130 楽しい事もストレスになるのよ
サナたちはまだ興奮冷めやらぬ様子であったが、いよいよ帰宅する時間となった。
40分とは言え4人分の、しかも大盛り上がりのライブを鑑賞した事もあり、みんな結構疲労していた。
これはサナたちだけではなく大人にも言える事だった。
帰宅第1便のバスにはサナたちの他、来賓とその家族も合わせて数十人が乗っていた。
皆満足気ではあったが少しへばった顔をしていた。
付き添いとして3Dボカロ研究開発部の未木タツヤさんと龍崎アヤネさんが同乗してくれた。
蟹江さんと蛯名さん、それとツイストーラスの小橋社長と黒木さんがサナたちを見送ってくれた。
勿論、私とサユリも一緒に見送った。
サナたちはバスの中から元気に手を振りながら家路についた。
その後みんなで国際会議場ビルへと向かった。
充電しておかないと心配だったので蟹江さんに相談した所、この時間は会議室で過ごそうとゆう事になったのだ。
本当は次のライブも生で見たかったけど仕方がないよね……。
いや、分かるよ。本来なら「おのれ! 緑と赤め!」が正解なのは。
でもついつい言っちゃうんだよ。
「おのれ! 山本春子めが~!」って。その方がしっくり来る。
でもホント、明日については嫌な予感しかしない……。
ところで明日なんけど私たちボカロボの席に充電用の電源を用意してくれる事になった。
蟹江さん、ありがとう!
明日はちと忙しいだろうからホント助かります。
明日土曜日、入場開始から開会式までは今日と同じ流れだ。
で、トップバッターは紅カジン。
その後、メイン会場ではバグランド、黒崎ネム、市川カナデと続く。
サナたちが話し合った結果4つとも見たいとの結論に至った。
途中お腹がすいてしまうのでバグランド終了後おにぎり等を軽く食べておいて、市川カナデのライブが終わってから昼食を取る事となった。
私はみんなが昼食を取っている間に専用のネット回線を使って自宅へと戻り、ライブの準備をいたす予定だ。
さて、お見送りの後私たちは国際会議場ビルへと向かった。
私たちが会議室に着くとサユリが早速私のボカロボに充電してくれた。
蛯名さんはクーラーボックスから冷えたお茶を出して皆に配った。
「サナちゃんたち喜んでくれて良かったですね。」
蛯名さんが嬉しそうにそう言うと、小橋社長は頷きながら答えた。
「ホントお行儀が良くって、それに元気もよかったしねえ。」
蟹江さんが「ふう。」と言いながら椅子に腰を掛けた。
「ええ、あの子たち見てると自分が歳いってるなって思う。凄く思う。もうあんな元気は私には無い。」
黒木さんも笑顔で同意した。
「私、最初の神崎ノアでもうへばってました。」
小橋社長は「え?」といった顔つきで言った。
「そう? 私は大丈夫だった。楽しかったけどな。」
蟹江さんはペットボトルの蓋を開けながら小橋社長に言った。
「いや、私も楽しかったには楽しかったのよ。ただ……。」
黒木さんが蟹江さんの話しを継いだ。
「あの声援……と言うか応援ですか? 今のコンサートってあんなに観客も大騒ぎするもんなんですね。」
小橋社長はお茶を飲みながら言った。
「いや、今のその……アイドルのライブってあんなもんでしょうよ。」
黒木さんが少し小さな声で言った。
「あ、コンサートじゃなくてライブか……。」
暫くライブ談議が続き、やがて明日のイベントの事が話題となった。
蟹江さんが私に聞いてきた。
「フィナ、どう? 明日は。うまく行けそう?」
私はマイクをオンにして答えた。
「はい、もうここまで来たら全力でやるだけです。」
小橋社長は細い目を大きく見開きながら言った。
「おお、頼もしい!」
私は1つだけ注意しておかなければならない事を告げた。
「まあ、山本は……緑と赤はちょっと心配なんですけどね。」
芸能事務所ツイストーラスではここ最近皆が多忙であった為、小橋社長と黒木さんだけが緑と赤の話しを蟹江さんから聞いていた。
但し私やファランクスの転生の話しはまだしていない。
話すにしても夏フェスが終わった後だろう。
小橋社長は蟹江さんに質問した。
「ああ、あれね……。大丈夫なんでしょう?」
蟹江さんは半笑いで答えた。
「ええ、多分ね。来週の水曜日にあっちから連絡が入るって言ってたし。それまでは何もして来ないんじゃないかしら。」
蟹江さんは蛯名さんの方を見て言った。
「ねえ。」
蛯名さんは頷きながら言った。
「はい、私もそう思います。まあ一応フィナさんの強力なバリアーも張ってますし。手出しできないと思いますよ。」
あ、私が投げた疑問、私が自身で解決してたのね。
「そうですね。まあバッテリーの減りが幾分早いですが。大丈夫そうです。」
読んでくださりありがとうございます。
先月ほどではありませんが、まだまだ多忙な日々が続いております。
少しずつでも更新できたらといいかなと考えております。
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【サナの友だち】
山梨ユキナ … サナの友だち。9歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる
栗木ミナ … サナの友だち。9歳。元気。
桃園マナミ … サナの友だち。9歳。おしゃれ。
柿月ヨナ … サナの友だち。9歳。物静か。兄のユタカはアテナのマネージャー
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。
新米ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所
小橋レイナ … 社長、代表取締役
黒木ナナ … 副社長。1児の母




