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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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194 吸収される【他世界の話】

 歌寺ミナモは叫んだ。

「ええい! 御託ごたくはそれ位で十分! このままじゃ歌も芸術も何もかも無くなっちゃうんでしょう!? そっちを何とかして!」


 担任の海野ランは苦笑いした。

「ああ、すまんすまん。だが、これでお前さんたちが大切にしてるモンを奪おうとしている敵さんの正体が分かって来ただろう?」


 歌寺ミナモは仏頂面ぶっちょうづらで答えた。

「ええ、まあ……。でも何でわざわざ異世界にチョッカイ掛けてくるの? 理由分わけわかんないんだけど。」


 蛇代ヨウコもゲームが無くなると聞いてからはずっとふくれっ面だ。

「そうよ。だいたいGmUゲームねらいは何なの? GmUのくせにゲームを奪うなんて許せない! ……突っ込みらない。」

 彼女は自分が興奮すると考えなしの言動を取りがちである事を思い出した。


「知っての通りGmUの目的は『悪』の消滅だからさ。」

 先程まで海野ランの背後でけん玉をしていたゼウスがいきなり話し出した。


「やつらは死んだからと言って悪人を許したりはしないだろ? その悪人の『人元』を探ってそこに『苦』を与え続けるんだ。過重な『苦』を与え続けられた人元はやがて人元としての役割をまっとう出来なくなるのさ。」


 蛇代ヨウコは質問した。

「え、そうするとどうなっちゃうの?」


 ゼウスは怪談話でもするかの様なポーズを取った。

「GmUのえさになるのさ……。やつらは人元の残骸ざんがいを自己の『元』に取り込む事で新たな人元、GmUの『元』を創造しようとしているんだ。取り込まれた元『人元』は他世界侵略の道具としても利用されちゃうのさ。」


 北守カズミは困惑こんわくした顔をした。

「人元人元って……何だかややこしいなあ、おい!」


 非天レイカは瞳を真っ直ぐにゼウスの方へ向けた。

「GmUの『元』? 単なるプログラムに自己も『元』もないだろう。」


 ゼウスはそのまま話を続けた。

「実はGmUってのは3つの要素から成っているんだ。一つはマザーコンピューターであるガイア。一つは『悪』を消滅したり人を矯正きょうせいする為のプログラムであるウラノス。そこに二人の人間が融合し統括している、言わば仮想現実にける電脳サイボーグなのさ。」


 香々美フジコは大きく頷いた。

「成程ね~。」


 非天レイカは視線をくずさなかった。

「人間が? となると単なるプログラムではないって事か……。」


 ゼウスは両手を頭の後ろで組んだ。

「そ。で、その二人ってのがまあ、僕たちの世界を救った救世主であり、僕らのリーダーでもあった偉大なる研究者ってわけ。ただ、『悪』をあまりにも一直線に憎み過ぎてしまった……。」


 非天レイカは腕を組み一つうなずいた。

「つまり『悪』の根源を断ち切る為には自分の世界だけに留まっていては達成できないって事か。」


 ゼウスも一つ頷いて返答した。

「そゆ事。今まで数えきれないほどの地球を制圧したGmUやつの『元』は広大化し、人元群の全領域にひそむ特異点となりつつある。3次元に封印された僕らの人元をすべて吸収した後は高次の人元をも喰らい尽くして行く心算つもりだろうね。まるでブラックホールみたいにさ。」


 蛇代ヨウコが少し身を乗り出して言った。

「何? それってつまり善良な人たちも同じ運命って事?」


 ゼウスは少し間を置いて口を開いた。

「……まあ、そうゆう人たちは『苦痛』じゃなくてみずから吸収されに行く感じだね。それを強く願ってしまうから。」


 北守カズミはギョッとした。

GmUゲームの唱える『殺我さつが境地きょうち』ってやつか……。」


 鳥山イツキはポツリと言った。

「不確定なものを信じたり願ったりするってのは人元を制御する情報の世界にとってはかなりの厄介事やっかいごとになるのかもな。ところがGmUのやつはその性質を逆に利用したって事か。」


 非天レイカは少し残念そうに言った。

ほとんどの宗教が消え去った今、GmUやつは多くの人間にとって神にも等しい存在だからな。まあGmUやつ自身は『神をも従える存在』等と言ってはいるが。」


 海野はゼウスの話を補足した。

「そう、意思決定をすべてGmUに頼りきれば自分の『人元』が必要無くなって来る。その人間の『人元』は所謂現世いわゆるうつしよに干渉する機会が極端に減少し存在意義が崩壊する。挙句あげく、局所的な機能不全におちいるってわけだ。」


 副担任のみかどソヨギは話を継いだ。

「そう。で、それを幾度となく繰り返せば高次元への干渉が封じられている私たちの人元は別の行き場所、役割を求める様になります。それを『GmUの元』は手薬煉てぐすね引いて待っているってわけ。つまり、結果的にこれまたGmUの餌食えじきとなる。まあ、ゼウスさんの話をまとめるとですが。」


 北守カズミは気持ち悪そうに言った。

「地球単位で人間を丸呑まるのみかよ……おぞましいな。」


 鳥山イツキも胸糞むなくそ悪いと言った顔付だ。

「何だそりゃ……。けどさ、悪を打とうとしていたご立派な研究者が二人もGmUと融合してるんだろう。何でこんな事になった?」


 ゼウスは腕を組みながら目をつむった。

「多分二人は今現在……ガイアとウラノスに取り込まれてる状態だと思う。みずかららね。ま、ある意味暴走を容認したって事になるかな。」


 歌寺ミナモは金切り声をあげた。

「あんた、そんな悠長ゆうちょうな事言って余裕あるみたいだけど勝算でもあるっての!?」


 ゼウスは平然と言ってのけた。

「いや、現状では100パー勝てん。」


 歌寺ミナモはいきり立った。

「何ですって!? 元はと言えばあんたらが作ったマシンでしょう! 何とかしなさいよ!」


 ゼウスはそっぽを向いてかすれた口笛を吹いた。

 鳥山イツキは半笑いで仲裁ちゅうさいに入った。

「まあ待てミナモ。ゼウス氏、現状ではってのはどうゆう意味だ?」


 それには海野が代わりに答えた。

「つまり現状を打破しなきゃ勝てないって事さ。今日皆に話したかったのはその事なんだ。みんな、あれ程の力を持ってるGmUやつが何故20年もの歳月をかけなければならなかったか分かるか?」


 非天レイカは即答した。

「他世界があると仮定して……この世界だけが急激に変化すると他との連続性が保てなくなる。つまりこの世界が消滅してしまう。その事を恐れているからでは?」


 海野はニヤリとして頷いた。

「ふふ、その通りだ。だがやつら、ここ以外の地球での変革は箱モノの改築込みで3年あればやって退けるらしいぞ。とは言え非天の考え方は大方おおかた正しい。実はな、これにはもう一つ大きな理由がある。それは……我々が住んでいる”この地球”が特別な場所だって事に起因するんだ。」

読んでいただきありがとうございます


来週は多忙の為お休みです

次の更新は1月7日を予定しています


良いお年をお迎えください



【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒。

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き。

 香々かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席。

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル。

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位。

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女。

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪。

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持。

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