16 会社の人から連絡が来たんだが
サユリからの通信も途絶え、私は早速ステータスを見ることにした。
「よっしゃ、これで少しはまともになってんだろ。」
見てろよ山本! シシシ。
箪笥が変形したコックピットはそのままの状態にしてある。
私は椅子に飛び乗り、スキルを表示させるアイコンをクリックしようとした。
「上から2番目だったよね……ん?」
と、その時モニターの右上にメールらしきアイコンが点滅しているのに気が付いた。
「何だ? メールかな。」
私は恐る恐るそのアイコンをクリックしてみた。
すると、メール送受信用のフォームが開き文章が表示された。
メールは私に宛てられたものだった。
フィナ・エスカ様
この度は【Sクラス】へのご昇格、誠におめでとうございます。
さて、今回の件につきましてフィナ・エスカ様に大切なお話しがございます。
このメールを読みましたら、早急に連絡を取っていただけると助かります。
急な事で大変申し訳ありませんが、何卒ご容赦ください。
連絡方法;下のアイコンをクリックしていただけると通話ができます。
株式会社3Dボーカロイド
第1研究開発部 主任 蟹江ジュン
「これは連絡しなきゃダメなやつだよね……。」
なんかこうゆう緊張って久しぶり……前世ぶり。
私は躊躇なく下の連絡用アイコンをクリックした。
急いでるっぽいしね。
しばし呼び出し音が鳴った後、先方の声が聞こえてきた。
「はい株式会社3Dボーカロイド、第1研究開発部の蟹江です。」
はきはきした感じの話し方。
おお、いきなり主任の蟹江さんが出たよ!
「こんにちは。フィナ・エスカと申しますが……。」
「お待ちしてました。ただいま映像を贈りますね。」
すると、すぐさまモニターに蟹江さんらしい女性が映し出された。
「はじめまして。あなたがフィナさんですね。」
蟹江さんの属性は『眼鏡』、『白衣』、『優しそう』、『つぶらな瞳』、『中肉中背』、『少し早口』って感じの中年女性。
「ごめんなさいね、急に。なんか急がせちゃって。」
「いえ、こちらこそ遅くなってしまいまして。」
「ううん。そんなことない。じゃなくって、えっと……」
独特の喋り口。まぁ結構好きかも。
「そうそう、あなた。やっぱりすごいわね。いえ、話し方でわかる!」
本題に入った様だ。
「フィナさん今回【Sクラス】って事になってるけど、本当はもう、そんなもんじゃない!」
蟹江さんはいつもそうなのかもしれないが、興奮した様に早口で話している。
「どれくらいなんですか?」
「もうA! Aを超えてる! で、それなんだけど……。
蟹江さんは言い直してから告げた。
「その事なんだけど、お願いできるかしら。」
「え? 何をですか?」ホント独特だな~。
「内緒、秘密にしておいて欲しいのよ。」
「え、でもオーナーの2人はもう知ってますよ。」
「あ、え? スキルとかステータスとか、もう知っちゃってるの?」
「いえ、クラスがSってことだけですけど。」
「あぁ、それは構わない。構わないってことないけど、それもなるべく広げないで欲しいんだけど……。」
蟹江さんは少し考えてから言った。
「まぁ、あんまり大々的に7段階上がりましたよーとかは控えて欲しい。ま、ある程度は仕方ないんじゃない?」
「友だちとかには言っちゃっていいんですかね。」もう言ってるかもしれないけど……。
「サナちゃんね。え~と、今9歳か。大丈夫でしょ、周りも9歳なら。」
そして蟹江さんは矢継ぎ早に言った。
「お姉ちゃんの方は私から連絡しておくわ。えっと、サユリさんね。」
その時、蟹江さんの手前の方から呼びかける声が聞こえた。
蟹江さんはそちらの方に向かって返事をした。
「は~い、今行く~。」
そして、こちらを見直し両掌を合わせた。
「あ、ごめんね。何か急用入っちゃった。」
「いえ。ではまた……。」
言いかけたその時、蟹江さんが質問してきた。
「あなたもまだ見てないの? そのスキルとか……。」
「はい。見ようと思ったらメールに気が付きまして。」
「あ、先に連絡くれたんだ! 偉い! てか、助かりました。」
「いえ、こちらこそです。」
「で、多分見ても訳解んないと思うから、また聞いて下さい。」
「あ、わかりました。ありがとうございます。」
「じゃ、切りますね。ステータスの事はくれぐれもご内密に!」
すると、即座に通信は途絶えた。
何か、みんな個性強いな、この世界……。
その夜早速サユリからホットラインが来た。
「蟹江さんって人から連絡あったんだけど、聞いてる? ステータスの事。」
「ええ、聞きました聞きました。」
「私たちもしばらくはステータスの閲覧できないみたい。だからフィナも言わなくていいよ。」
どうやら、うまく伝わっている様だ。
「気にならないんですか?」
「うん。何か今の数字は暫定的なものだから、見てもあんまり意味がないって。」
「ああ、そうなんですか。」
意味ないって、私の数字どんな事になってんだろう……。




