛立った様子で蛇代ヨウコの方を見た。
「何よ! どうゆう事?」
蛇代ヨウコは少しワクワクした表情を覗かせていた。
「もしかして私たちがゲームキャラになっちゃうとか?」
鳥山イツキはぼやいた。
「そんな可愛いもんじゃねえよ。つまり先生たちみたいに成れって事でしょ? ねえ先生方。」
海野は肩をすぼめながら両掌を上に向けてニンマリとした。
「ま、そう言うこった。勿論死ぬ必要はないがな。で、実はな、もう電脳ダイブ装置や生命維持装置は100セット程既に完成している。来月には300を超えるだろう。まあ、先ずはテストだ。入りたい奴だけでいい。無理強いするつもりは毛頭無い。」
北守カズミは暫く考えてから質問した。
「それって安全なのか? 反乱なんかしたら電源落とされたりして……。」
ゼウスが海野のブロックを躱してまたもや前面に出て来た。
「その為の僕で~す! 任せて任せて!」
海野はゼウスの頭を鷲掴みにして後ろへ押し返した。
「ああ、つまりはこの空間と同様ゼウスさんが何とかしてくれる……らしい。」
「うお~い!」
北守カズミと歌寺ミナモが突っ込みを入れた。
「らしいって、そんないい加減で大丈夫なのか?」
「私、とてもその人に命を預ける気にはなれないんだけど……。」
副担任の帝ソヨギは海野の頭を軽く叩いた。
「ダメでしょ、そんな言い方したら。皆が不安になるじゃない。」
海野は半笑いで「わりぃ」と謝罪した。
帝は皆に少し引き攣った笑顔を見せた。
「まあ、こんなんでも私たちの命を救ってくれた方ですから。」
ゼウスの顔面を掌で押さえ前に来させまいとしている海野を横目に歌寺ミナモは言った。
「突っ込みたい所は多々ありますが……先ずはその『命の恩人』って何よ!? 初耳だし! 後その命の恩人に対する態度とか……いいの? それで……。」
北守カズミは意外そうな顔をした。
「え? 話の流れからしてどう考えても二人の命を救ったのはゼウス氏だろ。気付いてなかったのか?」
歌寺ミナモは「うっ」と声を漏らし委縮した。
「まさかこんな筋肉馬鹿に指摘されるとは……。」
北守カズミは「へっへえん」と言ってご満悦の様子だ。
因みに歌寺ミナモは学年5位、北守カズミは学年6位の成績だ。
しかも学年7位とは大きく差が開いていた。
Z組6人の得点は特待クラスの中でも群を抜いていたのだ。
帝は半ば諦めた様な表情で答えた。
「まあ、私たちも最初は敬意を払ってたんですけどね……。分かってもらえるかしら?」
非天レイカは今回得た新たな情報について考えを纏めていた。
「つまりそのゼウスさんはGmUの一部に成り済ましているからこそ、そう言った芸当が可能って事でいいの?」
ゼウスは海野の掌で顔面を圧迫されながらもピースをしながらはしゃいだ。
「はい、そうで~す! 僕はGmUの絶対防御システムにおわすのでそんな事も出来ちゃうんだよ~ん! 絶対バレない自信あり!」
海野は苦笑いをしながら掌に力を込めた。
「だからお前のそうゆうお茶らけた態度が不安を煽ってるんだって言ってるんだろうが!」
帝は二人を敢えて無視した。
「そう、私たちは恐らくだけど……GmUに殺害されたらしいの。まあ色々と動いてたもんで癇に障っちゃったのかしらね。それをこの世に引き留めてくれたのがゼウスさんだったってわけ。」
ゼウスはしかめっ面をして腕を組んだ。
「僕はガイアの一部なんでウラノスの計画すべてを把握する事は出来い。だがまさか『天・龍』を殺害するだなんて……GmUはああ見えて直接手を下すなんて事は一度もしなかったと言うのに……。」
海野は「まあまあ」と言ってゼウスの肩をポンポンと軽く叩いた。
北守カズミは驚いた顔をして尋ねた。
「それってさっきの……何だっけ? 疑似のτ(タウ)ファウンデーション? とか言うやつでQCの中に繋ぎ止めたわけか?」
帝はニコリとして「ええ、その通り」と言った。
「私たちの記憶が人元に溶け込む前にね。勿論、ゼウスさんの能力で私たちの事はGmUに気付かれていない。だからあなた方がこの電脳世界にダイブして来てもその辺の心配はないって事。生命維持装置にしても誰にも触れさせないし私たちの計画も認識させやしない。」
北守カズミは「う~ん」と唸りながら腕を組んだ。
「けど、私たちがそっちに行った所であのGmUを本当に抑えられるのか? まあ、電脳世界に入るってのがどんなだか全く見当つかないけど。」
香々美フジコはぽつりと言った。
「それとGmUを抑えた後の事も考えなくっちゃね。」
歌寺ミナモはその言葉を聞いてハッとした。
「そうよそうよ! 犯罪者だって拘束されてない状態でそこら中にいるわけだし、戦争だって……すべて滅茶苦茶になるわ! けど、音楽や芸術が無くなっちゃうのも嫌だし……。」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【研究員養成学校中等部 Z組】
<生徒>
非天レイカ …… Z組を復活させた。大卒
北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き
香々美フジコ …… 寝るの大好き。学年主席
歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル
蛇代ヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位
鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女
<教師>
海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪
帝ソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持




