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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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189 Z組の生徒たち(2・3・4)【他世界の話】

 二度寝に入った香々美かがみフジコはさぼり魔だ。

 入学式の初日こそ定時に登校したが、次の日からは5分、1時間と遅刻して注意を受けた。

 彼女は下宿組であった為、自分で起きるしかないのだが入学して5日目以降は午後からの登校となっていた。

 

 香々美フジコはC組であった為、好きな授業を選択し、その分の単位さえ取ればよかった。

 だが、このままでは出席回数が足りなくなるのは明らかだった。

 そこで、相談した結果B組に移動する事になった。


 一月ひとつき後、週に一度のレポート提出がされていなかった事もあってサポートセンターが彼女を呼び出し問うたところ「ずっと部屋で寝てました」との事であった。


 学校側がどうやって対処すべきか考えあぐねていた頃、学年初の単位認定試験の時期がやって来た。

 教職員たちはその結果を待って彼女を指導する事にしたのだが……。

 結果はすべて満点。


 学校側は彼女の睡眠について専門家に尋ねてみたがケースがレア過ぎて原因は分からなかった。

 ただ、彼女の並外れた記憶力や思考力と何かしらの関係があるのではないかとの話であった。


 だが、遅刻した上に授業に出てもずっと寝ていた彼女がダントツのトップである事は周りの生徒に対してもよろしくないのでは……。

 周囲の考えがそうなるであろう事も彼女にしてみれば想定通りであった。


 学校側は彼女に理由を説明して再度話し合った。

 その結果、彼女の提案もありZ組に移動してもらう事となったのだ。



 先程まで雑誌を眺めながらくつろいでいた歌寺ミナモは外出用の服に着替えていた。

「ほんじゃ、行って来るわ。」


 非天レイカは「ああ」と言いながら軽く右手を上げた。

 電子基盤をパソコンにつなげていた鳥山イツキも「おう、頑張ってな」と笑顔で見送った。


 北守カズミはバーベルを下ろして言った。

「毎日大変だなあ。今日も仕事?」


 歌寺ミナモは知る人ぞ知るクリエーター系マルチタレントだ。

 モデルの様な容姿からは想像も出来ないほどの優れた芸術家で(こう言うと語弊ごへいがあるが)、あらゆるコンテストを総なめにする程の天才だ。


 彼女は絵画や彫刻、造形物等の美術作品のみならず文筆、書道、作詞、作曲等々幅広く手がけ、その才能を縦横無尽に開花させていた。

 最近では何故かアイドルとしてもデビューしてしまった為、通常の学校生活を送る事は困難となっていた。


 しかも、とんでもなく我儘わがままな一面があった為、周囲の生徒や教師までもが手を焼いていた。

 それらの事も相まってこのZ組に移動となったのだ。


 彼女いわく「あれは我儘じゃない。私の美的感覚がそう言わせてるのよ」だそうだ。

 当然、凡人にはその感覚が分かるはずもなく「学校生活の中でそんな事言われましても……」と言うのが周囲の本音であった。決して口には出さなかったが……。



「あ、そうだ。」

 教室から出ようとする歌寺ミナモに声を掛けたのは蛇代ヨウコであった。


 彼女は自分が座っている高価そうなゲーマーズチェアをぐるっと回転させながら言った。

「明日、土曜日。一緒だね。」


 歌寺ミナモがやれやれと言った感じでニヤけた。

「ああ、ゲームの大会ね。どうせまたあんたの優勝なんでしょ。もう目隠しでもしてやったらどう?」


 蛇代ヨウコは人差し指でほっぺたをきながら答えた。

「さすがにそれは失礼だよ。勝つ自信はあるけどさ。」

 歌寺ミナモは「勝つ自信あるんかい!」と突っ込みを入れると半笑いで教室を出て行った。


 この一見幼女にも見紛みまごう小柄な女生徒は蛇代ヨウコ。

 彼女はあらゆる対戦ゲームにいて向かうところ敵なしの天才プロゲーマーだ。


 この世界でもゲームは全世界に普及しており、ゲーム人口の百人に一人は『選民』等と呼ばれる強者たちだ。

 その強者の中でも群を抜いて秀逸しゅういつなゲームテクニックを持つ存在『廃人』。

 彼らはその腕前を動画サイトやSNSを通して披露していた。


 そして『廃人』と呼ばれる者たちの中には己の技量をって生業なりわいとする者たちもいた。

 人は彼らをプロゲーマーと呼んだ。

 最近ではプロゲーマーの数も激増し、多種多様なゲーム大会でその腕を競っていた。


 そんな群雄割拠ぐんゆうかっきょのプロゲーマー業界において巨大な新生が現れた。

 それが当時若干10歳の少女、蛇代ヨウコ(小学5年生)であった。


 彼女は超有名格闘ゲーム大会で日本代表に選出されると、世界大会でもあれよあれよと言う間に勝ち進み、遂には優勝してしまったのだ。

 初出場の小学生が全世界のトップに躍り出たと言うニュースはセンセーショナルに報じられた。


 身長125センチの小さな少女が初めてこの舞台に上がって来た時、腹を抱えて笑っていた連中はその圧倒的な強さに固唾かたずこうべを垂らすしかなかった。


 その後、彼女の人気は急上昇し、あちらこちらのメディアに引っ張りだことなった。

 つまり歌寺ミナモと同様、普通の学校生活を送る事が出来ない為にこのZ組に移動して来たのだ。


 勿論B組のままでも活動は可能であったが「ゲームって遊びだろう? 勉強じゃないじゃん」等と言った見方もあった為、彼女の希望もあり条件付きでの移動となった。


 その条件とは(これはZ組共通のものだが)無断で他生徒に接触しない事、全教科で平均以上の点数を取る事の二つであった。

 だがそれは学年3位の彼女にしてみれば造作ぞうさもない事だった。


 逆に言えばテストで平均点以上さえキープしていれば残りの時間は好きなだけゲームをしていられる。

 このZ組の環境は彼女にとって好都合なものでもあったのだ。


 ところで好都合と言うのは単にゲーマー生活を送りやすいと言う事だけではなかった。

 実はそこらのプロゲーマーよりここにいる連中の方が格段に上手うまかったのだ。


 非天レイカはパズル系、北守カズミは格ゲー、歌寺ミナモは音ゲー、鳥山イツキは戦略シミュレーション、香々美フジコに至ってはオールマイティ(但し、すぐに手が痛くなる)。


 恐らく彼女たちがそれに特化した訓練を行えばゲーム全般に手を出している蛇代ヨウコでは勝ち目がないだろう。


 それを知っていたからこそ彼女はみずからこのZ組に移動したのだ。

 Z組のクラスメイトはつまり、彼女にとって良きスパーリングの相手なのであった。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【研究員養成学校中等部 Z組】

<生徒>

 非天ひてんレイカ …… クラスで問題を起こしZ組へ。

 北守カズミ …… 格闘家。スポーツ好き。

 香々かがみフジコ …… 寝るの大好き。学年主席。

 歌寺ミナモ …… 芸術家。アイドル。

 蛇代へびしろヨウコ …… プロゲーマー。身長120㎝位。

 鳥山イツキ …… 工作大好き。職人気質の超美少女。

<教師>

 海野ラン …… 担任。青い瞳、ブロンドの髪。

 みかどソヨギ …… 副担任、教務主任。おかっぱ、眼鏡を所持。


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