18 さぁ、盛り上がろうぜ!
カラオケルームには歌用の大きなモニターとは別に、通信用の小さなモニターがある。
私はその小さなモニターを通して、みんなとコミュニケーションを取ることができる様になっている。
カラオケにはサナとサユリの他、サナの友だちのユキナ、ミナ、マナミ、ヨナが来ていた。そして、保護者としてユキナの母と兄のサダオも参加していた。
みんながカラオケルームに入り、落ち着いたところでサナは言った。
「それじゃあ、フィナと繋げるよ。えっと、これ押せばいいのかな。」
サナがリモコンの『外部送受信』にタッチするとモニタに私が映し出された。
「皆さん、こんにちは!」
私が挨拶すると、みんなが振り返った。
ミナは隣りのマナミと話し込んでいた様だが、いきなりサナの方を見て叫んだ。
「え? 今の……誰がしゃべったの!?」
サナは笑った。
「フィナだよ。フィナがしゃべったの。」
サユリはみんなに疑念を持たせない様、進行を急かした。
「ほらミナ、時間ないからどんどん歌おう。」
ミナは頷いた。
「うん。じゃあ最初はパラキューレの『ドキドキSP』からでいいかな。」
ミナは早速『演奏スタート』にタッチした。
初めはみんな私のことを不思議がっていたが、歌が始まるとノリノリで騒ぎ始めた。
「すごい!」
「うま~い!」
みんな大絶賛だ。
ユキナの母も驚いていた。
「最近のボーカロイドってすごいのね~。」
その言葉に反応してユキナの兄サダオは小さい声で言った。
「いや、これは……。」
どうやら私が普通とかけ離れている事に気付いてはいるが、言葉にできない様であった。
結局3時間ほど大盛り上がりで楽しんだ。
帰る間際も子どもたちは興奮冷めやらぬ様子だった。
普段あまり話さないらしいヨナも声がかれるほど歌ってくれた。
「フィナ、今日はありがとう! うちのアテナにも会って欲しいな。」
「うん、今度是非会わせて! 楽しみにしてるよ!」
ヨナは満足気な笑みを浮かべた。
一番はしゃいでいたミナはモニターに顔を近づけて私に小さく手を振った。
「また、絶対やろうね!」
私はどこかで聞いたことのあるアイドル口調で返事した。
「ほいさ! 待ってるぞ!」
マナミも名残惜しそうに言った。
「フィナ、また会おうね! 約束だよ!」
私はにこやかに手を振った。
「うん、また是非。今日はありがとうね!」
何とかみんなを満足させることができた様だ。
まあ、色々あったけど良しとしますか。
アイドルとしてこれからも頑張ろうぞ!




