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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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142 口を寄せたつもりはない【2年前の話】

 木陰こかげカヨは目を大きく見開いてまじまじとパソコンのモニターに映る何者かを見つめていた。

「え? あなた……ユメタンでしょ。え、て言うか人間みたいにしゃべってる……。」


 月影ユメは何が何だか分からないまま訴えた。

「私はユメだよ。月影ユメ! え、もしかして私、ユメになっちゃったの?」


 その時、水野ロウが遅れてコンピューター室に入って来た。

「あれ、みんなどうしたの?」


 火柱ひばしらアメがあわてて水野を手招いた。

「ねえ、ちょっと来て……ロウ。私たちも何が何だか分からない……。」


 水野は月影の手に白い憑石つきいしが握られているのを見逃さなかった。

「これは……。」


 月影は半信半疑ながらも水野に伝えた。

「私、ボカロになっちゃった。これって夢……だよね。」


 水野はモニターのVユメをしばらくじっと見つめると口を開いた。

「これは夢じゃない。現実よ。何があったのか話してくれる?」


 月影はVユメの変更保存中に憑石を眺めながら眠ってしまったことを伝えた。

「……そしたらカヨの声がして、気付いたらこんな事に……。」


 水野はそれを聞き終わるとモニターのVユメに向かって言った。

「多分だけど、これは憑石が原因かもしれない。」


 全員が驚いた。

 木陰は水野に確認した。

「じゃあユメは……ユメタンに憑依ひょういしちゃったって事?」


 水野は真剣な眼差まなざしで答えた。

「ええ、実はあの黒塗りの古文書、今さっき分析が済んでね。どうやら憑石はオーパーツの一種らしい事がわかったの。でも実際にこんな……。いえ、詳しい事は後で話すわ。今はユメを元に戻さなくっちゃ。」


 木陰は水野の言葉にうなずいた。

「どうすれば元に戻るの?」


 水野はモニターのVユメに向かって言った。

「ユメ、ずはこの……あなたが手に握っている憑石をよく見て。……そう。そして、そこに意識を集中させる。」


 月影は素直に従った。

「うん、わかった。」


 水野は指示を続けた。

「そしたら元の身体に戻りたいと強く念じてみて。」

 月影はすぐにも言われた通り念じてみた。


 すると憑石が鈍い光を帯び、今まで突っ伏していただけの月影の身体がびくんとはじける様に動いた。

 木陰は月影が椅子から崩れ落ちない様にその肩をグッと支えた。

「ユメ、大丈夫?」


 月影はゆっくりと起き上がると周りをきょろきょろと見回した。

「あ、戻った。」


 皆、胸をで下ろした。

「ふう、何とか戻った様ね。」


 火柱は水野に質問した。

「今のって冗談とかじゃないよね。まさか本当に憑依するなんて……。」


 水野は少し心配そうに月影に話しかけた。

「身体は何ともない?」


 月影はうんうんと首を縦に振ってうなずいた。

「大丈夫……だと思う。何ともないみたい。」


 金城きんじょうカナは月影に歩けるかどうか確認してから皆に言った。

「私、一応月影先輩を保健室に連れて行きますね。ついでに台場先生にも伝えておきます。何て伝えたらいいか微妙ですけど……。」


 木陰は気を効かせてくれた金城にお礼を言った。

「ありがとう。あんまり大勢で保健室に行くのも何だからね。台場先生は今会議中だと思うから私たちの方から後で言っておくよ。」


「わかりました。じゃあ先生の方はお願いします。」

 そう言うと金城は「大丈夫!」と言い張る月影を強引に保健室に連れて行った。


 水野はホッと溜息ためいきくと火柱に言った。

「どうやら古文書に書かれていた内容は現実にあった事みたいなの……。」


 火柱は質問した。

「けどあの時、猫とか犬、カエルもだっけかな。いろいろ試してみたけど憑依できなかったよね。」


 水野は答えた。

「私もまだ全部読み終えたわけじゃないんだけど『黒塗りの古文書』には憑依の方法やその理論が事細かに解説してあった。で、それにれば憑依する対象に強い『思い』を寄せていなければならないみたい。」


 木陰は言った。

「思いを寄せるだなんてオーパーツって言う割にはあまり科学的じゃないね。」


 水野は「そうかもしれない。」と前置きしてから言った。

「けど、その人の『思い』と言うのは科学の進化に欠かせない事もまた事実じゃない?」


 火柱はうなずきながら言った。

「うん、確かにそうかもね。」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【ボーカロイド】※フィナ、ファランクスを除く


<(株)光音みつねプロダクション>

 市川ココナ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻

 市川カナデ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻


<(株)ノアボカロシステム 芸能事務所>

 ルンファー … ユメ、アメ、ミン、カヨからなる女性ユニット

        南宮なんのみや大学「アイドル研究会」に所属

        マネージャーは月影ユメ、火柱アメ、水野ロウ、木陰カヨ

        研究会顧問は台場タエコ


<(株)猫CAT 芸能事務所>

 猫山チエリ … 女性ボカロ。(株)猫CATに所属

        マネージャーは金城エイジ、大木アコ

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