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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
160/624

160 悪魔の防壁

 Vアメ(火柱ひばしらのボカロ)のナビゲーターであるヘスティアがこぶしを震わせながら口を開いた。

「私が全力で放った渾身の『龍炎点爆りゅうえんてんばく』でさえ傷一つ付けられなかった……。」

 悔しがるヘスティアの髪の隙間から炎光がチラチラと逆巻くのが見て取れた。


 ヘスティアは少女の様な見かけにそぐわず途轍とてつもない戦闘力を持っていた。

 初めてこの『龍炎点爆りゅうえんてんばく』を使用した際は証拠もろとも全てが焼却しそうになり、残りの6人が慌てて火消しに回った程だ。

 だが、そのヘスティアのスキルすら全く通じなかったのだ。


 その言葉にミン(水野のボカロ)のナビであるアンフィトリテが補足した。

「あらゆる可能性を試行しましたがダメでしたね。確率が0や100等とはとても信じがたいんですが……。」

 いつもはニコやかなアンフィトリテも困惑した表情で首を横に振った。


 Vカヨ(木陰こかげのボカロ)のナビであるフローラは別の側面から観察していた。

「この防壁プログラムは作成者の姿が一切見えて来ません。人間の関与がまったく感じられない。つまり、研究開発部の主任ですら関与出来ていない可能性が高いと思われます。」

 いつも冷静で口数の少ないフローラも眉間みけんしわを寄せていた。


 ふくれっ面をしてぼやいているアフロディーテはVミア(金城きんじょうのボカロ)のナビだ。

「ホントにどうなってんのかな? 早くミアタンの事ルンファーに加入させてほしいのに!」

 栗色の長い髪を指に絡めながらいじけている姿はとても可愛らしい。


「あの防壁は無理ね。一切すきが無いんだもの。まさに悪魔の防壁……。」

 Vモモ(日土ひづちモモのボカロ)のナビ、ガイアは白くてつやのあるプルプルのほっぺたをプクっとふくらませた。


 褐色かっしょくの美女エオスは高次元侵入をも可能にするサン(日土ミカンのボカロ)の頼れるナビゲーターだ。

「次元も七を超えると計算に時間がかかり過ぎます。けど、あの防壁はそれよりも更に高い次元に君臨している。すでに私たちの限界を、いえ……常識を超えています。」


 火柱たちは目を丸くして驚いた。

「マジかよ……。何者だ? てか、そんなモノがこの世に存在するのか?」


 月影はせきを切った様に言い放った。

「でも、私たちなら……七天子なら何とか出来るよ!」


 セレーネは残念そうに月影を見つめた。

「はい。それは私たちも考えたんですが、各自ソレについては触れない方が良いとの結論にいたりました。」


「ちょっと、残念そうに私を見ないでよ……。」

「いえいえ、そう言う意味では……。」

 月影は愛想笑いするセレーネに確認した。

「それは七天子でも勝てないって事?」


 木陰こかげはその不可解なモノが何なのか気になった。

「ソレってセレーネたちと同じ様な存在なのかしら。平行世界から高次元を経てこの世界に干渉してるって言う……。」


 水野は以前セレーネたちから聞いた彼女たちの記憶について確認した。

「あなたたちは確か向こうの世界にいた頃の記憶を何者かに封じられているらしいって言ってたけど。それと何か関係あるのかな?」


 セレーネは申し訳なさそうに言った。

「わかりません。それと先ほど触れない方が良いと言ったのは恐らく七天子に変化へんげしても侵入できない。勝ち負けと言うよりは……これはもう完全に過去的な『結果』なのです。」


「な、なぬ?」

 月影の頭上に『???』が浮かんだ。


 セレーネは「あ……」と言いながら口元をてのひらおおった。

「ごめんなさい。つまり……侵入できないと言う結果は既に決まっていると言う事です。」


 火柱ひばしらが補足した。

「ああ、ほら、前にセレーネが言ってたじゃん。未来でもほぼ確定している情報は過去的ってさ。逆に過去に起こった事でも人間が認知できていない情報であればそれは未来的ってやつ。」


「はう……。」

 月影の頭上に再び『???』が浮かんだ。


 木陰は月影の『???』を無視して質問した。

「以前は侵入出来ていたんでしょう? その時はどんな感じだったの、研究開発部は。」


 セレーネは微笑びしょうを浮かべて言った。

「そうですね。研究開発部の主任さんたちは良い方ばかりでした。まあ、癖が強いのは仕方ないとして。あ、そうだ……。」


 そう言いながらセレーネは3Dボカロ社、研究開発部主任9人の顔写真をノートパソコンのモニターに映し出した。

「個人情報ですが事が事なので……。」


 月影はその写真を見て言った。

「あ、今日会場に来てた人たちだ。うん、この蟹江さんって人もいた!」


 火柱は大きくうなずいた。

「ああ、いたいた。ええと、この人……蛯名さんって言うんだ。めっちゃ奇麗だったから憶えてる。てか前日打ち合わせの時、前の方で二人とも仕切ってたし!」


 木陰は不安そうな顔をした。

「けど、いきなりこんな話持ち掛けるのも……ねえ。」


 台場はモニターの写真を見ると思い出した様に言った。

「ああ、この人たちか。なら私、ちょっとコネがあるかもしれない。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母


【警視庁サイバーポリス】

 早見ライザ … 特殊犯罪対策室の室長

 和田サトシ … 特殊犯罪対策室研究部のリーダー


【ルンファー】

 南宮なんのみや大学「アイドル研究会」の女性ボーカロイドユニット

 研究会顧問は台場タエコ

 (株)ノアボカロシステム 芸能事務所に所属


 ユメ … マネージャーは月影ユメ。ナビは阿弓セレーネ

 アメ … マネージャーは火柱ひばしらアメ。ナビは囲井ヘスティア

 ミン … マネージャーは水野ロウ。ナビは魚住アンフィトリテ

 カヨ … マネージャーは木陰こかげカヨ。ナビは花城フローラ

 ミア … マネージャーは金城きんじょうミア。ナビは宇佐美アフロディーテ

 モモ … マネージャーは日土ひづちモモ。ナビは耕崎ガイア

 サン … マネージャーは日土ひづちミカン。ナビは天童エオス

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