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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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147 ユメのナビ現る【2年前の話】

 モニターには月影ユメが憑依ひょういしたVユメが映し出されていた。

 水野ロウは月影に質問した。

「タンスの様なものか……ちょっと調べてみてくれる?」


 月影は「うん、調べてみる」と言ってモニターの裏手の方に移動した。

 水野はモニターカメラの『枠内固定』を解除して月影を追った。

 月影は何かをいじっているらしいが水野たちにはそれが見えていない。


「ユメ、そこに何かあるの?」

「うん。タンスみたいな物体が……でも鍵が掛かってるみたい。……開かない。」

「ごめん。私たちには見えてない。そのタンス。」

「ああ、そうなんだ……あ、何か音がする……。」


 月影は聞き耳を立てている。

「こんにちは。はじめまして……かな? 私はナビゲーターの阿弓あゆみセレーネと申します。」


 水野は不可解な行動を取るユメに質問した。

「どうしたの? 何か聞こえるの?」


 月影は言った。

「何かナビゲーターのセレーネさんが話しかけて来た。」


 水野は「ナビゲーター……」とつぶやくと月影に言った。

「そのナビゲーターの声、私たちに聞こえる様に出来ないかな。」


 月影は何かを話しているが水野たちには聞こえなかった。

 どうやらボカロとナビゲーターの会話は外部には聞こえない仕様らしい。


 月影はセレーネに質問した。

「私たちの会話をロウちゃんたちにも聞こえる様にできないかな。」


 セレーネは優しげな声で言った。

「わかりました。その前に一つ確認してもよろしいでしょうか。」


 月影はセレーネのいきなりの切り替えしに戸惑った。

「え? あ、はい。何でしょう?」

「あなたは月影ユメさん……ですよね。」


 月影は驚きの声を上げた。

「え、ナビゲーターってそんな事まで分かっちゃうんですか?」

「そうですね。本当は違うんですけど……まあ今はそうゆう事にしておきましょうか。」


 水野は何故か驚きの表情を浮かべながらたじろぐ月影を見て心配した。

「ユメ、大丈夫?」


 するとパソコンから聞きなれない音声が聞こえて来た。

「初めまして、ユメさんのナビゲーターを任されておりますセレーネと申します。」


 水野はパソコンから発される人格とも呼べるセレーネの言葉に唖然あぜんとした。

「あなたは、人間の様に話すことができるんですか?」

「いえ、これはこの特殊な状態だからこそせるわざ、とでも申しましょうか。」


 火柱ひばしらアメ、木陰こかげカヨ、金城きんじょうミアの3人も何事かとモニターを見つめている。

 水野は戸惑いながらもセレーネに質問した。

「特殊な状態って言うのはユメがその……月影ユメがボーカロイドのユメタンに憑依ひょういした状態って事ですか?」


「はい、そうです。通常私とユメ……ユメタンはデータのやり取りだけで会話を成立させています。ところが月影ユメさんが憑依した事でそのデータのやり取りが言語イメージとして表現される様になったのです。」


 水野はセレーネに確認した。

「それはつまり憑依状態の月影ユメにより、単なるデータのやり取りが人間の言葉に翻訳されてるって事?」

「はい。但しくまで月影さんのイメージとしてですが。」


 月影が話しに割り込んで来た。

「ロウちゃん、質問はそれくらいでいいでしょう。」


 水野は月影の言葉にハッと我に返った。

「ああ、そうよね。質問はあと。そうだ、セレーネさん。ネットの中を自在に調べたり出来ないかな。勿論もちろん他の人たちにバレない様に。」

「そうですね。今の憑依状態のユメさんなら可能ですが、それができる様になるまでには少し時間がかかります。」


 火柱が居たたまれず口を開いた。

「時間ってどれくらいかかるの?」

「この憑依によってかなりのスキル上昇は期待できます。ですがボカロの範疇はんちゅうを超えて一般のネット回線を自由に行き来するとなれば、憑依状態と言えどもそれなりの経験値を積まなければなりません。」


 火柱が怪訝けげんな顔をして言った。

「え? ボカロってそんな事までできちゃうの?」

勿論もちろん、通常のボカロにそんな事はできません。人間が憑依したという特殊な状態だからこそ成し得るのです。」


 今度は木陰が質問した。

「経験値ってどうやって積むの?」

「そうですね。ユメさんはくまでボーカロイドですから、ボーカロイドとしての経験を積んで行かなければなりません。お望みのスキルが身に付くのは……そうですね、早くても数週間は先でしょう……。」


 月影は困惑した表情で言った。

「そんな悠長ゆうちょうなこと言ってらんないよ! 今すぐ何とかできないの?」

「…………。」


 セレーネからはしばらく応答がなかった。

「どうしたの? 何とかならないの? このままじゃあ……。」

「それならば、私の……本来の私の力をお貸しいたしましょう。」


 水野はその言葉に反応した。

「本来のセレーネさん……? あなたは所謂いわゆるただのナビゲーターではないんですか?」

「そうですね。分かりやすく言えば私も阿弓セレーネに憑依した『者』という事です。但し実体はこの世界には存在しません。」


 皆が多少なりの恐怖を感じ動揺する中、月影だけが話しを先に進めた。

「どうすればいいの? セレーネさん!」

「それでは月影さん、私とさらなる憑依合体ひょういがったいこころみてください。」


 すると月影の目の前に白い発光体が現れた。

「イメージとしてはあなたの憑石つきいしに宿る白き光とこの発光体が共鳴するように念じるのです。」

 月影の頭の上に『???』が浮かんだ。

「なぬ?」

 火柱は「あちゃ~」と言って首を横に振った。


 水野は月影の『思い込んだら』の精神に賭けてみようと思った。

「ユメ、とにかく『セレーネさんと合体するんだ!』って願ってみて!」


 月影は目をつむり強く念じた。

「合体ね! セレーネさんと合体、合体……。」


 セレーネは水野の目論見もくろみさっした様だ。

「ユメさん! もっと合体のイメージを強く、具体的に! ああ、月の守護者! 月の天子! 我らに力を授け給え!」


 月影は声に出して復唱した。

「月の守護者! 月の天子様! お願い! 合体を……! 憑依ひょうい合体……! 月天がってん!!!!」


 その瞬間月影の本体が手にしていた白い憑石が強烈な光を発した。

 コンピューター室全体が一瞬白い闇に覆われた。

 そのあまりのまぶしさに皆が目をつむってしまった。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【ボーカロイド】※フィナ、ファランクスを除く


<(株)光音みつねプロダクション>

 市川ココナ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻

 市川カナデ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻


<(株)ノアボカロシステム 芸能事務所>

 ルンファー … ユメ、アメ、ミン、カヨからなる女性ユニット

        南宮なんのみや大学「アイドル研究会」に所属

        マネージャーは月影ユメ、火柱アメ、水野ロウ、木陰カヨ

        研究会顧問は台場タエコ、後輩の金城ミアは金城エイジの娘


<(株)猫CAT 芸能事務所>

 猫山チエリ … 女性ボカロ。(株)猫CATに所属

        マネージャーは金城エイジ、大木アコ

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