表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
179/624

179 人間らしい生活

 私は席を立ち洗面台に向かった。

 実は先日、居間の一部をリフォームしてお風呂と洗面台を設置したのだ。

 トイレはどうしようかと迷ったが取りえず保留にしておいた。


 人間と同じ様な生活を送る為にはトイレという空間も大切だろうとは思う。

 だがそうなると当然、自身の身体から便が出る様にしなければならない……。

 うんこ……いやあ、さすがに抵抗あるよね。

 わざわざ出る様にするとかさあ……くさいし。

 ま、今は『アイドルはうんこしない説』に乗っかるとしますか。


 私は歯を磨きながらそんな事をぼーっと考えていた。

 そう言えばさっきの鏡、何だったんだろうな……。

「ん……。」


 私は何の気無しに洗面台からソファーの方を振り返った。

 すると、ほんの一瞬だが何もない空間にキラリと光が走った……様に思えた。

「何だ?」


 光が走った場所は先程鏡が出現した辺りだった。

「まだあんのかな?」

 私は歯ブラシを口にくわえたまま鏡のあった場所に近づいた。

 そこから色々角度を変えて見てみたが、結局何も確認する事は出来なかった。




「フウ、危なく見つかるところだった……。」

 ここは先程の鏡の中。

 薄暗いビルの廊下を高校生くらいの少女が中型犬の様な生き物と一緒にてくてくと歩いている。


 犬と言っても頭部が身体からだ全体の半分を占めている所謂いわゆる二頭身の犬だ。

 毛は白く目つきは悪い。

 犬は小さな4つ足をぱたぱたと足掻あがかせ丸太の様な身体を揺らせながら少女に付いて来ている。

「ほらな、やめとけって言っただろう。」


 少女は唇をとがらせた。

「バレなかったんだからいいでしょう。あんなに勘が鋭いなんて思わなかったのよ。」


 犬はやれやれと言った感じでク~ンと鳴いてからぶつくさと言った。

「この覗き趣味が。そんな事より……これでお前も俺たちのつらさが分かっただろう。次元を落として生活するってのはかなりしんどいんだ。」


 少女はニッコリと笑った。

「そんな事ないわよ。あんたらとは違って私は元々この3次元空間、4次元時空で生活してたんだから。むしなつかしいくらい。」


 犬はフンと鼻を鳴らしてから話を変えた。

「この試練、かなり難解だぞ。本当にあのメンバーで良かったのか?」


 少女は前方を向きながら言った。

「〇〇〇……いえ、ここではフィナ・エスカさんだったわね。そう、あれは彼女じゃないとダメなのよ。」


 犬はまだ納得していない様子だ。

「しかし、何とも頼りないではないか。うんこの事など考えおって。他の4人の方はまだマシかもしれんが……。こりゃあ他のメンバーも期待出来そうもないな。そもそも、こんな世界が何だと言うのだ? 放って置けばよかろう。」


 少女は微笑んだ。

「まあ、あんたにとっては取るに足らない世界でしょうが、私たちにとっては故郷みたいなもんだからね。消滅させるわけにはいかないのよ。」


 少女と犬は目的の場所に行き着いた。

 少女が金属製のドアを押し開けると、そこは古ぼけたビルの一室とは思えないほどの立派なリビングになっていた。


 少女はソファーに座りポーチからスマホの様なものを取り出した。

 そして、くつろいだ姿勢になるとそのスマホで何者かに電話をかけた。

「ご無沙汰ぶさた~。元気でやっとるかね? ……ええ、5人への関連付けは今さっき終わったわよ。そっちの方はどう?」


 犬は少女のかたわらで待機しながら目を細めて前方をながめていた。

 すると小学生くらいの小太りの少年が向かい側のソファーに忽然こつぜんと現れた。

「どう、と申しましてもねえ。もうとっくに準備出来てるんですけどねえ。」


 少女はいたずらっぽい目をしてニヤけた。

「あんた、また太ったんじゃない? ゲームばっかりしてるから。」


 少年は眼鏡をキラリと光らせた。

「セクハラですよ。あなたの様な人にはキッパリ言っておかなくてはね。それと、ゲームを馬鹿にしないでください。中には身体を動かしてカロリー減らすやつもあるし、下手へたすると筋肉まで付いちゃうんですから!」


 犬は熱弁する少年に嫌味を言った。

「ならば、下手へたの一つでも打ってもらいたいものだな。脂肪ばかり付けおって。」


 少年はムッとした表情で犬を見た。

「父上は何も分かっていらっしゃらない様ですね。だいたいあなた方に無理やり押し付けられた仕事をこなすのに手一杯でゲームどころじゃありませんでしたし。しかもですね、あれだけダメ出ししておいて……。」


 少年はこちらの世界に来てからと言うものすっかりヲタ文化のとりことなってしまっていた。

 初めは「アニメ? ゲーム? ぷぷぷっ、低レベル」等と馬鹿にしていたが、いつの間にか本人も驚く程のめり込んでいたのだ。


 少女は半笑いで少年の話しをさえぎった。

「分かった分かった。けど、あんたも結構楽しんでたんでしょう。どう? ゲームの作成者側になった気分は。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ