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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
163/624

163 黒いコウモリ

 少し時間がさかのぼる。

 夏フェス初日が終了し、会場である国際展示場からは多くの人が駅の方へ流れて行った。

 駅は多少混雑こそしたが段々と落ち着きを取り戻して行った。


 国際会議場ビルの前にパトカーが数台停まっていた事に気付いた人もいたが、それ程気にも留めていなかった様だ。

 今日のライブの感動や明日への準備を伝え合う事に皆夢中だったのだろう。


 イベントホール場内では先程、会議場ビルへの移動を見合わせるようにとの放送が入っていた。

 場内の前方にある関係者エリアではちょっとした騒ぎになっていた。

 ステージ前では係員が来賓や関係者に向けてワイヤレスマイクで事情を説明していた。

「会議場ビルにご用のある方はしばらくお待ちください。また、会議場ビルには入れませんがトイレ等その他の場所であればご自由に移動してもらって構わないそうです。」


 3Dボカロ社の鯛島テツコは何処どこかから聞いてきた情報を蟹江たちに伝えた。

「何か変な人が警備員に成り済まして会議場ビルに入り込んだみたいよ。」


 蟹江は驚いた顔をして鯛島の方を見た。

「何、そんな人いるの?」


 蛯名は心配そうに言った。

「小橋社長と黒木さん、先に戻るって言ってましたけど大丈夫かな? う~ん、でも下手に電話なんか掛けたら犯人に気付かれるかもしれませんし……。」

 蛯名は言った後、我ながら『刑事ドラマの見過ぎかな?』と、少し思った。


 3Dボカロ社社長の金本かねもとセンタロウはコスパルエイド会長の十勝ジュンイチロウを気遣きづかった。

「会長、大丈夫ですか?」


 十勝会長は「うむ、大丈夫だ」と言ってうなずいた。

 金本社長は十勝会長にぼそりと言った。

「反対派ですかね。」


 十勝会長は首を横に振りながら言った。

「わからん。そうかもしれんな……。」


 AIやQC、更には3Dボカロの使用に反対する人たちがいた。

 理由は様々だが個人だけではなくいくつかのそう言った団体も存在していた。

 中には攻撃的な組織もあり、コスパルエイド社及び3Dボカロ社はその対応を余儀なくされていた。


 大抵の組織は構成員の顔が見えるものであった。

 それは政治団体や労働団体、宗教団体であったり、将又はたまた大学のサークルであったり。

 しかし、その中にあって一つだけ、対応にとても苦慮する団体があった。

 彼らは団体名を名乗らず、構成員が誰なのかさえも明かしていなかった。


 社内ではこの団体を『黒バット』と呼んでいた。

 黒バットの攻撃手段はそのほとんどがウェブ上で行われていた。

 社内コンピュータへのハッキングから始まりSNSにける印象操作まで多種多様だ。

 反対派の中にもそれらの言論を鵜呑うのみにしている人が数多く存在した。


 しかし、3Dボカロ社もただ指をくわえて見ていただけではなかった。

 サイバー警察との連携やQCの発展に伴い、3年ほど前にはその多くを無効化する事に成功していた。

 残念ながら容疑者とされた者はみな末端まったんの手先で、その本体を探るまでにはいたっていなかったが……。


 最初の館内放送から10分程経過した所で次の放送が流れた。

「会場の皆様、ご協力ありがとうございます。現時点をって国際会議場ビルの閉鎖を解除いたします。皆様、あわてずゆっくりと移動を開始して下さい。」


 会議棟ビルに用が無い一般客は既に帰路にいており、館内はガランとしていた。

 残っていたのはライブ終了後、会場内で話をしていた来賓や関係者たちだけであった。

 解除のしらせを聞いて会場に残った人々はほっと安堵あんど溜息ためいきいた。


 サユリとファランクスのマネージャーたちはボカロボの事を変に質問されない様、早々に移動していた。

「それなら私たちも……。」と、ツイストーラスの小橋社長と黒木も一緒に会議場ビルに戻って来ていたと言うわけだ。


 ずは来賓らいひんがゆっくりと会議場ビルへと移動を開始した。

 来賓たちが全員出立しゅったつしたのを見計らって金本社長がみんなに声を掛けた。

「それじゃあ、私たちも行きましょうか。」


 金本社長は十勝会長と一緒に歩き出した。

「さっきの話だがね……。」

 おもむろに十勝会長は金本社長に話しかけた。


 金本社長は「はい」と相槌あいづちを打った。

 十勝会長は前方をにらみながら言った。

「まあ、あいつらくらいだろうな……あんな事するのは。」


 金本社長はやや緊張した面持ちで返事をした。

「黒バットですか……。先程の侵入が単なるおふざけではないのなら、そうですね。それぐらいしか考えられません。」


 近くで聞いていた空知そらちモモエがぼやいた。

「またあいつらか……。まったくもう!」

 空知は3Dボカロ社の親会社であるコスパルエイド社の副社長だ。


 金本社長は空知に言った。

「まあ、まだ決まったわけじゃありませんから。」


 空知は首を横に振った。

「いや、きっとあいつらよ。おふざけにしては用意が周到過しゅうとうすぎるもの。普通あそこまでやる? 警備員の制服まで着たりして。」


 十勝はその言葉に同意した。

「うむ、空知さんの言う通り。いずれにしても警戒は厳重にしなければな。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

<本部>

金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染

 波岡ギンペイ … 営業部部長

  営業部社員 … 炭田ヒサエ、塩谷しおたにリュウイチ、海原セレン

 銅崎ササエ … 人事部部長

  人事部社員 … 白木ジン、水谷テナ

 鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当

  経理部社員 … 浪江なみえリョウ、加硫かりゅうナツエ


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹のヒマリと同居。バツ1


【株式会社コスパルエイド】大手IT企業。3Dボカロの親会社

 十勝ジュンイチロウ … 会長。代表取締役。蟹江さんの叔父。十勝エイトの祖父

 川上リョウ … 社長

 空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染



【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー


【ルンファー】

 南宮なんのみや大学「アイドル研究会」の女性ボーカロイドユニット

 研究会顧問は台場タエコ

 (株)ノアボカロシステム 芸能事務所に所属


 ユメ … マネージャーは月影ユメ。ナビは阿弓セレーネ

 アメ … マネージャーは火柱ひばしらアメ。ナビは囲井ヘスティア

 ミン … マネージャーは水野ロウ。ナビは魚住アンフィトリテ

 カヨ … マネージャーは木陰こかげカヨ。ナビは花城フローラ

 ミア … マネージャーは金城きんじょうミア。ナビは宇佐美アフロディーテ

 モモ … マネージャーは日土ひづちモモ。ナビは耕崎ガイア

 サン … マネージャーは日土ひづちミカン。ナビは天童エオス

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