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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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168 情報提供者の功績

 自然の成り行きで蛯名さんが話合いの進行役となった。

「一応盗聴器や盗撮器のたぐいはありませんでしたのでご安心ください。それでは先程の話しの続きとなりますが、蟹江さんよろしいですか。」


 蟹江さんは照れ臭そうに言った。

「あ、私? ええと、そうね。ずはサイバーポリスの方々にお礼を言わないと。早めに対処していただいて本当にありがとうございました。」


 蟹江さんがお辞儀をすると全員がそれにならった。

 早見さんは少し照れ笑いの表情を見せた。

「いえ、こちらこそ。ご協力に感謝しています。」


 蟹江さんは先程の話しを続けた。

「早見さん、きっと忙しいんだろうなあと思ったんですけど、連絡取らせてもらったのは今日の犯人が『黒バット』に関連してるんじゃないかって思ったからなんです。」


 早見さんと和田さんはうなずきながら聞いていた。

 蟹江さんは更に話しを続けた。

「となれば、もしかしたら、まあ黒バットとは関係ないとしても、犯行に一早く気付いて早見さんたちに通報したのは一体誰なんだろうなって。」


 小橋社長が横から口を挟んだ。

「そう! だって私たち全然気が付かなかったもの、そんな不審者がいたなんて。ねえ。」

 小橋社長に同意を求められた黒木さんはコクコクと素早くうなずいた。


 蟹江さんもその意見に同意した。

「そうなんです。どう考えても計画を事前に察知する事は困難、と言うよりは不可能なんじゃないかと……。関係者でもない限りは。」


 柿月ユタカが挙手しながら質問した。

「すみません、黒バットとはなんでしょう。」


 小橋社長はひざをポンと叩いた。

「そう、うっかり聞き流しちゃってたけど。何よそれ、黒バット?」

 ここで黒バットを知るものは蟹江さんと蛯名さん、それとサイバーポリスの早見さん、和田さんだけであった。


 蟹江さんはハッと気付いた様に小橋社長を見た。

「あ、そうよね。ごめんなさい。知ってるはずないものね。」


 蛯名さんは黒バットについて簡単に説明してくれた。

「正体はいまだ不明ですがアンチQCの団体らしいです。7、8年前からうちの会社も標的にされ始めたとの事ですが。」


 蟹江さんが補足した。

「そう、5年前に3Dボカロソフトを一般販売した頃が攻撃のピークだったと思う。で、そのあと警察に協力してもらったりセキュリティシステムの向上があったりで……。そうねえ、2年位前にはもう影をひそめてたかな。」


 蛯名さんは自分の頭を人差し指で軽くきながら言った。

「本来なら対応はうちの部署なんですが、私が第6の主任になった頃には既に沈静化ちんせいかしてまして……。」

 蛯名さんは3年前に入社してその1年後、蟹江さんの推薦で第6研究開発部の主任に抜擢ばってきされていた。


 小橋社長が恐る恐る聞いた。

「え? 何よ、怖いじゃない! 何? その黒バットが実際に侵入してたってわけ? サイバー攻撃が出来なくなったもんだから……?」


 星カナデと春日クルミも薄気味悪く感じた様だ。

「うわ~、ちょっと……怖くない? そんな人いたんだ。」

「うん、全然気付かなかった……。」


 サユリは蟹江さんに質問した。

「彼らが今まで人に直接危害を加えた事ってあるんですか?」


 蟹江さんは自分の見解を述べた。

「そうねぇ、今まででは聞いた事ないかな。第一、一切姿を見せないから。尻尾しっぽ捕まえても単なるバイトだったりで正体はまったく分からない。でもまあ、少なくともネット上ではかなり攻撃的だったのは事実。……早見さん、どうかしら?」


 早見さんは蟹江さんの問いを受けた。

「そうですね……ずは皆さん、貴重なお話しありがとうございます。いろいろと参考になりました。今の蟹江さんの質問にお答えする前に和田の方から一つ話しがあるそうなので聞いてください。」


 早見さんが和田さんの方を向いてうなずいた。

 和田さんは手にあるノートをめくりながら話し始めた。

「それでは、皆さんのお話を踏まえまして。先ずはこの話しから聞いていただきたいと思います。」


 皆は和田さんの方をジッと見つめた。

「皆さん、2年前の事件。企業4社を襲ったサイバー攻撃による恐喝きょうかつ事件、憶えておられるでしょうか。」


 皆がその言葉に頷いた。

 知らないのはニーケを除く私たちボカロ4人だけだった。

 この事件は当時のニュースでも大きく取り上げられていたが会社名は伏せられていた。


 和田さんは話しを進めた。

「実はその被害を受けた会社の中に株式会社猫キャットも含まれておりました。しかもどうやら一連の事件はこの猫キャットを狙ったものであるらしい事が後に判明したのです。」


 小橋社長は黒木さんの方を見た。

「え、あの猫ちゃんのとこでしょう? そんな大変な事があったんだ。」

 黒木さんは小橋社長の方を向いて頷きながらも和田さんの次の話しを待った。


 和田さんはノートをチラッと見てから話しを続けた。

「当時、私たちはこの様な事件が発生している事さえ認識出来ていませんでした。そんな中、ある情報提供者が私らの端末にメールで直接連絡して来たのです。しかも単なる通報だけではなく完璧なまでの証拠資料をも送付してくれました。」


 蟹江さんは思わず口を開いた。

「え、それってまさか……!」


 和田さんは蟹江さんの問いにコクリと頷いた。

「はい、そのまさかです。今回情報を提供してくれたのも実は彼らなのです。この情報提供者は『七天子しちてんし』と名乗り、今までも多くの事件を解決に導いてくれました。但し、最初の企業恐喝事件に関連するものに限定されますが……。」


 早見さんは和田さんの話しを補足した。

「とは言えこの事件、関係者の範囲がとても広かった。巨大な組織や企業、国家までもが複雑にんでまして……。」


 みんなの目が点になっていた。

 勿論、私の目も……。

 え、ちょっ、え? 何かやたら話し大きくなってない? いつの間に?

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

<本部>

金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染

 波岡ギンペイ … 営業部部長

  営業部社員 … 炭田ヒサエ、塩谷しおたにリュウイチ、海原セレン

 銅崎ササエ … 人事部部長

  人事部社員 … 白木ジン、水谷テナ

 鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当

  経理部社員 … 浪江なみえリョウ、加硫かりゅうナツエ


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹のヒマリと同居。バツ1


【株式会社コスパルエイド】大手IT企業。3Dボカロの親会社

 十勝ジュンイチロウ … 会長。代表取締役。蟹江さんの叔父。十勝エイトの祖父

 川上リョウ … 社長

 空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染



【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー


【ルンファー】

 南宮なんのみや大学「アイドル研究会」の女性ボーカロイドユニット

 研究会顧問は台場タエコ

 (株)ノアボカロシステム 芸能事務所に所属


 ユメ … マネージャーは月影ユメ。ナビは阿弓セレーネ

 アメ … マネージャーは火柱ひばしらアメ。ナビは囲井ヘスティア

 ミン … マネージャーは水野ロウ。ナビは魚住アンフィトリテ

 カヨ … マネージャーは木陰こかげカヨ。ナビは花城フローラ

 ミア … マネージャーは金城きんじょうミア。ナビは宇佐美アフロディーテ

 モモ … マネージャーは日土ひづちモモ。ナビは耕崎ガイア

 サン … マネージャーは日土ひづちミカン。ナビは天童エオス

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