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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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137 つきの石って本物なの?【8年前→2年前の話】

 次の日4人は倉に入り古文書や祭事道具を熱心に調べた。

 水野ロウが以前からここを調べるに当たって既に掃除をしておいてくれたので作業はスムーズに進行した。

 古文書には憑依ひょういに関するものや謎解きの様な文面のものが見つかったが、祭事道具の方はこれといって関係がありそうなものはなかった。


 月影ユメは変な形のつぼ燭台しょくだいうつわに入った数珠じゅずや木切れ等の小物を探っていたが、これと言ってそれらしいものは見つからなかった。

「そうだ、あの石を近づけたら何か起こるかも!」


 月影ユメは近くにあった木箱から憑石つきいしを一つ取り出してすべての祭事道具にくっつけたり中に入れたりしてみた。

 しかし当然のごとく何も起こらなかった。


 全部の石を使って同じ様な事をしてみたが無機質な道具はうんともすんとも言ってくれなかった。

「もう! うんとかすんとか言ってよ! ぷんすか!」

 月影ユメは癇癪かんしゃくを起こした。


 火柱ひばしらアメと木陰こかげカヨは苦笑した。

「ねえ、取りえず写真でも撮っておかない?」


 やる事が無くなっていた月影ユメは喜んでスマホを取り出した。

「はい! 喜んで!」

 どっかの居酒屋みたいになってる。


 写真を撮り終えると4人は数冊の古文書を持ち出してユメの部屋に移動した。

 水野ロウは自前のデジカメで古文書を一つ一つ撮影して行った。


 火柱アメが「ん?」と言いながら1つの巻物を見つめた。

「これ、全部黒塗りだけど……。」


 水野ロウが答えた。

「ああ、それちょっと気になって。後で調べてみようかと……。」


 木陰カヨはその巻物を見ながらいった。

「う~ん、見事に塗りつぶされてるね。これじゃあ調べようがないんじゃないの?」


 古文書はほとんどが巻物だったが、帳面になっているものや薄い木の板に墨で書かれたもの等もわずかにあった。


 中には憑石について書かれたものもあったが何を言いたいのか不明瞭ふめいりょうな内容であった。

 木陰カヨは気になったのでそれを読み上げた。

「えっと、『憑石に白、赤、青、緑、黄、茶、黒の七色在り。術に月天、火天、水天、風天、法天、地天、日天の七つ相在り。未音いわく七術不在なり、無用也。』だってさ。」


 木陰カヨは水野ロウに尋ねた。

「これって憑石の事かな。ね、ロウちゃん。」


 水野ロウはその古文書を見ながら返事をした。

「うん、間違いないと思うよ。それ、前から気になってたんだ。だけど七色ってのは本当だった。その忍術みたいのは分からないけど。」


 古文書にはいくつかおとぎ話の様な内容も記されていた。

 しかし内容はかなり中途半端なものが多かった。


『2人の天女が舞い降りて来て彼女たちと夜明けまで語らった。』

憑石つきいしを使ってかわずと成り池の中を泳ぎ回っていたが蛇に吞み込まれて気が付いたら元の自分に戻っていた。』

『鳥となったはいいが飛び方がわからない。屋根裏から飛び降りてしばらく必死にばたばたと羽を動かし宙に浮いていたものの遂には力尽きて池に墜落してしまった。』

 みたいな感じだ。


 火柱アメは半笑いで言った。

「何か物語ものがたりって言うよりも夢で見た事をそのまま書いてるって感じ。」


 月影ユメは残念そうにうなずいた。

「そうそう! かなりトホホな感じだよ! 私たちのご先祖様トホホだよ!」


 その後一通り文献や他の家の倉等も調べてみたが実の成る成果は得られなかった。



 それから1年後。

 小6になるとその事もすっかり忘れ、4人はダンスユニットの真似事にはまっていた。

 水野ロウはその時点でも研究を続けてはいたが、その内容は村の歴史を中心にした調査に移行していた。


 ちなみに『憑石つきいし』は記念として4人で1つずつ持つ事にした。

 水野ロウは青、火柱アメは赤、木陰カヨは緑、そして月影ユメは白の憑石をそれぞれ選んだ。

 残りの黄色、茶色、黒の憑石は「ユメはダメ。絶対なくす。」と言う木陰カヨの提案により、水野ロウが保管することになった。



 高等部に入ると4人は好きが高じて『アイドル研究会』を立ち上げ、思う存分ダンスを楽しんだ。

 しかし、ダンスをやって行くうちに歌いながら踊りたいという願望が出て来た。

 折も折、矢内やないレコピャの『ストーリー・ストッパー』が流行はやり出していた頃で彼女たちはそれを4人ようのダンスにアレンジして試してみた。


 その結果、ダンスはいつも通りうまく行ったが如何いかんせん歌が……と言う事に。

 何回かやってはみたが、声が出ない。音程が合わない。

 結局「やっぱりダンスだけの方が集中できるね……。」という結論にいたった。


 さて、ユメたち4人はこの『アイドル研究会』以外にも『パソコン部』に所属していた。

 この『パソコン部』は正式な部活動で、『アイドル研究会』の方は言わば自主サークルの様なものだった。


 4人が2年生になった7月中旬。

 パソコン部の部室であるコンピューター室で4人がくつろいでいると後輩である金城きんじょうミアが雑誌を持ち出して話しかけて来た。

「先輩、これ知ってます?」

 その雑誌には3Dボーカロイドについての記事が掲載されていた。


 4人はその物珍しい内容に興味を持った。

 水野ロウは金城に質問した。

「これってあなたのお父さんじゃない?」

 金城ミアは株式会社猫キャット社長、金城エイジの娘だ。


 金城は少し照れ臭そうに言った。

「はい、そうなんですけど……。えっと、ここ見てください。この子、猫山チエリって言うんですけどね。」


 木陰こかげカヨは猫山チエリの写真をまじまじと見ながら言った。

「かわいい。これ、ボーカロイド?」


 金城はニコニコしながら言った。

「はい。めっちゃかわいいんですよ。それに歌がすごくうまいんです。」


 火柱ひばしらアメはかわいい猫山チエリの写真に思わずホッコリした。

「ねえ、猫山チエリの動画ってないの?」


 金城はスマホを取り出しながら言った。

「ありますよ。今パソコンにつなげますんで。」


 パソコンのモニターには猫山チエリの歌っている姿が映し出された。

 水野ロウは始めて見るボーカロイドのダンスと歌声にグッときつけられた。

「へええ……。すごいね!」


 月影ユメもその光景に目を見張った。

「これ! これよ! 私たちも3Dボカロに歌、歌ってもらえばいいのよ!」


 火柱アメは横目でユメをチラ見しながら言った。

「ユメ、あんたそれ自分の願望を満たす為に部活を私物化してない?」

 皆、クスクス笑いながらもユメのいつもながらの暴走を止めようとはしなかった。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 吉田奈美恵(ナミエ) … AIポリス特殊捜査隊大隊長。ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【ボーカロイド】※フィナ、ファランクスを除く


<(株)光音みつねプロダクション>

 市川ココナ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻

 市川カナデ … 女性ボカロ。(株)市川電算に所属

        マネージャーは市川ジロウ、サキエ夫妻


<(株)ノアボカロシステム 芸能事務所>

 ルンファー … ユメ、アメ、ミン、カヨからなる女性ユニット

        南宮なんのみや大学「アイドル研究会」に所属

        担当は月影ユメ、火柱アメ、水野ロウ、木陰カヨ


<(株)猫CAT 芸能事務所>

 猫山チエリ … 女性ボカロ。(株)猫CATに所属

        マネージャーは金城エイジ、大木アコ

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