表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
150/624

150 匿名制の使い道【現在】

 さて、私の充電も満タンになり、サユリはボカロボ(私)を頭の上に乗せると蟹江さんたちと共に会議室を後にした。

 そう言えばサユリの友だちって、もう帰っちゃったのかな?

 猫山チエリとのダンスバトルに夢中になっていた私はすっかりその事を忘れていた。


 ちょうど16時の休憩時間に差し掛かっていた。

 多くの人が駅の方へ向かっている。

 サユリは周りの様子を見ながら蟹江さんに言った。

「少し人が減って来たみたいですね。」


 蟹江さんは「そうねえ」と言いながら周囲を見渡した。

「うん、ちょっとはいて来たんじゃないかな。」


 蛯名さんは第2会場の方を見ながら言った。

「去年もこんな感じだったんじゃないですかね。ラストはコアなファン層が多いライブになってますから。」


 サユリはうなずいた。

「そうですね。田町ナイトに……ロストロン、米田コウジ。確かにコアっぽいですね。」

 サユリと私は夏コミに出演するボーカロイドを多少なりとも事前に調べていた。


 ロストロンは男性ボーカロイドならぬ自称ピエロイドのロスト配島と演奏ロボ3体によるコミックバンドだ。

 ライブはこの後第2会場で行われる。

 ロストは長身でひょろっとしており、顔にはメイクがほどこされている。

 彼は道化であり、芸人であり、ひょうきん者であり、悲哀を叫ぶいち弱者を体現していた。


 3体のロボは突っ込み担当のギター、ボケ担当のドラム、紅一点のキーボードから成り、随分と個性的な連中だ。

 そんな彼らの楽曲は一部の熱心なファンを中心に現在多くの人々に指示されている。


 第3会場の米田コウジはコテコテの演歌歌手で、中年層から高齢の人にも人気がある。

 高齢者にも受け入れられるボーカロイドは現在殆ほとんどおらず、彼はその先鋒せんぽうになう期待の新人だ。


 楽曲はやはり中年からご高齢が好む様な緩やかなテンポが多く、歌詞もそれらの人に好まれる様工夫されている。

 彼の単独ライブでは40年以上前の歌謡曲や演歌、時には童謡やアニメソングなんかも歌ったりしている。

 そんな時はみんなで大合唱する事もしばしばある様だ。楽しそう!


 そしてメイン会場の田町ナイト。

 芝橋高専の『夜のボカロ研究会』がプロデュースしており、現在のマネージャー担当者は藤堂とうどうフジヒコ、赤山ケン、佐竹マミコである。

 藤堂は芝橋高専の講師であり研究会の顧問だ。

 赤山と佐竹はここの学生であり、それぞれこの研究会のリーダーと経理を担当している。


 マネージャーの権利自体は『夜のボカロ研究会』名義、つまり芝橋高専が所有しており、そのマネージャー代行をマネージャー担当者と言う。

 つまりこの3人が実質的なマネージャーとなる。


 ちなみに佐竹マミコはチャンディの担当者である佐竹クミナと従姉妹いとこ同士だ。

 その縁もあり田町ナイトとチャンティは同じ株式会社猫キャットの芸能事務所に所属する運びとなったのだ。


 田町ナイトは中高生から30代の比較的若い世代から多くの指示を受けている。

 楽曲の最大の特徴として挙げられるのは作詞の一般募集による採用制だ。

 当初はマネージャー担当である3人が作詞していたが、田町ナイトの知名度が少しずつ上がって来た所で当初予定していた通り採用制を用いた。


 そして採用された歌詞にはQC由来のAIを用いた作曲プログラムを使って曲をつけ、最終的に研究会の面々が修正、編曲して完成させる。

 その楽曲を田町ナイトが歌い動画サイトにアップ、評判の良いものはライブで選曲されたり配信、CD化される。


 これは、彼らのコンセプトの一つである弱者の叫びを多種多様な人々に心置きなく表現してもらうのが一つの目的である。

 田町ナイトは彼らの代弁者としての役割をになっているのだ。

 勿論作詞者の個人情報は完全に秘匿ひとくする。

 作詞者本人が望まない限り、作詞者の蘭には『一般公募』としか掲載されない。


 この事によって作詞者が万が一にも個人攻撃にさらされる事はなくなる。

 更に田町ナイトが代弁者と言う立場を取る事で研究会の思想を揶揄やゆする事もしづらくなるのだ。

 事実、楽曲は応援歌やラブソング、コメディ調のものまであり、更にはまったく逆の立場の歌詞まであり多種多様だ。


 この中から反社会的で過激な歌がライブで選曲されようが、それは世論が評価したのものなのだから変え様がないと言うわけだ。


 しかし、それでも今までにいくつかの問題は発生した。

 昨年はとある大手企業の汚職を内部告発したものや、政治家や外郭がいかく団体、公務員等の犯罪やハラスメントを暴露したもの等、下手をすると身バレしてしまう様なものまで歌にして公表してしまい、火消しにかなり手間取った。

 但し、当の研究会の学生たちは楽しんでいた様だ……。


そんなこんなで様々な問題を引き起こしながらも田町ナイトの人気は急上昇したのだった。

 その原動力となったのは何と言っても田町ナイトの縦横無尽じゅうおうむじんで魅力的な歌声であろう。

 彼の歌声は時に破壊的で、時に優しく、時に哀愁を秘め、時に説得力があり、時に甘く切なく、時に雄弁であった。


 勿論それは研究会の努力の賜物たまものでもあったが、田町ナイトが持って生まれた才覚が大いに影響していた。

 彼は口数こそ少ないが、歌詞の内容をどの様な表情や歌声で表現すればよいのか精緻せいちに判断する事ができるのだ。

【時系列】※参考なので読まなくてもいいです。

6/25土 私、転生す

6/26日 イベントお知らせ

6/28火 イベントエントリー

7/3日 叔父と会う。サナ友4人登場

7/10日 イベント結果発表。蟹江さん登場

7/11月 カラオケ予告

7/16土 カラオケ大会。部屋の増築

7/17日 山本擬人化

7/19火 前世の話。蛯名さん登場

7/21木 アテナ覚醒。サユリはレポート作成中

7/22金 クッキー事件。ナミエ擬人化。サユリレポート終了

7/23_24土日 株式会社3Dボーカロイドで会議

7/25月 ファランクス残り3名の『覚醒』計画が提案される

7/26火 ファランクス残り3名の『覚醒』計画が始動する

7/27水 ファランクス残り3名についてオーナーの了解を得る

8/1月  メーティス覚醒

8/2火 ニーケ覚醒?

8/3水 ミネルヴァ(ミナミ)覚醒。夏フェス参加決定。【36話】

8/4木 レッスン部屋増築。サナとサユリの両親帰国【38~43話】

8/5金 サナとサユリの両親帰宅。【44話】

8/6土 本田一家、祖父母、叔父とカラオケ。庭の増築【44・45話】

8/7日 蟹江と蛯名が本田家訪問。

    アテナ、メーティス、ニーケと共に外の世界散策。

    山本発見。グレイマン登場。【47~50話】

8/8月 ボカロボット登場。両親日本を発つ。【52~55話】

8/9火  ボカロボで散歩。【57・58話】

8/10水 ミネルヴァ沈黙。【37話】

8/11木 小橋社長登場。【59話】

8/12金 ミネルヴァ再起動。山本戻る。【60~63話】

8/13土 AIポリス本部壊滅。ファランクスの4人ツイストーラスへ。

    ツイストーラス社員登場。【64~66話】

8/14日 フィナデビュー。緑と赤登場。

    第2,3,4,5,7,8研究開発部主任登場。研究主任会議。

    フィナ自宅にバリア。【67~73話】

8/15月 ツイストーラス会議。3Dボカロ会議、後ミーティング。

    サナ友集合。サナの両親職場に戻る。【74~81話】

8/16火 朝ファランクスとマラソン、竹馬で勝負。その後山本と遭遇。

    蟹江と蛯名とフィナがサナの両親とネット談話。【82~87話】

8/17水 緑と赤、蟹江さんと話す。夏フェス会場準備。

    北斗大学アイドル研究会登場(2か月前)。【88~94話】

8/18木 フィナ、栗原さんと打ち合わせ。

    研究開発部主任(卯月、白鳥、熊谷、午藤)QC施設へ。

    研究開発部主任(龍崎、未木)打ち合わせ。

    蟹江さんサナの母に連絡する。午後、前日打ち合わせ。

    (株)3Dボカロの浪岡と炭田会場視察。

    北斗大学アイドル研究会4人上京(10日前)。

    ファランクスの過去。【95~114話】

8/19金 夏フェス初日。【115~135話、136話~】←今ここ!

    ルンファーの話し。【136~149話】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ