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売れない地下アイドル、転生す  作者: ぷぃなつ
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117 小橋社長、ボカロ協会の人と話す

 この世界では私たちが乗車中のバスに限らず、ほとんどの自動車が既に自動運転になっていた。

 そのお陰で事故が起きる事はなく、ほぼ時間通りに到着するのだ。


 しかもこのバス、ほとんど揺れがない上にセンサーで乗員の体調を管理したり、各席にモニターが設置してあって好きな映像や音楽まで視聴できてしまうのだ。

 更にはそれぞれの国の言葉で観光ガイドまでしてくれるのであった。


 どうやら来賓の何人かはその観光ガイドを聞いているらしかった。

 海外の人も何人かいらっしゃるみたいで日本の外の景色を見て盛り上がっていた。


 しかも私には二重音声でその外国人の言葉が翻訳されて聞こえてくるのだ。

 私、バイリンガル!


 ボカロボからは位置的にしっかりと外を眺めることはできなかったが、ちらちらと窓の外に見える風景から自分のいた世界とさほど変化がない様な感じがした。

 ただ、細かい所を見るとビルのあちこちにセンサーだかアンテナだかわからないものが設置してあったり、空中にドローンらしき物体が群れを成して飛んでいたりと相違点もあるにはあった。


 そんな時ミナがサナに聞いて来た。

「ねえ、サナのそれ、帽子?」


 サナはちょっとあせりながら答えた。

「え? あ、うん。クーラー付きの帽子。お試しで使ってんの。」


 サナは私を頭の上に乗せた。

 ミナは物珍しそうにボカロボを見つめた。

「へええ。変わった形してるのね。何か重くない?」


 サナは首を横に振りながら答えた。

「ううん、重くないよ。」


 サナが頭の上に乗せてくれたおかげで外の景色がバッチリ見えるようになった。

 バスは現在高速道路上を走っている様だ。


 高速道路のあちこちに近代的な形をしたセンサーらしきものが等間隔で設置してあった。

 あまり高速道路に乗った経験はないが綺麗になってる感じがした。


 また、バスの中の様子もよく見ることができた。

 しばらくするとボカロ協会の市川タクマさんと加藤アリシアさんがツイストーラスの小橋社長、黒木さん、サユリが座っている向かい合わせの席に移動して来たのが見えた。


 市川さんがニコニコしながら尋ねた。

「ここ、座ってもいいですか?」


 小橋社長が笑顔で対応した。

「あ、どうぞ。」


 市川さんはボカロ協会の理事であり、株式会社市川電算の会長を務めていた。

 この市川電算は市川ココナ、市川カエデなどをようする芸能事務所、光音プロダクションを抱える大企業だ。


 また、加藤さんは国際音楽大学声楽科の教授で3Dボカロ開発初期からこの研究に携わっている重鎮じゅうちんであった。


 まず加藤さんがサユリの隣りに座り、次いで市川さんも席にゆっくり腰を掛けた。

 小橋社長は市川さんに挨拶した。

「先程はゆっくり挨拶もできませんで……。」


 市川さんは笑いながら返事をした。

「いえいえ、こちらこそすいませんね。いきなり。」


 そう言うと市川さんは加藤さんの方をチラリと見た。

 加藤さんはにこやかに話した。

「改めまして。私、国際音楽大学の加藤と申します。」


 小橋社長は少しかしこまって返答した。

「勿論存じております。先程はお名刺も送信していただきましてありがとうございます。」


 3Dボカロ関係者の中でもこの加藤教授の名はかなり知れ渡っていた。

 黒木さんとサユリも少し緊張している様だった。


 加藤さんは笑顔で謙遜けんそんしていた。

「いえ、ただの趣味なんですよ。大学からも注意されてばっかり。」


 小橋社長は驚いた顔で聞き返した。

「ええ? そうなんですか。」


 加藤さんは気さくな感じで話を続けた。

「そう。そりゃあもう最初の頃なんか大学に隠れてやってたのよ。ほら、ばれると面倒くさいでしょう。」


 小橋社長は急な告白に驚いた顔をした。

 サユリと黒木は加藤の滑稽な話しに思わず笑ってしまっていた。


 それを見て小橋社長も一緒に笑った。

「そうなんですか。それはご本人しかわからない大変さですね。」


 加藤さんは微笑みながら右手で空をはたいた。

「まあ、昔の話しなんですけどね。でも今は結構ボカロも市民権を得て来てだいぶやり易くなったわ。」


 市川さんは小橋社長に本題を匂わせる様な発言をした。

「まあ、そんなこんなでうちらも結構歳を取りました。そろそろ次の世代に引き継いでもらわなきゃってね、さっき加藤さんたちとも話してたんですよ。」


 小橋社長はやや上目遣うわめづかいで市川さんの顔を見た。

「何をおっしゃられますか。まだまだお元気じゃないですか。」


 市川さんはお辞儀をしながら話を進めた。

「ありがとうございます。ただ、やはり後継を考えるのも我らの役目ってことでね。」


 加藤さんがかさずに言葉をつないだ。

「ええ、まあ以前からボカロ協会の人たちと話してたんですけどね。小橋さんをボカロ協会にどうかって。」


 小橋社長はいきなりのお話しに困惑している様子だった。

「え、そんな。私なんて……。」


 加藤さんは小橋社長の困惑を解きほぐす様にゆっくりとした口調で釈明した。

「いえ、今すぐってわけじゃないのよ。ただちょっと考えておいてほしいの。」


 市川さんは目をパチクリさせる小橋社長に笑顔でうなずいた。

「ええ、まあいきなり言われてもそりゃ困るでしょうな。」


 小橋社長は二人に質問した。

「なんで私なんかがその……選ばれたんですか?」


 市川さんは小橋社長の目をまっすぐ見てその理由を告げた。

「聞いていると思いますが、私たちも例の"あれ"を見てしまったんですよ。」


 加藤さんは嬉しそうに小橋社長を見た。

「そう。"あれ"をね!」


 市川さんは話しを続けた。

「私たちはね、それに新しい可能性というか時代を感じました。今まで考えたことの無い様な、まさに新しい世界を見た思いがしたんです。そして、ボカロの世界はまだまだ始まったばかりなんだと。それで小橋さんなら立場的にもそれを担うに相応しいのではないかと考えたんです。」


 聞き耳を立てていたミナは小声で尋ねた。

「"あれ"ってファランクスのことかな?」


 サナは分かっていたがえて答えなかった。

 マナミも興味津々だ。

「ファランクスってそんなに凄いんだ。」


 ヨナも内情をある程度兄から聞いていた。

 しかしまだ新生ファランクスの歌は聞けていなかった。


 ヨナはファランクスがイベントライブでちゃんとできるか心配だったが、偉い人がファランクスをあんなにめてくれてると思うと嬉しくて胸が高鳴った。


 小橋社長は只々(ただただ)市川さんたちを見つめて話しを聞いていた。

 黒木さんはその隣りで何度もうなずいていた。


「小橋社長。どうお考えですか。」

 黒木さんからの突然の質問に小橋社長はあわてて反応した。

「え? ええと……。」


 黒木さんは小橋社長の方を向いてきっぱりと言った。

「私はいい話だと思いますよ。社長も考えてみて下さい。」


 小橋社長はしばらく黒木さんを見つめた後、市川さんの方に向き直すとつつしんで返答した。

「わかりました。ちょっと考えてさせていただきます。」


 市川さんと加藤さんは笑顔でうなずいた。

 そこに杉田サラさんがやって来た。

 杉田さんはボカロ協会の副理事で西方大学の元教授だった方だ。


 杉田さんは小橋社長を笑顔で見つめた。

「こんにちは。どう、お話は済んだ?」


 小橋社長は一礼して挨拶した。

「あ、杉田さん。先程はどうも。」


 杉田さんは笑いながら小橋社長の隣に座った。

「そんなにかしこまらないで。私たち、もっとざっくばらんな感じなんだから。」


 加藤さんもその言葉に同意した。

「そう。私たちなんかヲタクの集まりみたいなもんなんだから。ウフフ。」


 市川さんは二人の話を聞いて「ハッハッハ」と笑った。

「そうそう。あんまり深く考えないでください。」


 小橋社長は少し気持ちがほぐれた様だ。

「ああ、そんな感じでいいんですか?」


 杉田さんは大きく頷いた。

「そうよ。いつもこんな感じなんだから。私たち。」


 市川さんは小橋社長に微笑みかけた。

「まあ、うちらもまだまだ頑張らしてもらいますよ。確かに小橋社長さんとこの"あれ"には遠く及びませんが、今回の夏フェスで色々と新しい試みを実施させてもらう予定です。」


 小橋社長はその言葉にうなずくと市川さんに笑顔を向けた。

「そうですか。新しい試み……それは楽しみですね!」

【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。

 私(フィナ・エスカ)… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた


【私のマネージャー】

 本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者

 本田サナ … 私のマネージャー。9歳。サユリの妹。歌が大好き


【本田家】

 本田トオル … サナとサユリの父。国際宇宙ステーションの研究者

 本田サエコ … サナとサユリの母。国際宇宙ステーションの研究者

 三好クレハ … 本田家の家政婦

 本田ススム … サナとサユリの叔父。トオルの弟


【サナの友だち】

 山梨ユキナ … サナの友だち。9歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる

 栗木ミナ … サナの友だち。9歳。元気。

 桃園マナミ … サナの友だち。9歳。おしゃれ。

 柿月ヨナ … サナの友だち。9歳。物静か。兄のユタカはアテナのマネージャー


【ファランクス】ボーカロイド4人のユニット

 アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ(ヨナの兄)

 メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ

 ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ

 ミネルヴァ・エトルリア(ミーネ) … マネージャーは大地ミノル


【私のナビゲーター】

 斎藤節子 … ナビゲーター。部長

 ナミエ … 正式名称C73EHT-R。AIポリスの特殊捜査隊隊長。

      新米ナビゲーター(仮)

 山本春子 … ナビゲーター(自称)。私の喧嘩相手


【株式会社3Dボーカロイド】略して3Dボカロ

<研究開発部>

 蟹江ジュン … 第1研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。2児の母

 卯月カナメ … 第2研究開発部主任。

 白鳥マイ … 第3研究開発部主任。天才。息子1人

 熊谷トシロウ … 第4研究開発部主任。妻死去。息子1人娘1人。酒好き

 午藤コウジ … 第5研究開発部主任。柔道4段。妻、息子1人

 蛯名モコ … 第6研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。

       美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子

 未木タツヤ … 第7研究開発部主任。バンドVo.、ビリヤード

 龍崎アヤネ … 第8研究開発部主任。文句大好き。彼氏あり

<本部>

金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染

 波岡ギンペイ … 営業部部長

  営業部社員 … 炭田ヒサエ、塩谷しおたにリュウイチ、海原セレン

 銅崎ササエ … 人事部部長

  人事部社員 … 白木ジン、水谷テナ

 鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当

  経理部社員 … 浪江なみえリョウ、加硫かりゅうナツエ


【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所

 小橋レイナ … 社長、代表取締役

 黒木ナナ … 副社長。1児の母

 須賀ユウタ … 専務。2児の父。車とバイク好き

 佐山クロウ … 営業担当。体格がいい

 大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ

 下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き

 竹ヒマリ … 制作担当。絵やイラストがうまい

 栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ1

 小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家


【株式会社コスパルエイド】大手IT企業。3Dボカロの親会社

 十勝ジュンイチロウ … 会長。代表取締役。蟹江さんの叔父

 川上リョウ … 社長

 空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染

 宗谷マサコ … 取締役


【ボカロ協会】3Dボカロの金本(会長)、蟹江、蛯名も所属している。

 市川タクマ … 理事。(株)市川電算の会長。出資者

 杉田サラ … 副理事。西方せいほう大学の元教授

 若益エイガ … 初期。(株)若益水産会長。出資者

 大峰ダイタ … 西方せいほう大学理工学部の准教授

 田所マリア … グラシア大学情報通信技術の元教授。1児の母

 須田ユウキ … 放送事業者協会の理事

 加藤アリシア … 国際音楽大学声楽科の教授

 北野コウゾウ … (株)ムーンレコード情報メディア研究部所長。出資会社

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