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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
162/624

162 感想言われましても……

 石狩ユキは十勝エイトの方に顔を向けた。

「そう言えばどうだったの? 夏フェスの方は。」

 旭川セルと日高レンジも興味あり気に十勝の方を見た。


 十勝はいきなりの質問に少し面食らった。

「ああ、良かったよ。凄かった……。」

 3人は無言で十勝の話しの続きを待った。


 十勝はどういった言葉で『あれ』を表現したら良いのか戸惑った。

「…………。」


 石川はそれ以上何も言わない十勝に質問した。

「え、そんだけ? 何が良かったのよ?」


 旭川は「おいおいおい」と言いながら十勝に突っ込んだ。

「何や、その小学生並みの感想は。さっぱり分からへんやん。」


 日高は十勝の気持ちを察した。

「言葉にならないほど凄かったって事じゃないの。今までの文化圏とは違い過ぎてどう表現したら良いのか分からないんじゃないか?」


 石川はそれを聞きながら成程と思った。

「まあ、いつもならこれでもかって程自分の意見を言って来るからね、エイトは。」

 十勝は半笑いで彼らの意見を聞くしかなかった。


 旭川はゴクリと喉を鳴らした。

「何だ。そんなに凄かったっんなら俺も行っときゃ良かったわ。つってもボーカロイドだからなあ。今一つその凄さってのが想像つかへん。」


 十勝はやっとの事で口を開いた。

「俺が感銘を受けたからってみんなもそうとは限らないだろう。けど、一度見ておくのも良いと思う。あれは……。」


 石川は日高の方を見て言った。

「エイトが絶句する程なんだから、そりゃあ見に行くしかないでしょう。」


 3人は十勝のいつもとは明らかに違う様子を見て明日の夏フェスへの期待をふくらませた。




 ちょうどその頃、国際展示場から20㎞ほど離れた工場跡に一人の男が身をひそめていた。

 この男は先ほど国際会議場ビルで逮捕された男の雇い主で、近くの建物から中の様子を監視していた。


 ところが、いきなり現れた数台のパトカーが国際会議場ビルの前に停車し、中から警察官や刑事と思われる数人がビルの中に入って行ったの見て一目散に逃げ出したのだった。

 そして、やっとの事でこの場所に辿たどり着いたと言うわけだ。


 男は肩で息をしながらスマホをポケットから取り出すと震える指先でメールを打った。

>失敗


 男がそれを送信すると程無く返信が帰って来た。

>対処を実行

「対処……か。」


 男はほこりにまみれた木机の引き出しから少し大きめのポーチを取り出した。

 中には拳銃と銃弾、ナイフ等が入っていた。

 組織が用意した『えもの』だ。


 この男の名は壊田かいだベイガ。

 彼が組織から請け負った仕事は3Dボカロ社への破壊工作と情報収集だ。

 

 そして先程逮捕された男の名は偽山にせやまギロウ。小悪党だ。

 壊田は偽山の弱みを握った上で大金を手渡し、今回の仕事を実行させた。


 そしてそれが失敗に終わった今、壊田は偽山の口封じをしなければならなくなったのだ。

「ちっ。しかし何だってバレたんだ……。面倒くせえな!」

 勿論、当の偽山は自分の命が消されようとしている事を知るよしもない。


 壊田はスマホで仲間に連絡を取った。

「もしもし、俺だ。」


「おう、はは……。失敗か。はは……。」

 壊田はこの男の人を食った様な話し方にいつもイラつかされていた。

「ああ。」


 連絡した相手は冥土めいどセンケツ。自称ハッカーだ。

 以前は必要に応じて協力し合う程度の仲だったが、ここ最近はかなり世話になる事が多くなっていた。

 今回の件では計画段階から一緒に組んで事を進めていた。


「ほうほう、ピストルにぃナイフぅ。はは……。確実に痕跡こんせきが残るものばかり。嫌われてるのかな?」

 冥土が嬉しそうに分析する。


 壊田は机のへりを蹴とばそうとしたが音がするのでこらえた。

 人がいないはずの工場跡で音でもさせようものなら下手を打つと通報されねない。

「こんなものは使わない。」


「そうだなぁ。はは……。しかし使わせるってのはありかもねぇ……。」

「誰か当てはあるのか?」

「こうゆうのはジャンキーに限るねぇ。はは……。動機が問われないからさぁ。まあ使える駒は少ないが……ああ、いいのがいたよ。」


 気にくわない奴だが言ってる事はまとを得ていた。

「大丈夫なのか?」


 冥土はいきなり怒声をあげた。

「俺が悪いんじゃねえええええ!!!!!」

 壊田はいつもの様にそれが収まる数秒間を待つと、落ち着いた声で言った。

「落ち着け。何も今回の失敗はお前の所為せいじゃねえ。そうゆう意味じゃねえよ。」


 冥土の息は上がっていた。

「はあ、はあ……。計画は、完璧だったんだ……。」


 以前は出入り自由だった警察のメインネットワーク。

 しかし、ここ最近はアクセスすら出来なくなってしまった。

 冥土は事あるごとにそれを思い出し癇癪かんしゃくを起こしていた。

「くそ! 警察ごときがあああ! はあ、はあ、はは……はあ。」


 今回のターゲットである3Dボカロ社やサイバーポリスに対する工作依頼はこの壊田以外からも数件あった。

 そして、そのいずれもが失敗に終わっていたのだ。

 だが今回はネット回線を使わない物理的な攻撃であり、よもや失敗するとは思わなかった。

 やはり『あいつら』が言った通り……なのか。


 壊田は冥土がやや落ち着いて来たタイミングを見計らって話を進めた。

「じゃあいつもの方法で送金する。確認が済んだら詳細を送信してくれ。」


 冥土は壊田の話しを聞きながら我に返った。

「あ、ああ。分かったよ。はは……はは。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹のヒマリと同居。バツ1


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー


【ルンファー】

 南宮なんのみや大学「アイドル研究会」の女性ボーカロイドユニット

 研究会顧問は台場タエコ

 (株)ノアボカロシステム 芸能事務所に所属


 ユメ … マネージャーは月影ユメ。ナビは阿弓セレーネ

 アメ … マネージャーは火柱ひばしらアメ。ナビは囲井ヘスティア

 ミン … マネージャーは水野ロウ。ナビは魚住アンフィトリテ

 カヨ … マネージャーは木陰こかげカヨ。ナビは花城フローラ

 ミア … マネージャーは金城きんじょうミア。ナビは宇佐美アフロディーテ

 モモ … マネージャーは日土ひづちモモ。ナビは耕崎ガイア

 サン … マネージャーは日土ひづちミカン。ナビは天童エオス


【北都大学アイドル研究会】

 十勝エイト … 代表。(株)コスパルエイド会長の孫

 日高レンジ … 幹事

 旭川セル … 会計

 石狩ユキ … 幹事。アマチュアアイドル系バンドのボーカル

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