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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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175 ま、美味しいものでも

 私はファランクスの4人と食事をしながら話しをしていた。

 4人に振舞った料理にはちょっと自信がある。

 何を隠そう食いしん坊の私は一月程前からほぼ毎日、料理の研究をしていたのだ。


 嬉しい事に食べ物に関する前世の記憶ははっきりと残っていた。

 私が美味しいと感じたものは彼女たちにとっても美味しいものであると言う事は、先日ケーキを振舞った時の反応から既に立証済みだ。

 ただあのケーキ、ミネルヴァだけは山本春子に横取りされて食べられなかったんだけどね。


 ちなみにここは私のボカロボの中だが、ピーチ(ボカロボのナビゲーター)に言ってみたら事も無げにこの場を私の家と化してくれた。

 但し、機能はある程度制限されるみたい。


 今夜の献立はハンバーグ、カニのグラタン、エビ入りクリームコロッケ。

 後は野菜の煮物とご飯!


 ちょっと量が多過ぎたかと思いきや、4人とも美味しそうに全部平らげてしまった。

 特にメーティスは「うまい、うまいぞ!」等と言いながら涙を流して食べてくれた。

 うむ、くるしゅうないぞ。もっとたてまつるがよい!


 アテナは不思議そうに言った。

「フィナ、あなたの前世じゃあこんな美味うまいものを朝な夕なに食べていたの?」


 私は少し自慢気じまんげに言った。

「う~ん、そうねえ。料理の腕もあるけどね。食べようと思えばいつでも食べられるよ、毎日でも……。」


 メーティスは私の一言に目をいた。

「何! ま、毎日だと~!?」


 ミネルヴァは少し遅れて今しがた食べ終わった。

「こんな美味しいもの毎日食べてたら太っちゃう! だっていくらでも食べられちゃうもん!」


 ニーケは食後の紅茶を入れてくれた。

「ふふ。そうよね。でもミーネはちょっとせ過ぎだからもっと食べた方がいいんじゃない?」


 私たちは歌い手としてなるべく人間の生活に準じた状態を保っていた。

 食事や運動の量や内容によって姿も変化するし、歯を磨かなければ虫歯にもなる。

 勿論、一瞬でリセットも出来るがそれでは人間の生活から逸脱いつだつしてしまう。


 メーティスは私に質問した。

「私もたまに食事を作るが一体どうやったらこんな味になるんだ? しかもこのコロッケ? 周りのサクサクしたものに包まれた白いクリーム状のトロっとしたあれは一体……。」


 ニーケはハンバーグがお気に召したらしい。

「あのハンバーグって言うのはお肉を細かく刻んで何か色々と混ぜ込んでから焼いたのかしら?」


 ミネルヴァはグラタンがお気に入りの様だ。

「グラタンも美味しかった! コロッケの中身とちょっと似てた!」


 私は冗談めかして言った。

「他にも色んな料理があるから今度作り方教えてあげるよ。ま、食べ過ぎて太っても責任取らないけどね~。」


 3人が笑う中、メーティスだけが真剣な顔で私に懇願した。

「是非ともお願いする! で、いつだ? 明日か?」


 私はちょっと引きながらメーティスをなだめた。

「そ、そうね。いつでもいいよ。」

 メーティスは「オッケー」と言って嬉しそうに頷いた。


「そうそう、私がいた前世では食後のデザートってのがあってね……。」

 そう言いながら私は立ち上がり、冷蔵庫の中からケーキを取り出した。


 ミネルヴァの顔がパッと明るくなった。

「あ! ケーキだ!」

 私はケーキをみんなの所に運んだ。


 メーティスも「おお!」と言いながら机の上に置かれたケーキをまじまじと見つめた。

 ん? 何やらミネルヴァが怪訝けげんな顔をして周りをきょろきょろしている。

「あいつは?」


 ああ、山本春子を警戒していたのか。わかるわかる。

「大丈夫、山本は隣のレッスン部屋で氷漬けになってるから。」

 ま、事が済んだら山本にもケーキの一つくらい作ってやるかね。


 今回は少し小さめのケーキを3種類。

 直方体のものはチョコレートケーキ、円筒形のものはホイップクリームと果物のケーキ、カップに入ったものはカスタードプリンとゼリー等を層にしたケーキだ。

 チーズケーキ等、他にも試したかったが次のお楽しみって事にした。


 4人は初めてのデザートに舌鼓したつづみを打った。

 人の幸せそうな顔を見ると私も嬉しくなってしまう。


 正直、前世ではケーキ等作った事が無かった。

 ところがレシピ通りに作ってみたら、これが何と絶品ではないか!

 料理にしてもほとんど作った事は無かったが思いの他上手く出来た。

 電脳世界だからなのか、私に才能があったからなのかは分からないが、これはとても幸福な事と言える。


 料理、万歳!

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー

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