表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
145/624

145 あるべき不安【2年前の話】

 水野ロウは自宅のリビングにあるソファーにもたれながら天井を見上げてつぶやいた。

「ああ、せめてネットの中を自在に探索できたらなあ……。」


「ちょっと待って……。」

 水野には思い当たる節があった。

「いや、まさかね……。」


 そう言いながらも水野は自分の部屋にある金庫を開けて『憑石つきいし』が封印されている箱を取り出した。

 そして箱から自分の青い石を取り出すと、以前彼女がよくやっていた様にそれを目の前に持って行き、まじまじと見つめた。

「本当に不思議な石……。」


 ボカロに憑依ひょういすると一体どうなるのだろうか。

 鳥であれば空を飛べる。

 魚であれば海を行ける。

 では電脳世界に住むボカロだったら……。


 しかし、ボカロってそもそもプログラムだ。

 確かにQCが組み込まれる事で何かが違ってくるのかもしれないが……情報があまりにも少なすぎる。


 顧問の台場先生には結局、ユメは悪夢を見たんだって事にしてある。

 本当の事を言って相談してみようか。

 でもきっと反対するだろう。憑石の使用には……。


 次の日、水野は1時間ほど早めに家を出た。

 彼女は自分が感じたインスピレーションに従った。

 これから行おうとしている事に対する不安に加え、見えない犯人、組織。

 恐怖はあった。

 しかし、金城の事を考えると居ても立っても居られないといった心情が彼女を後押ししたのだ。


 コンピューター室に入ると彼女は自分のボーカロイドであるミンを立ち上げた。

「オハヨウゴザイマス。ロウサン」

「おはよう、ミン。」

 ミンは昨日インストールしたばかりだった為、まだ言動もたどたどしい。


 彼女はカバンの箱から青い憑石つきいしを取り出した。

 目の前にはミンが何を言う事もなく彼女を見ている。

「ミン……あなたにはどんな能力ちからが眠っているの?」


 水野の何気なにげ無いつぶやきに対してミンは無表情で聞き返した。

「ワタシニハ、ドンナ、チカラ、ガ、ネムッテ、イル、ノカ。ロウサン、チカラ、ハ、コノバアイ、ナニヲサシマスカ?」


 水野はミンのいきなりの質問に驚き、そして少し戸惑った。

 Vユメの時とは明らかに違う感覚があったのだ。

 インストールされたばかりのVユメだったらこの場合「ワカリマセン」を連発していただろう。

 これがボカロの個性というやつだろうか。


 水野はミンに向かって言った。

「あ、ごめん。ちょっと難しいから……後で教えるよ。」


 ミンは水野を見つめながら言った。

「ワカリマシタ。」


 水野は微笑みながら呟いた。

「まあ、ミンの様なボーカロイドは『難しい』の概念が私たちと大きく異なるんだろうけど……。」


 ミンは返答した。

「セイカイデス。」


 その時水野はハッとした。

 ミンの表情が少し微笑んでいた様に感じたからだ。


 こうしていても始まらない。今なら……!

 水野は床に寝転がると憑石つきいしを握りしめて念じた。

「ミン、憑依ひょういさせて!」


 青い憑石が鈍い光を放った。

 水野は目をつぶりドキドキしながらその時を待った。

 錯覚かもしれないが、手に握っている憑石の方へ意識が吸い寄せられている様な感覚を覚えた。


「憑石に封印されし2次元体の窓の向こう側にはミンが待っている……もう少し!」

 しかし水野は何かにはじき返されるようにして意識が戻ってしまった。


「まだ、ダメみたいね……。」

 その時コンピュータ室のドアが開いた。


 水野は床に寝転がった状態から慌てて立ち上がりそちらの方を見た。

「ユメ、みんなも……! 早いのね……。」


 木陰こかげカヨが言った。

「やっぱりね……。」


 火柱ばしらアメはうなずきながら言った。

「昨日の帰り、ロウちゃんの様子がおかしかったから。」


 月影は水野に近づくと叫んだ。

「ああっ! 憑石! 私から取り上げたくせに~!」


 水野は照れくさそうに謝った。

「ごめん。ちょっと試してみたい事があって……。」


 木陰は察した。

「ああ、なるほどね。で、何とかなりそうなの?」


 火柱も気が付いたようだ。

「ちょっと、危険じゃないの? いくらロウちゃんでも……。」


 月影は頭の上に『???』を掲げた。

「なぬ……?」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【ボーカロイド】※フィナ、ファランクスを除く


<(株)光音みつねプロダクション>

 市川ココナ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻

 市川カナデ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻


<(株)ノアボカロシステム 芸能事務所>

 ルンファー … ユメ、アメ、ミン、カヨからなる女性ユニット

        南宮なんのみや大学「アイドル研究会」に所属

        マネージャーは月影ユメ、火柱アメ、水野ロウ、木陰カヨ

        研究会顧問は台場タエコ


<(株)猫CAT 芸能事務所>

 猫山チエリ … 女性ボカロ。(株)猫CATに所属

        マネージャーは金城エイジ、大木アコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ