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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
12/624

12 叔父さんとの遭遇

 それから5日後。

 50前後の叔父おじさんがまじまじと私を見つめていた。


 かたわらにはコーヒーらしきものが入ったコップから湯気が立ち込めていた。

 な、何ですか、この状況は……。

「う~ん、これがヒナさんかね。」


 サユリは叔父さんの後ろからこちらを覗き込んでいる。

「そう。ヒナじゃなくてフィナだけど。」

「あ、フィナさんね。こんにちは。」


 私はアイドルっぽく笑顔で答えた。

「こんにちは。初めまして。今日は私の為に来てくださってありがとうございます。よろしくお願いします。」

「あ、はぁ。」

 叔父は面喰った様子で相槌あいづちを打っている。


 フン、そこらのZクラスとは違うのだよ! ドッキリ大成功ってか!

 サナは友だちの家に遊びに行っており不在だった。どうやら姉のサユリが手を廻した様だ。


 叔父は私に尋ねて来た。

「フィナさん。何でもいいから1曲歌ってくれないかな。」


 私が何を歌おうか考えあぐねているとサユリが助け舟を出してくれた。

「まあ取り敢えずあれでいいんじゃない。最初にうたった『ドキドキSP』。パラキューレの。」

「はい、じゃあ歌わせていただきます!」(←アイドル口調)


 流れ出した音楽に合わせて私は歌い始めた。

 もう、サナと一緒に何度も繰り返したダンスは正にキレッキレだった。と思う。

 叔父が顔を紅潮こうちょうさせて、まばたきもせず見入ってくれている。

 何か色んな人に見てもらうのも、か・い・か・ん! て昭和かよ。


 その後、叔父のリクエストで正に昭和の歌だの演歌だの4曲を歌い上げた。

 叔父はボソリと言った。

「すごい、完璧だ。」


 それを聞いてサユリは少し自慢気に言った。

「全然調整もしてないしソフトも入れてないんだよ。」


「う~ん。何だろうねぇ。これは一体……。」

 その後、我に返った様に叔父は言った。

「あ、ごめんなさい。『これ』なんて言ってしまって。」


 私は少し愛想笑いを交えて言った。勿論身振り手振り、表情もアイドルっぽく。

「いえいえ、大丈夫ですよお。」

 前世では無用の長物であった得意の困り眉毛(ハの字)がこんなふうに脚光を浴びる事になるとは!


 叔父はこのさりげない対応にも敏感に反応した。

「いやぁ、笑いを交えながらの話し方と言い、身振り手振りまで……。」

 作戦通り! ✧キラーンッ✧!


「そうだサユリ。ステータス見てみたかい?」

「Zクラスだから、まだステータス見られないと思う。見られるの?」

「あぁ、Zクラスはチュートリアルみたいなもんだからなぁ。と言うか、まだZクラスのままなの? これで?」

「うん。この前クラスを昇格させるイベントには応募しといたんだけどね。まあ後は歌ったり踊ったり、会話も毎日してるんだけど……。」


 叔父はふんふんとうなずきながらプロフィール欄を覗いていた。

「これは? あぁ、プロフィールだけか。クラスは確かにZのままだね。」


【プロフィール】

 レベル    …… 1

 クラス    …… Z

 職業     …… アイドル(ソロ)

 職業レベル  …… 1

 身長     …… 158㎝

 体重     …… 46㎏

 スリーサイズ …… 84/55/78

 秘密     …… 秘密



 あぁ、この人たちにゃあステータスやスキルは見られないんだ。しめしめと。

 叔父は「ん?」とつぶやいた。

「何だ、この『秘密』って……。こんな項目無かったと思うけど。」


「あぁ、何かたまにプロフィールやステータスの項目が変化するらしいって。先輩が言ってたよ。」

「ほう。」

 叔父はスマホで何やら調べ始めた。どうやら攻略サイト的なものを探している様だ。


「これか。『プロフの追加項目・希少項目』ってやつ。」

「うん。まぁ差別化の一環なんだろうけど。」


 叔父は項目を読み上げた。

「特技、趣味、誕生日、星座、血液型、好物、癖、……何か無難なのしかないな。」


「もっと下に『希少項目』ってのがあるでしょ。」

 サユリも同じサイトを開いている様だ。


「あぁ。こっちか。」

 叔父が今度は少し早口で読み上げた。

「え~と何々。お気に入りのアーティスト、カラオケの十八番、好きな異性(同性)のタイプ、嫌いな異性(同性)のタイプ、気が合う人、尊敬する人、仲がいい人、なりたい動物、……」


 それを聞いていたサユリは納得した様に言った。

「うん。確かに、ちょっと突っ込んだ内容ではある。けど普通。」


 叔父は私のプロフィールを再び見直した。

「そうだね。『秘密』ってのはちょっと……違う。」


 サユリもそれに同意した。

「しかも『秘密 …… 秘密』って訳わからないでしょう。」


 叔父は冷めたコーヒーを一口飲むと少し遠い目をして言った。

「もしかしたら、これは暗示なのかもしれないな。秘密は秘密のままでみたいな。」


サユリは苦笑した。

「叔父さんでも解らないか……。」


「何せこのソフトは情報がなかなか出回らないからね。」

 サユリはそれに同意した。

「ゲームなんかとは違うからね。支援ソフトもほとんど制作会社関連のものだし。」


「さて、そろそろ行くよ。」

 叔父さんは椅子から立ち上がり、壁に掛けてあった上着を取った。


 サユリは叔父の方に振り返った。

「あ、もう帰るんだ。何かすいませんでした。」

「いやあ、楽しかったよ。フィナさんもありがとう。」


 叔父は上着を着るとそばにあった自分のかばんを持ち上げた。

「今度、信用のおける奴に聞いてみるよ。」

「うん、助かる。また、連絡するね。」


 そんなこんなで叔父は帰って行った。

 その後、サユリも買い物に行くとかで出て行ってしまった。

「う~む。結局すべては謎のままか……。」

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