120 ライブが始まるよ~!
いよいよ開演が迫って来ると、流れていた乗りのいい音楽がフェイドアウトして行った。
シーンと静まり返る会場。
すると、いきなり開始を知らせるブザーが鳴った。
ステージ上の巨大なモニター画面に、まだ真っ暗なメイン会場のステージがそのまま映し出された。
何人かの人が手を振って自分が映ってることを確認したりしていた。
暫くするとその映像がパッと切り替わり、3Dボカロ社のロゴが映し出された。
それとほぼ同時に、ステージの左端をスポットライトが照らした。
そこには司会と思われる女性が一人、モニター内に映し出されていた。
「みなさん、おはようございます。今日は朝早くからこんなに大勢の方にお越しいただいて誠にありがとうございます! 私、今日、明日と二日間MCを務めさせていただきます、大山スミカと申します。よろしくお願いします。」
因みに司会の大山さんはメイン会場のステージにいたので、私たちがいるアリーナ会場ではモニターを通してその姿を見ているという形だ。
大山さんの明るい感じの声が会場内に響き渡った。
「さあ、今日は私を手伝ってくれる頼もしいお二人がスタンバイしていますので、早速呼んでみましょう! ミカ! ルク!」
すると巨大モニターの中にミカとルクがその姿を現した。
「は~い。ミカです!」
「ルクです!」
ミカとルクが両手を振りながら挨拶すると大きな歓声が上がった。
こちらの会場もメイン会場の盛り上がりに釣られる様に拍手が起こった。
そして暫くすると全体が静かになった。
ミカは両手を広げて観客に笑顔を向けた。
「ようこそ! 第2回ボカロ祭りサマーバージョンへ!」
観客は久しぶりのミカとルクの登場に喜んでいる様だ。
ミカ「間もなく、みんなが待ちに待ったライブイベントが開催されます。イエイ!」
ルク「ちょっと待ってミカ。ライブの他にもお楽しみはあるでしょう?」
ミカ「はい。メイン会場の隣りでは同人誌即売会やコスプレ会場もあるし……。」
ルク「その隣の企業ブースでは様々なボカロのグッズが販売されてるんだよね。」
ミカ「わあ、楽しみ! 私も早速見に行かなきゃ!」
ルク「ダメよ。私たちはMCの大山スミカさんを手伝いに来てるんだから!」
ミカ「ちょっとぐらいいいでしょう? ねえ、大山さん。」
微笑ましい二人の会話に会場では笑いが起きていた。
皆、ミカとルクの会話を楽しんでいる様であった。
サナたちも笑っていた。
そして時間が頃合いになるとMCの大山さんが告げた。
「では、いよいよライブが始まりますよ!」
ルクが片手をあげながら紹介した。
「先ずは今大ブレーク中の実力派歌手、神崎ノアさん!」
ミカは両手の指をギュッと胸元で組んだ。
「わあ! 私神崎ノアさんの歌大好き! 楽しみ~!」
フッと会場が真っ暗になったかと思うと、ビートの利いた音楽が流れ出しサイリュームの光り犇めくメイン会場の中を色とりどりのスポットライトが駆け巡った。
どういった仕組みか分からないがメイン会場の風景は生中継の映像にも拘わらず、モニターのミカやルクはリアルに映し出されていた。
恐らく第2、第3会場も同じ様な感じだろう。
こんな事もできちゃう映像技術に、つい感心してしまった。
ところで先程3Dボカロ社の鯛島さんたちの話しが聞こえて来たが、それに依るとどうやら第2、第3会場も結構な人数らしい。
勿論、メイン会場は超満員で人員整理が大変だったとのことだ。
さて、夏フェスの初っ端を飾る神崎ノアのステージが遂に開始された。
真っ暗な巨大モニターの中心に縦の眩しい光の筋が入り、それがじわじわと、まるで左右開きの暗幕が開くが如く両サイドに広がって行った。
眩しかった光りに目が段々慣れて来ると、そこにはポーズを取った神崎ノアがリズムに合わせ小刻みに身体を動かしながら立っていた。
大きな歓声と拍手が鳴り響いた。
神崎ノアが歌い出すと誰もがその美声に吸い込まれた。
私も正直痺れた。
痺れまくってしまった!
控えめな振付けも彼女の世界観にこれ以上ない程フィットしていた。
よほど研鑽したのだろうか。
以前見た彼女の映像から更に更に洗練されていた。
各ボカロの持ち時間は40分。正味35分といったところだろう。
逆算するとだいたい一人四曲くらい。
途中バンドマンの紹介などもありつつ神崎ノアも四曲を歌唱した。
1曲目は『ベストウィッシーズ』。
ファンなら皆知っている乗りのいい曲。
2曲目は『呈色コランダム』。
彼女が得意とするバラード。
3曲目は新曲『オペレーション』。
これはウェブドラマの主題歌になっていた。
ラスト4曲目は『ハッピートレンド』。
これまたファンなら皆が知っているノリノリの楽曲。
彼女の歌はどれも素晴らしく、誰もが認め納得する夏フェスの先鋒だった。
初っ端からこのレベル……会場に来た人たちは一体どう感じたことだろう。
モニターには神崎ノアが去った後のメイン会場が映し出されていた。
ライブ終了後も暫く『ノアコール』が続いており、誰もそこを動こうとしなかった。
すぐ後ろに座っているサナたちの話しが聞こえた。
サナ「凄かったね。神崎ノア!」
ヨナ「うん。格好良かった!」
マナミ「私ファンになっちゃおうかな。センス良すぎ!」
ミナ「今度カラオケで歌お!」
ヨナはスマホで神崎ノアの動画を検索してみた。
サナ「何かいい動画あった?」
ヨナ「う~ん。一部分だけしかない。」
マナミ「まあ、そうだよね。著作権とかあるし。」
ミナ「あとでCD買いに行こうかな。私最初の曲カラオケで歌いたい。」
ユキナ「私3曲目だったかな? あの……。」
マナミ「ああ、あれね。3曲目だったと思う。私もあの歌好き! カッコよかった!」
サナ友たちもかなり気に入った様だ。
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き
【本田家】
本田トオル … サナとサユリの父。国際宇宙ステーションの研究者
本田サエコ … サナとサユリの母。国際宇宙ステーションの研究者
三好クレハ … 本田家の家政婦
本田ススム … サナとサユリの叔父。トオルの弟
【サナの友だち】
山梨ユキナ … サナの友だち。9歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる
栗木ミナ … サナの友だち。9歳。元気。
桃園マナミ … サナの友だち。9歳。おしゃれ。
柿月ヨナ … サナの友だち。9歳。物静か。兄のユタカはアテナのマネージャー
【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。
新米ナビゲーター(仮)
山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手
【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ
<研究開発部>
蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母
卯月カナメ … 第2研究開発部主任。
白鳥マイ … 第3研究開発部主任。天才。息子1人
熊谷トシロウ … 第4研究開発部主任。妻死去。息子1人娘1人。酒好き
午藤コウジ … 第5研究開発部主任。柔道4段。妻、息子1人
蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
未木タツヤ … 第7研究開発部主任。バンドVo.、ビリヤード
龍崎アヤネ … 第8研究開発部主任。文句大好き。彼氏あり
<本部>
金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染
波岡ギンペイ … 営業部部長
営業部社員 … 炭田ヒサエ、塩谷リュウイチ、海原セレン
銅崎ササエ … 人事部部長
人事部社員 … 白木ジン、水谷テナ
鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当
経理部社員 … 浪江リョウ、加硫ナツエ
【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所
小橋レイナ … 社長、代表取締役
黒木ナナ … 副社長。1児の母
須賀ユウタ … 専務。2児の父。車とバイク好き
佐山クロウ … 営業担当。体格がいい
大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ
下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き
竹ヒマリ … 制作担当。絵やイラストがうまい
栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1
小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家
【株式会社コスパルエイド】大手IT企業。3Dボカロの親会社
十勝ジュンイチロウ … 会長。代表取締役。蟹江さんの叔父。十勝エイトの祖父
川上リョウ … 社長
空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染
宗谷マサコ … 取締役
【ボカロ協会】3Dボカロの金本(会長)、蟹江、蛯名も所属している。
市川タクマ … 理事。(株)市川電算の会長。出資者
杉田サラ … 副理事。西方大学の元教授
若益エイガ … 初期。(株)若益水産会長。出資者
大峰ダイタ … 西方大学理工学部の准教授
田所マリア … グラシア大学情報通信技術の元教授。1児の母
須田ユウキ … 放送事業者協会の理事
加藤アリシア … 国際音楽大学声楽科の教授
北野コウゾウ … (株)ムーンレコード情報メディア研究部所長。出資会社
【北都大学アイドル研究会】
十勝エイト … 代表。(株)コスパルエイド会長の孫
日高レンジ … 幹事
旭川セル … 会計
石狩ユキ … 幹事。アマチュアアイドル系バンドのボーカル




