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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
143/624

143 天女のなまえ【2年前の話】

 水野ロウはパソコンにメモリーを差し込んだ。

 そして火柱ひばしらアメと木陰こかげカヨに今しがた解析してもらったばかりの画像を見せた。

 そこにはまるで印刷でもしたかの様なとても細かい字が書き込まれていた。


 木陰は思わずつぶやいた。

「これって……。古文書をパソコンで書き直したもの?」


 水野は画面を見ながら言った。

「いえ、黒塗りの下に書いてあったものをそのまま映し出したものよ。私も最初同じこと聞いちゃったけど……。」


 木陰は最初の数行を読み上げた。


 憑依術式ひょういじゅつしき

 未音いわ

 一、憑石つきいしを携帯すべし

 一、おのが身体を安全なる処に固定すべし

 一、強き思い残す有情無情との心心一体を念ず

 一、合体ののち、先方の心身をおもんばかる事忘るベからず

 一、憑依対象と心を通じ奥底深淵おうていしんえんなる結合を解き明かさん

 一、憑石を保持する者、彼者かのものの用いたる能力を自在に操るるものなり

 一、また、憑石に向かいて復元念ずればおのが身体に帰す

 一、身体への害無し、但し体験せし記憶残存す


 火柱は驚いた様子で言った。

「これって、うちらのご先祖が書いたって事?」


 水野は「う~ん」と考え込んだ表情のまま答えた。

「分からないけど……仮にそうだとしても何者かのレクチャーを受けた内容をまとめた感じかな。多分憑石を作成したか、その効用を知る者……。」


 木陰は思い当たった事を言ってみた。

「もしかしてほら、あの古文書に書いてあった2人の天女とか……。」


 水野は木陰の方を見てうなずきながら答えた。

「そうね、そうかもしれない。ただここには『天女』という言葉は出て来ない。まあこの『未音みおん』? て言うのがそれに当たるのかもしれないけど……。」


 火柱はまたも驚いた顔で言った。

「何? 天女までいるって事? ファンタジーの世界じゃないよ!」


 水野は少し笑いながら2枚目の画像を開いた。

 そこには殊更ことさら不可解な内容が記されていた。



 未音いわ

 我、数値算出の都合上虚言戯言きょげんざれごともっ憑石つきいし力作りきさことわりを示す

 これ信仰にあらず、我神われかみに非ず

 祈る事なかれ、信ずる事なか


 時は一次、空は三次、あわせし時空は四次なり

 仮に空の三次、別空と二次の門にて繋がらん

 二次の門は有に非ず無に非ず又は無也有也

 別空は五次、十次、多次、超次にて三千世界の情無情の根源たる処也


 別空にて人衆ひとつから成る

 これ時の一次を一空収縮するに同じ

 すべての時を一空にまとむれば人は肉片のつながりにひとつとなる

 ひとつを仮に人元ひともととす


 高次別空の人元ひともと、因果のやまいかかりその箇所を封ず

 隔離かくりされし箇所かしょ三次の空是即これすなわ我等在処われらがすみかなり

 罹患りかんされし箇所是即これすなわち我等人衆なり


 罹患の徒、やまいに知覚奪われ高次を認めず

 正気を失いその病を侵食さす

 健常なる民草にも病広がり、やがて等しく罹患の徒と成りぬ


 人元、薬師を遣わす…………



 火柱がぽつりと言った。

「何じゃこりゃ?」


 水野は微笑ほほえんだ。

「多分、私たちのいる四次元時空より高い次元を通して憑依ひょうい合体するみたいな事が書いてある。」


 木陰は水野に質問した。

「アニメやSF小説とかなら聞いたことあるけど実際そんな場所ってあるの? 四次元空間とか……。」


 水野は答えた。

「それは何とも言えない、今のところはね。でも物理学なんかではそう言った余剰次元が存在するものとして計算している場合も多いみたいよ。」


 火柱はキョトンとした顔で言った。

「へえ、最先端の科学者たちでも分からないって事か……。」


 水野は話しを続けた。

憑石つきいし自体は普通の鉱石を細工したものみたい。そこに高次元の別の空間との窓口が封印されていて……この窓口ってのがさっき書いてあった2次元体って事かな。」


 木陰はうなずいた。

「成程、それでオーパーツって事か……。確かに訳分からん。」


 水野は二人に言った。

「ユメには注意しておかないと。もう一度憑依したいなんて言い出したら多分止められない……。憑石つきいしも封印しておいた方がいいかもしれない。」


 火柱は「うんうん」と大きくうなずきながら言った。

「何があるか分からないものね。悪い奴に悪用されても困るし。私も封印に賛成!」


 木陰も封印に賛成した。

「ええ、正直さっき怖かったもの。ユメがあのままだったらと思うと……。」




 それから一月ひとつきが経ち、アイドル研究会の面々は各自冬休みを満喫した。

 火柱、水野、木陰の3人は何とか3Dボカロソフトの購入にぎ着けた。

 金城は家の方が落ち着いてからと言う事でこの冬の購入は見送った。


 憑石つきいしはすべて水野ロウが回収し自宅の金庫に保管していた。

 月影ユメはと言えば変わりなく元気にしており食欲も旺盛おうせいだ。

 食っちゃ生活で3kgも太ったとなげくほどに。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【ボーカロイド】※フィナ、ファランクスを除く


<(株)光音みつねプロダクション>

 市川ココナ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻

 市川カナデ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻


<(株)ノアボカロシステム 芸能事務所>

 ルンファー … ユメ、アメ、ミン、カヨからなる女性ユニット

        南宮なんのみや大学「アイドル研究会」に所属

        マネージャーは月影ユメ、火柱アメ、水野ロウ、木陰カヨ

        研究会顧問は台場タエコ


<(株)猫CAT 芸能事務所>

 猫山チエリ … 女性ボカロ。(株)猫CATに所属

        マネージャーは金城エイジ、大木アコ

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