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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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192 踊るおっさん【他世界の話】

 苦虫にがむしつぶした様な表情をした担任、海野ランの背後で何やらあやなパントマイムらしきものを披露する男、ゼウス。


 副担任のみかどソヨギは引きった笑顔で話を進めた。

「ええ、実はこのゼウスさんなんですけど、GmUゲームの一部分になっております……。」


「何と!?」

 Z組の生徒全員があせった。


 北守カズミはモニターに向かって叫んだ。

「うお~い! それってダメなヤツじゃん! ダメなやつじゃ~ん!!」


 ゼウスは気軽な感じで答えた。

「あ、大丈夫。心配ないっす。私ねエ、GmUと戦ってたんだけど負けちゃいましてね。そんで今はGmUの内部に避難してるって感じなんですよぉ。灯台もと暗しってやつですね。まだバレてません。あっはっはっは!」


 北守カズミは半笑いでつぶやいた。

「大丈夫なのか? てか、気軽る過ぎだろ……。」


 コロコロと笑っている鳥山イツキに引っ張られて蛇代ヨウコもクスクス笑い出した。

「おっちゃんゲーム出来る?」


 ゼウスは腕を組み自慢げに言った。

「ゲームですか、そうですね……一言ひとことで言わせてもらえばサ・イ・キョ・ウです!」


 蛇代ヨウコは両手を上げて喜んだ。

「イエ~イ! 今度私とゲームしよう!」


 歌寺ミナモは緊張しているのが馬鹿らしくなった。

「ちょっと、そんな事を話す為に来たんじゃないんでしょう。早いところ用件を言ってよね。久しぶりの休みだってのに、まったくもう……。」


 非天レイカは確認した。

「つまり、ここの会話はGmUに聞かれないって事でいいの?」


 海野は頷いた。

「ああ、このゼウスさんの力だ。この状況下ならGmUをぶっ潰す計画がいくらでもられるってわけ。」


 北守カズミはまだ疑っている様だ。

「本当に? 相手はあのGmUだぞ。」


 海野はにこやかに頷いた。

「まあ、お前が疑うのは真っ当な反応だ。だが、今までだって結構守られてたんだぜ、お前ら。」


 非天レイカは質問した。

「今までも……。成程、通常ならお小言が入るはずの言動に全く反応しなかったのはそう言う訳か。」


 海野はその質問に答えた。

「ああ、非天。お前試してただろう。ちなみにあれ全部アウトだからな。そう言った都合の悪い情報は全てこのゼウスさんが削除してくれていたってわけだ。だから、私の言葉が汚くてもおとがめなしって事! だいたいさ、非天さ、お前あれだけの事やらかしといてGmUが監視してないわけないだろう。」


 帝は不満気ふまんげに海野の方を見た。

「ちょっとあなた、言葉遣ことばづかいはちゃんとしなさいよ。仮にも教師なんだから!」


 北守カズミも不満気な顔をした。

「いや、そんじゃああのマズ飯は?」


 海野は笑いながら答えた。

「ああ、あれは私が与えた罰だ。遅刻はいかんよ、遅刻は。はっはっは。」


 北守カズミは舌打ちをした。

「ちっ、そう言う事か……。」


 海野は話を再開した。

「先に言っておこう。GmUは年内に新たな改革案を打ち出す予定だ。ゼウスさんにれば来年あたりから徐々に文化的活動を禁止にして行くらしい。文化的活動ってのはまあ、芸術とか音楽、スポーツ、それとゲームなんかも含まれる。」


 真っ先に反応したのはアイドル歌手兼芸術家の歌寺ミナモだ。

「何ですって!? そんな……GmUってそうゆうのに寛容かんようだったんじゃないの?」


 非天レイカは「やはりな」とつぶやいた。

GmUゲームは当初から計画していたんだろう。GmUやつは事あるごとに文化や芸術が『暴力を始めとする物理的な力による解決』を賛美し肯定しあおり立てる道具として大いに利用されて来たと主張している。」


 プロゲーマーの蛇代ヨウコが落胆らくたんした表情をしてぼやいた。

「ゲームも? うえェ、そんなぁ……。」


 北守カズミがトレーニングベンチから飛び退いてこぶしにぎった。

「ふざけんなよ……! GmUプログラムごときが……スポーツにまで口出しやがって!」


 海野ランは皆の様子を見ながら言った。

「まあ気持ちは分かるが話を進めるぞ。ゼウスさんの話では今まで途方もない数の世界で同じ様な事が……実験が繰り返されて来たらしい。そしてその末路まつろは人類の消滅だ。」

 当のゼウスは海野の後ろで酔拳か蛇拳かよく分からない動きをしていた。


 帝ソヨギは苦笑いをしながら言った。

「まあ、ゼウスさんはいつもこんな調子なので私たちが長い間苦労して聞き出した情報をまとめてみんなに伝えています。」


 海野ランは非天レイカに質問した。

「非天、お前そもそもGmUって何だと思う?」


 非天レイカは自分が今までの研究から予測したGmU像を述べた。

「恐らくパラレルワールドの地球で作られたプログラム。但し本体はこっちに来れないから『情報』のトンネル効果を利用してこっちにチョッカイ掛けてるんじゃないかと。」


 海野ランは「ほうほう」と頷いた。

「情報のトンネル効果ってのは何だ?」


 非天レイカは皆に伝わる様に考えをまとめながら話を続けた。

「『情報』ってのはあらゆる物質や現象の中に宿るものとします。これらの『情報』は波形や幾何学的な形としても表現されます。であれば次元の壁自体にも影響を及ぼす事が出来るんじゃないかと……まあ、推測でしかありませんが。で、そのトンネル効果ってのは一定条件下で『情報』の量子的振る舞いにより次元の障壁を突き破る現象を指しています。」


 海野ランは「成程」と言ってから質問した。

「その『情報』や『次元の障壁』ってやつの定義はまだまだ曖昧あいまいってわけだな。それと今言った一定条件下ってのは何だ?」


 非天レイカは少し唇を嚙み締めた。

「確かに『情報』の定義についてはその通り。残念ながらまだ曖昧と言わざるを得ません。ただその『情報』が『情報』たる所以ゆえんは人間にとって何らかの関りがあるものでなければないと言う事。そしてその条件ってのがまさしく人間の内部的な情報元とも言うべき『何か』を介して他世界への干渉を実現してるんじゃないかって事です。」


 海野ランは一つ頷いてから再び質問した。

「内部的な情報元ってのは?」


 非天レイカは「そうですね……」と言って少し考えてから話し出した。

「そもそも九次元などの高次元、つまり余剰次元ってのはまったく別の場所にあるわけではなく常にこの場に存在している。ただ我々の感知能力ではとらえきれないだけだと仮定します。すると逆にもしそれを感知出来るとしたならば我々人間は一体どんな感じに見えるんだろうか。捉えられるんだろうか。」


 その問いに北守カズミが答えた。

「そりゃあ、その次元の住人にでもならなきゃ分からんだろうよ。」


 非天レイカは軽く微笑むと例を挙げて説明した。

「分かり易くする為に時間軸を4つめの次元として考える。例えば1時間前の私と今の私。両方とも私であり、そこには方向によって違う表情を見せる『情報』のつながりのみが存在する。そしてこれら二つの私を一つに結びつける存在が『私の元』って事……。」


 海野ランは「う~ん」とうなった。

「成程ね。『情報』を自在に操って余剰次元的にとらえた人間の本質的な、つまり人間の元を通してこちらの世界に干渉してるって事か。ああ、分かるよ。まあそれが『情報』としか言いようがないのは仕方ないとして。いい線行ってるんじゃないか?」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… Z組を復活させた。大卒。

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き。

 香々かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席。

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル。

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位。

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女。

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪。

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持。

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