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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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177 鏡の中から

 アテナは鏡をにらみながら言った。

「別の場所に通じてるって事?」


  ニーケは小石をてのひらに呼び出し、鏡に向かってそれを投げ入れた。

 小石は部屋のどこにも転がる事無くスッと消えてしまった。

「どこにつながってんのかしら。」


 ニーケは鏡をのぞき込むように凝視ぎょうしした。

「それにしてもこれ……何か私たちのもやもやに関係している様な気がするのよね。」

 ミネルヴァは二度大きく頷き、その意見に賛同した。


 メーティスは自分の見解を述べた。

「けど、用心しなくちゃ。これはフィナの完璧なバリアーをも通過して来たって事になるんだから。」


 私はそう言われて気が付いた。

「あ、そうか……。そう言う事か! う~ん、敵意がなかったからかな……?」


 アテナは意を決して提案した。

「入ってみる?」


 メーティスは不安気ふあんげな顔をしてアテナを見た。

「でもアテナ、何かあったら明日に支障が出るんじゃないか?」


 皆がどうしたものかと考えていると、先程ニーケが投げ込んだ小石が鏡の下の方からコロコロと転がり出て来た。

 アテナは何事かとその小石を拾い上げた。

「ん?何か糸みたいなものが縛り付けてある。」


 よく見ると糸の先端は鏡の中へと繋がっていた。

 アテナは恐る恐るその糸を手繰たぐり寄せた。

 するとその糸の先には封筒らしき物体がくくりつけられていた。

 そのクリーム色の封筒には少々大きめのハートマークの封が貼られていた。


 アテナは皆の顔を一通り見回した後、その封筒をゆっくりと開封した。

 私たちは固唾かたずんでその内容に注目した。

 封筒の中には薄い桜色の和紙が折りたたまれて入っていた。


「これ、手紙よね。やっぱり」

 そう言うとアテナはその折りたたまれた紙を開いた。

「ん? 何か書いてある。」


 ミネルヴァが興味津々な顔で催促さいそくした。

「ねえ、なんて書いてあんの? 読んで読んで!」


 アテナは「わかった」と返事をするとその手紙を読み出した。

「前略。只今調整中です。入るなら来週以降でお願いします。追伸……。」


 私は突っ込んだ。

「……て、もう追伸かい!」


 アテナは私の渾身こんしんの突っ込みをスルーして追伸を読み上げた。

「やはり気付かれてしまった様ですね。記憶データを元に戻します。但し、他の人に言わないのが吉です。これは良かれと思ってやった事ですので悪しからず。後、現段階では彼らの正体について知る事は出来ないでしょう。明日のイベント頑張ってください。」


 私は性懲しょうこりもなく突っ込んだ。

「追伸なが! 本文より追伸の方が長いって何なのよ! てか誰!? あんた誰よ!?」


 メーティスは私の肩をポンと叩くとアテナに言った。

「それだけ? 差出人の名前は無いの?」


 またもスルーされてしまった我が渾身の突っ込み。

 ミネルヴァは悲しい笑顔で私の腰のあたりをポンポンと叩いてくれた。

 元気付けてくれたんだね……。痛いよ、その優しさ……。


 ミネルヴァが「あっ」とつぶやいて鏡の方を指さした。

「鏡が薄くなって行く。」

 皆が見つめる中、鏡はフッと消えてしまった。


 アテナは鏡のあった場所でてのひらを左右に振ってみたが何も起こらなかった。

「まあ、手紙の内容から察するに、また出現するんじゃないかしら。」


 ニーケは何かに気が付いた様な表情を浮かべた。

「そうですわ。私、敵の事を調べようとしてたんでした。私では不明確な結果しか得られなくてもフィナさんなら出来るんじゃないかって……。」


 速攻気を取り直した私もニーケの一言で思い出した。

「そうそう、私も敵の事調べなくていいのかなって考えてたらその途中で思考が……。何か神懸かみがかり的な強い力に何一つ抵抗できず……記憶ごと消されてしまった。」


 メーティスは難しい顔をした。

「ニーケだけではなくフィナの思考までもコントロールするなんて……! もし、敵だとしたらかなり厄介だな……。」


 アテナはその意見に頷いた。

「そうね……。こんな事言ったら不謹慎ふきんしんかもしれないけど緑と赤がかわいく見えて来るわ。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー

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