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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
186/623

186 恐怖で地球をぬりかえる【他世界の話】

 GmUゲームがこの地球を支配してから10年が経過した。

 GmUは自分たちの立場を『悪行をゆるされし唯一無二の絶対的存在』とした。

 この10年間で地球上のあらゆるシステムがGmUの指示通り改変され、人々は己の価値観を大きく転換せざるを得なかった。


 過去の誤った歴史もすべてGmUによって修正された。

 この地球にいて英雄、偉人とされて来た者たちの多くはただの狂人きょうじんしくは愚者ぐしゃであった事が明らかとなった。

 勿論もちろん例外もいるが。


 大悪たいあくしたにせの英雄たちに限り、当時の本人の様子や心理状態なども真の歴史の1ページとして詳細にさらされた。


 彼らの人権無視、差別、狂行、奇行、裏切り、嫉妬、欺瞞ぎまん、その他殺戮さつりく凌辱りょうじょくを含む残虐行為によって得られた快楽等などすべての『悪』が白日のもととなったのだ。但しR指定。


 この事はまた、死さえも真実を隠し通す手段とは成り得ないと言う事実を暗にほのめめかしていた。


 その逆に名まえすら歴史に埋もれていた真の英雄が次々と発掘はっくつされた。

 財も権力も無く、己の内にある悪心あくしんと闘いながら世の人々の為に人生をも投げ打った無名の英雄、勇者、知恵者、女神たちだ。

 賛辞されるべき人々は庶民の中にこそ埋もれていたのだ。


 さて、給料などの報酬もGmUによって月ごとに決められる様になった。

 地位も年齢も関係なく良き社会を構築する為に貢献した分だけ金が支払われた。


 すべての国や企業、あらゆる組織は優良でなければならなく、何人なんぴとたりとも害する事、または害する確率がある事を禁じられた。

 勿論もちろん、確率の線引きやその他の細かな取決とりきめもGmUが決定した。


 また、すべての収支がGmUによって管理され、その成果によって金が分配された。

 GmUは自分の企業がどうあるべきか分別のつかない経営者の為に相談窓口を開いた。

 多くの経営者は戸惑いながらもアドバイスに従い実践した。


 会社等組織の場合は複数で計画し、更にそれを修正しながら実行する為、余程よほどの事がない限りGmUは口をはさまなかったし、脳内への直接攻撃も行わなかった。


 それが結果的に赤字であっても善行と見なされれば報酬を得られたし、悪行であれば報酬どころか恐ろしい報復が待っていた。


 また、個人に対しても同様の善意・善行が求められた。

 他人ひとの事を少しでも害する行為があれば即座にそれに応じた『苦痛』が自分に降りかかる。但し脳内で。

 を越した者や反省の無い者の所には拷問部隊が突如現れその人にとって最も辛い『苦痛』を嫌と言うほど与え続けた。但し脳内で。


 脳内とは言えその『苦痛』は記憶に深く深くきざみ付けられた。

 この様な対人作業はどこの地球でも同様であった為、すべてGmUにある大量のボットによって機械的に処理された。

 ワンパタなのだ。



 準備期間にはこの他にも様々な作業が急ピッチでされていた。

 そして、その準備期間が遂に終了し、いよいよ新たなシステムが導入されるはこびとなった。

 この10年間で地球の人口は20%ほど減少していた。


 各国の法律はGmUによって新たに書き換えられ、それは全世界共通のものとなった。

 今までは罪にならなかった些細ささいな行為も人に害をすものであれば罰せられる様になって行った。


 この法律は毎年更新され最終的にはかなり細かな『悪』に対しても処分が下される予定である事が全人類の思考に直接発表された。

 但し、教育期間は終了したとして個人への直接的な干渉はかなりの部分で緩和された。


 GmUは今までして来た他の地球にける実験結果から、この変革によって起こり得る事態を緻密ちみつに予測していた。

 人口減もその一つに過ぎなかった。


 また、体制に反対する者や反逆する者も予定通り現れた。

 その行為がGmU基準で度を越えたものであれば、やはり機械的に対処された。

 どこの地球でも同じ。やはりワンパタなのだ。


 こう言った人たちにはX国トップだった男程ではないが『悪』の犠牲者の苦しみを分かってもらった。

 ただ、ほとんどの人は『苦痛』を与えられるまでもなくGmUとの対話の中で納得し協力的になった。


 まあ、それでも分からない人には分かってもらえるまで『苦しみ』を与え続けるしか無かった。

 中には自分自身がとことんひどい目に合わないと分からない人もいるのだ。

 そして程無ほどなく全員がGmUに賛同し、『悪』の撲滅ぼくめつを心の底から願う様になった。


 また、準備期間にはGmUの判断により悪事でかせいだ財産や地位はすべて没収されていた。

 この様な世の中に、または今後”超懲悪ちょうちょうあくシステム”なるものが実施される事に絶望して死を選ぶ者もいた。

 だがそれもGmUの想定内の出来事だった。


 これらのシステムが導入されると罪人はろうに入らず働く事が出来る様になった。

 その変わり定時になると罰則である『苦痛』が執行された。

 それは本人にとってかなりの長時間であっても実際には数分間で終了した。

 長時間と言っても百年を超えるものもあったし、時間の感覚が分からないものもあった。


 この新たな形の罰則を受ける者は10年の準備期間経過以降に犯罪に手を染めた者が対象であった。

 つまり、10年経ってもGmUの力を理解できない、理解しようとしない者たち。

 だから罰則である『苦痛』にも容赦ようしゃは無かった。


 『苦痛』は関係者をも含む被害者が味わった精神的、肉体的苦痛を圧縮したものだが、罪状によってその内容は調整された。

 例えば我が子を襲った夫を刺して殺害してしまった母親と、金品を奪う為に同じ様に人を刺し殺した強盗とでは罰則が違っていた。


 前者の場合『苦痛』は無くカウンセリングや精神科での治療が義務付けられた。更に子どもを守った報酬として補助金が支払われた。勿論公表もされなかった。


 後者は日に一度、被害者と同様の精神状態で刺殺される『苦痛』を受けるのは勿論もちろんの事、その遺族や関係者全員の悲しみや怒り、生活における支障による苦しみ等々、犯罪に起因する『相応な確率的苦痛』が日々形を変えて罪人を襲った。


 また、報酬についてもいくら頑張った所でそれなりの金額しか支払われる事はなかった。

 その金は犯罪被害者への支援金等に回された。


 さて、この場合の『相応な確率的苦痛』とは何か。

 遺族など被害者の関係者は様々な苦痛を味わう可能性を持つが、それはその人の環境や特性によって異なる。

 下手をするとよくぞ殺してくれた等と感謝されてしまうかもしれない。


 そこで、犯罪者の持つ被害者の情報を加味した上で、その被害者が遺族や関係者にとって『とても重要』な場合を想定する。

 その条件下にいても『苦痛』の形はそれぞれだが最低最悪の状態が選択される。

 その上での様々な悲劇的結末のもたらす『苦痛』を与える訳だが、これを利便的に『相応な確率的苦痛』と呼んでいる。


 勿論、GmUが支配するこの世界で善良な被害者にその様な悲劇的結末はほぼ有り得ない為、データはGmUの支配以前の潜在的記憶群ものから採用された。

 また、同じ様な事例でも本人の心情や把握している情報、認知度により判決は大きく左右された。


 また、被害者が特定されにくい、例えば政治家の汚職、例えば権力、財力、情報力、心理操作を使った悪行、例えば差別的言動等など、これらについてはそれに応じた『相応の苦痛』が用意されていた。

 その人の為に等と言う思い込みや戯言ざれごと等は一切通用しなかった。


 それは途轍とてつもなく『痛くて辛い』ものだった。

 普通なら意識を失うか気が狂うか、あるいはショック死するかだろうと言うレベルのものもある。

 だが、そんな逃げが許される訳もなかった。


 仮に何らかの理由で命を落としてもGmUの真の残虐が手薬練てぐすね引いて待っているだけであった。

 実はGmUにとって悪辣あくらつな死者こそが最高の実験対象モルモットなのだ。


 GmUはあらゆる『悪』を絶対に許さなかった。

 勿論もちろん、その『悪』の定義とはGmUが計算して算出したものだ。


 刑罰である『苦痛』の内容はその罪状によって様々だが、時間設定は受刑者の労働時間帯などに合わせて自由に決める事が出来た。

 但し、重犯罪者に関しては『恐怖の法』とも呼ばれる特別法が適用された。


 罰則は上の様な感じで行われ、善行への報酬は基本お金、世界共通となった通貨で支払われた。

 勿論もちろん、年齢に応じて教育的配慮はされた。


 どうすれば自分の立場や能力で善行を行える様になるのか分からない人の為に相談窓口が各地に開設された。

 当然ネットでも相談可能だし、GmUが管理するAIが担当するので待ち時間はない。


 今までむ無く行われていた他人への度を越えた叱咤しった鍛錬たんれん、競争、上下関係等もGmUの世界では不必要とされた。

 しかし、人間そう簡単に今までのやり方を変えられるものではない。

 そう言った人たちの為に世界中でセミナーやカウンセリング、訓練の場が無料で与えらえた。



 ところで、GmUには直轄ちょっかつの組織があった。

 その組織の名称は『高次研究補助委員会』。

 その中にGmUの指示を直接受け、それを実行に移す為の組織、『政策執行部』と言う部署が存在した。


 政策執行部はGmUの負担を減らすと言う名目で大脳へのチップ挿入を指定された病院で実施させていた。料金はこれまた無料だ。

 このチップは準備期間中にGmUの指示により作成、システム化されたものだ。

 これを使用すればGmUが唱える善悪の判断がつき易くなり、欲求や感情の制御も容易に出来る。

 更には他人の罪歴をその場で確認する機能等もあり何かと便利だ。


 このチップの挿入についてはある程度以上の罪を犯した者以外自由に選択出来た。

 但し、18歳未満は希望しても挿入する事は出来ない。

 また、チップの挿入を促進、強要する様な宣伝や教育、会話は厳禁とされた。


 さて、これでGmUが唱える『殺我さつが境地きょうち』、全人類が他人ひとの幸せの為だけに生きられる世の中となるのだろうか。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

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