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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
181/624

181 爽やかな朝

  私がソファーに座り紅茶を飲みながら待機していると、サユリから連絡が入った。

「フィナ、今着いたよ。ファランクスの4人はもう先に行ったみたいね。」


 私は外部モニターをオンにして周囲を見渡すと金庫は既に開けられていた。

 そしてサユリの他に人がいないか確認してから聞いた。

「サユリさんだけですか?」

「ええ、話しても大丈夫よ。サナたちは隣の部屋で待機してるから。あと、蟹江さんたちは来賓の方を部屋に案内してからこっちに来ると思う。」


 私はサユリの話しを聞いて今日のイベントが無事開催される事を再確認出来た。

「サユリさん、今日は頑張りますのでよろしくお願いします!」


 サユリはいきなりの私の言葉に少し面食らった様だったが、ニッコリとした笑顔で言ってくれた。

「頑張って、期待してるわ! あなたなら大丈夫。まあ、少しくらい上手く行かなくてもこれは始まりに過ぎないんだから、これからずっと続くあなたのアイドル人生の、ね!」


 私はサユリの言葉にハッとさせられた。

 そうだ、これは始まりに過ぎない。

 だから失敗を恐れず思いっきりやろう!

「ありがとうございます。今の言葉、すごく心に伝わりました。」


 後ろのドアがソーっと開いたのが見えた。

 蟹江さんかな? 誰も見えない。

 サユリが「ん?」と言って後ろを振り向くとサナがそのドアから入って来た。

 背が低かった為机の陰に隠れてしまっていた様だ。


 サユリはサナに聞いた。

「あなたもフィナに会いに来たんでしょう? ほら、こっち来なさい。」


 サナは「うん!」と言って頷くとぱたぱたと近寄り、小声で私を激励してくれた。

「フィナ、今日は頑張ってね。応援してるから。」


 ああ、何て、何て可愛いの!

 私はこの二人が大好き。大好き過ぎる!

「サナちゃんありがとう! 私、今日はサナちゃんの為に全力で歌うよ!」

 サナはニッコリとした笑顔を見せてくれた。


 その様子を見ながらサユリは感慨深げに言った。

「あれから2か月か。フィナのお陰でここ最近、全然退屈しなかったわ。本当に色々あったけど、これからも楽しく行きましょう!」


 私たちは蟹江さんたちと合流し、昨日と同様にライブ会場へと向かった。

 今日もサナ友4人とユキナちゃんのお母さん、お兄さんが一緒だ。

 しかし……みんなめちゃくちゃ元気だな。

 ヨナちゃん、ミナちゃん、マナミちゃんのお母さん方も少し遅れて合流する予定だ。

 主婦はやる事多いし大変だね。


 会議場ビルから出た所で私はサナの頭上から周囲をうかがった。

 その時目に入った光景は……。

 な、何じゃあ、この人の数は!!


 昨日もかなりの人数だったけど……。

 こりゃあ前日の2倍じゃあ済みませんよ!

 まあ、昨日は金曜日だったし今日は土曜日だってのもあるけど……にしてもねえ。


 昨日の事もあってか警備員の数が増えている様だ。

 何処どこかに私服警官もまぎれてるんだよね。

 確かサイバー警察の和田さんがそんな事言ってた。


 小さな女の子が5人いたからだろうか。

 通行人が私たちを上手く避けてくれた為、意外にすんなりとエントランスまで辿たどり着く事が出来た。

 やっぱりこの世界の人間ひとってラベルが違うのかな……。


 とは言え悪い人間がいるのも事実。

 やっぱニュースとか見てこの世界の事をもっと知っておいた方が良いのかもなあ。

 歌詞の内容も場合によってはセンシティブにもなるし……。


 ま、スキルを使えばかなりの情報が入って来るんだろうけど……その情報量に溺れちゃわないか心配……。

 メールボムじゃないけど、ある意味情報過多って怖いよね。


 蟹江さんたちは途中で知り合いに捕まり、私たちは先に場内に行きいた。

 ファランクスのマネージャー4人は昨日サユリたちがいた3列目の中央辺りに座っていた。

 4人は私たちに気付くとこちらに振り返り手を振って迎えてくれた。


 ヨナが「お兄ちゃん!」と言って手を振ると柿月ユタカはニコりとしながら右掌を見せた。

 サナたちは昨日と同じ前から2列目の席に座り、サユリとユキナの母兄かぞくはその後ろ、ユタカたちの左側の座席に座った。


 私のボカロボも昨日同様最前列に設置された。

 隣にはファランクスのボカロボが既に置かれていた。

 昨日蟹江さんたちが用意してくれた充電器にサユリが接続してくれた。

 蟹江さん、サンキューです!


 カナデが着席し終えたサユリに言った。

「昨日はお疲れ。よく眠れた?」

「ええ、もう布団入った途端に眠っちゃった。」


 春日クルミが眼鏡の奥のまなこを大きく見開いた。

「あ、私も! ベッド入って気が付いたら朝だった。」


 カナデがクルミの方をニヤけながら見た。

「あんたはいつもそうでしょう?」


 クルミは不機嫌な顔をした。

「そうかなあ? あなた……私の事を子どもだって言いたいんでしょう!」


 3人が談笑しているとユキナママがにこやかな顔で言った。

「大丈夫よ。私なんて昨日帰ってからの記憶が何も無いんだから。」


 それってマズいヤツじゃ……。

 3人とも内心ではそう思ったが口には出せず苦笑いするしかなかった。

「お酒でも飲まれましたか?」

「う~ん、どうだったかしら……。」


 隣で聞いていたユキナの兄サダオがつぶやいた。

「冗談じゃないから困るんだな、これが……。」



 さて、同じ会場のずっと後方。

 最後列付近にライブには似付かわしくない黒いスーツで身を包んだ男が座っていた。

 やや長身でひょろっとしており銀の長髪が黒い帽子の下から流れ出ていた。

 青白い顔をしたこの男は冥土めいどセンケツ。

 ほんの昨日Dr.Gの指示を受けてこの会場に来る事になったのだ。


 結局、井戸の中から現れたDr.Gにからかわれた後、彼女いわびとしてこの仕事を依頼して来たのだ。

 仕事と言っても3Dボーカロイドの現状視察だけ。

 今日一日ライブを鑑賞すれば高額の報酬を支払うと言われ引き受ける事にしたのだ。


 彼はどちらにしろ今後の標的になるであろう3Dボカロ関連について情報を得たいと思っていた所だった。

 だからこの仕事はDr.Gの思惑通りだとしても好都合なのであった。


 前列付近に多くの関係者が集まっているらしいが彼がそこへ近づく事は無かった。

 行った所で誰が誰やら分からないし何よりこちらの顔を憶えられでもしたら今後の仕事に差しつかえるからだ。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー

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