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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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131 すっきり

 私はこの機会に前から疑問に思っていた事を口にした。

「あの~。つまらない事お聞きしていいですか?」


 蟹江さんは私のいきなりの質問に興味を示した。

「ん? どうしたの?」


 私は思い切って聞いてみた。

「ホントどうでもいい事かもしれないんですけど私のクラス、Sってあまりいないって聞いたんですけど……。」


 蟹江さんは蛯名さんの方を向いて言った。

「ああ、あれね。あれってどんな理由だっけ? えっと確か『特例』のマーキングか何かだっけ?」


 サユリも興味津々で聞いている。

「え? そうなんですか。『特例』って……。」


 蛯名さんが答えた。

「ええ、元々Sは欠番だったんですけどね。ほら、ミカとルクみたいな特殊固体は最初からある程度作り上げられているでしょう。彼女たちみたいに自社で開発したボカロ、所謂いわゆる通常の成長過程を踏まずに完成してしまっているボカロを区別する為の印みたいなものがSだったわけです。クラス履歴にSがついてれば何らかの特殊性があるってわかるでしょう。」


 蟹江さんが「そうそう。」と言いながらうなずいている。

「でもまあ社外で、一般用のソフトでSがついちゃう様なボカロがまさか出て来るとは思わなかったけど。確率はゼロじゃあなかったんだけどね。」


 成程(な~る)、私が特殊である事は認めるよ。

 サユリもどうやら納得しているみたいだった。

「成程、そうゆう意味だったんだ……。」


 小橋社長は素朴な疑問を口にした。

「ファランクスの4人はどうなの? もう既にS超えちゃってるでしょ。」


 蛯名さんは頷きながら答えた。

「ええ、本来はそうなんですが。今回は余りにも特殊な事例と言う事でマネージャーさんたちの了承を得てSを後付けさせてもらっています。」


 小橋社長は「ふ~ん。」と言いながら納得した様子だった。

「Sはうちの5人とミカとルク?」


 蛯名さんは少し大げさに手を振った。

「いえいえ、ミカとルクが完成する前に数百体のプロトタイプや試作プログラムがありますから……。」


 小橋社長は少しギョッとしながら口に手を当てた。

「うわ、何か変な事聞いちゃったかしら……。」


 小橋社長のその様子を見て蟹江さんが言った。

「まあ、確かに気持ちは分かるけどね。フィナたちを先に見ちゃってるから。でもボカロと言えども最初はプログラムだった訳だから……。難しい問題かもね。」


 蛯名さんが考え込みながら言った。

「人間がいつから人間になったのかってのと似ている問題かもしれませんね。個にしても、進化の過程にしても……。」


 小橋社長は下唇を突き出して言った。

「ちょっとお。難しい話わかんな~い。それにしても……。」


 小橋社長は蛯名さんの方を見ながら言った。

「あんた、相変わらず綺麗ね。」


 蟹江さんは小橋社長に厳格な視線をやりながら言った。

「まさか、また勧誘するつもりじゃないでしょうね?」


 小橋社長は笑いながら言った。

「大丈夫よ。今はボカロ一本なんだから。ねえ、フィナさん。」


 私は「あはは……。」と苦笑いしながら言った。

「あの、ついでにもう一つ聞いてもいいですか?」


 小橋社長は警戒した。

「ちょっと、難しい話は無しよ。」


 私はこれまた前から聞いてみたかった事を口にした。

「山本や斎藤さんみたいなナビゲーターさんはちゃんとした……人間みたいな名前がついてるのに、そうじゃない方もいますよね……。」


 蟹江さんはニヤリとしながら言った。

「ああ、あなた前から気にしてたわね。モジャオとか冒険王子とかでしょ?」


 小橋社長は「え?」と言いながら質問した。

「な~に? そのモジャオとかって……。後、冒険王子?」


 蟹江さんは笑いながら言った。

「ああ、前に話したボカロの"ナビの国"ってあったでしょう?」


 黒木さんがうなずきながら言った。

「ええ、憶えてます。プログラムを役割などで分割して名前や関係性を付加する事で社会的機能を持たせた世界でしたよね。」


 小橋社長は黒木さんの方を見て驚いた表情をした。

「あんたよくそんな事憶えてるわねえ。そんな事言ってた?」


 蟹江さんは笑顔で言った。

「ええ、そうそう。そこのナビの会社の社長がモジャオって言うんだけど。」


 小橋社長は初めキョトンとしていたが、いきなり笑い出した。

「あっははははは! ホントに? モジャオって言うんだ! あっはっはっは! 何でそんな名前がついちゃったの? ウケる!」


 蟹江さんも笑いながら蛯名さんに聞いた。

「え、あれ何だっけ。うふふふふ。」


 蛯名さんも釣られ笑いをしながら説明してくれた。

「はい。プログラムと言っても色々な種類がありますよね。ナビゲーターなんかはボカロに一番近い重要なポジションにありますので人間と同じような名前が付きます。まあAIがその辺考慮しながらプログラムを分割して名前を割り振って行くんですけどね。」


 サユリも少し笑ってしまっている。

「成程。でもどうして……ぷふっ……モジャオなんですか?」


 蛯名さんは説明を続けた。

「うふふ。名前である程度そのプログラムの重要度が分かる様にしてあるんですよ。まあ分割されたプログラムは途方もない数になりますので、とても人間の名前の種類だけじゃ足りないと言うのもありますが。便宜上べんぎじょう同じ名前は使えませんしね。」


 小橋社長は言った。

「でも、そのモジャオ……プフッ。言ってて笑っちゃうわね。それって曲がりなりにも社長なんでしょう?」


 蛯名さんは答えた。

「社長にも色々ありまして、彼の役割はナビプログラムの番地を表す程度でしかないんです。こっからここまでがこの地域のナビプログラムですよ~。みたいな。ただそれとなく人間ぽい名前なのは曲がりなりにも社長権限があるからじゃないですかね。」


 サユリは聞いた。

「権限? ですか。」


 蛯名はニコリとして言った。

「まあ様々なアクセスポイントに移動出来るって事くらいですけどね。」


 小橋社長は手をポンと叩いて言った。

「そりゃあ確かにモジャオだわ! あっははははは!」

 黒木さんも思わず笑ってしまっている。


 私はかさず聞いた。

「じゃ、じゃあ冒険王子は?」


 蛯名さんは私の疑問に答えてくれた。

「彼は言うなれば山本のプロトタイプの一人ですから。」


 私はピキーンとひらめいた。

「そうか、名は体を表すとは正に。山本の変な冒険癖は冒険王子の遺伝子ってわけか!」


 蛯名さんは笑顔で言った。

「正にその通り!」


 小橋社長は待ち構えていた様に手を叩いて笑い出した。

「あ~っはっはっは! 冒険王子! な~んでそんな名前! あ、そうか自由に冒険しちゃうって事ね! ふう、あんまり笑かさないでよ。もう!」


 どうやら私たちだけじゃなく小橋社長もこの『笑えるネーミング』にはまってしまった様だ。

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【サナの友だち】

 山梨ユキナ … サナの友だち。9歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる

 栗木ミナ … サナの友だち。9歳。元気。

 桃園マナミ … サナの友だち。9歳。おしゃれ。

 柿月ヨナ … サナの友だち。9歳。物静か。兄のユタカはアテナのマネージャー


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

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