176 鏡よ、鏡
食事も終わり、私たちは紅茶を飲みながら寛いでいた。
メーティスは満足そうに天井を見ながら言った。
「それにしても、きょうのライブはどれも素晴らしかったなあ。」
ミネルヴァは楽しそうに踊りながら言った。
「うん、猫山チエリちゃんの歌、私も歌いたい!」
アテナは紅茶を一口飲むと言った。
「そうね。でも、最後のあれにはびっくりしたわ。明日のイベントが中止にならなくて良かったけど。」
ニーケは「そう言えば……」と言って私の方を見た。
「何か会議の最後の方、違和感の様な……何か大事な事を忘れている様な感じがしたんだけど……何だったのかしら。」
私はその言葉に何かを思い出しそうになった。
「あ、そうだ。私も何か……。」
私は、今日の会話の内容を自分なりに纏めてみた。
「先ずテレビ会議出来る様にして、知らない人同士が自己紹介した後今までの経緯から敵……ミュラノスの話しになったのよね。で、情報提供者の話し……。」
アテナが頷きながら話しを継いだ。
「そう、情報提供者が誰かって話しをして、その正体が敵に判明するのを防ぐ為にはどうすれば良いかって話しになった。」
メーティスは情報提供者の正体を知っているらしいミネルヴァを見て苦笑いした。
「言わないでよ。」
ミネルヴァは少し真面目な顔をした。
「言わないよ。大丈夫。」
ニーケは何かを思い出そうとしていた。
「その後、緑と赤が関係してるかどうかって話しになりましたよね。それで、その辺りから……何か……。」
その時、ミネルヴァが突然叫んだ。
「何か変!」
ミネルヴァとニーケは周囲をきょろきょろと見回した。
アテナとメーティスは気が付いていない様子だったが私も何かを感じた。
「思考を邪魔されてる?」
私はスキルを使おうと思ったがバリアーに不具合が生じるといけないので止めた。
ミネルヴァはソファーから立ち上がり部屋の中を歩き回った。
そして、暫くするとソファーの後ろ辺りに何かを見つけた様だ。
「あ、ここ……。みんな、ちょっとここに来て。」
私たちは半信半疑でミネルヴァの立っている場所に近づいた。
「何かあるの?」
するとそこには身の丈ほどの鏡面が見え隠れしていた。
その鏡は少しでも見る角度が違うと見えなくなってしまう様だ。
アテナは目をパチクリさせながら言った。
「ミーネ、あんたよくこんなの見つけたわね……。で、何なの、これ?」
ミネルヴァがその鏡にそっと手を触れると指先が表面を貫通した。
「危ない!」
背後にいたメーティスが慌ててミネルヴァを引き寄せた。
「ミーネ、大丈夫?」
ニーケが心配そうにミネルヴァの指先を確認した。
「私の方からはミーネの指先が消えて見えたんだけど……大丈夫みたいね。」
ミネルヴァは少々驚いていたが、手首を振って見せた。
「うん、大丈夫。何も感じなかった……あ、けど中は少しヒンヤリしてたよ。」
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所
小橋レイナ … 社長、代表取締役
黒木ナナ … 副社長。1児の母
【警視庁サイバーポリス】
早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長
和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー




