１１５ 夏フェス初日！
８月１９日金曜日。今日は待ちに待った夏フェスの初日だ。
今日は私の出番特にないし、ゆっくり見学でもさせてもらいましょうかね。
そんな事を思いながら私はいつもの様にソファーで紅茶を飲んでいた。
そろそろ７時半か。みんなも準備ができた頃かな。
今朝は８時に蟹江さんたちがバスで迎えに来てくれるとのこと。
１０分前にはサナ友たちが家に集まる予定だ。
すると早速サナから連絡が入った。
「おはようフィナ。起きてる？」
私は即座にモニターへと顔を出した。
「サナちゃん。おはよう！ ばっちり起きてますよ！」
サナはニコリとして昨日の晩から接続しっ放しのボカロボットの電源を入れた。
「ボカロボの電源入れたよ。」
私は返事をした。
「ＯＫです！ 今ボカロボに移動しますね。」
私は瞬時にボカロボのコックピットへと移動した。
「おはよう、ピーチ。今日はよろしくね！」
ピーチとは私のボカロボ専用ナビゲーターだ。
とても有能であり山本と同じナビゲーターとは思えないほど。
正に月とスッポン……あ、スッポンに悪いか。
ピーチは返答した。
「おはようございます。今日明日は長丁場ですね。節電モード及びマイクオフを実行します。」
「はい。お願いします。」ホント優秀……。
サナはボカロボを頭の上に乗せるとすぐに部屋を出た。
「今日は目立たない様にしないとね。」
そう。今日はボカロボットのロボらしい振る舞いを披露してはならないのだ。
勿論マイクもオフだ。
実はこのボカロボットはまだ試作品でしかも未発表ある為、変に勘繰られると困ってしまう、というか気付かれるわけにはいかないのだ。
もし知られてしまえば他のマネージャーたちも欲しがるだろう。
勿論、提供してあげたいのは山々（やまやま）だが通常のボカロでは制御しきれないかもしれないし下手すると暴走なんて事にもなり兼ねないのだ。
これは私やファランクスが人間並み、またはそれ以上の思考力があるあからこそ使いこなせているのだ。
だから今日はよっぽどの事がない限り私たちは動くことができない。
完全に帽子に成り切らなければならないのだ
カメラワークやロックオン機能は使えるから問題はないであろう。
まあ、今日の所はサナやサユリの頭上でゆっくりライブ鑑賞させてもらうとしますか。
一階には既にサナ友が全員集まっていた。
メンバーは山梨ユキナ、栗木ミナ、桃園マナミ、柿月ヨナ。
それと山梨ユキナの母クミコさんと兄のサダオさんだ。
後、会場には行かないが三人の母親がお見送りに来ていた。
ミナママは栗木カエコさん、マナミママは桃園リホコさん、ヨナママは柿月ヨウさん。
みんな居間のソファーで家政婦のクレハさんが出してくれた麦茶を飲みながらバスが来るのを待っていた。
ミナママが心配そうな顔で声を掛けた。
「ちょっと、あんまり飲み過ぎるとまたトイレ行きたくなるんじゃないの？」
ユキナの母クミコさんが笑顔で言った。
「あ、何かトイレも付いてるみたいよ。」
ミナママとマナミママは驚いた顔をした。
「へえ、そんな豪勢なバスに乗せてもらうんだ。」
サユリが説明を加えた。
「何か親会社の持ってるバスを借りたって言ってましたよ。」
ミナママは怪訝な顔をした。
「親会社……。３Ｄボカロの？」
サユリは返答した。
「はい。コスパルエイドが親会社なんですけど。」
サナとヨナママ以外のみんなが驚きの表情を浮かべた。
「え？ コスパルエイドが親会社なんだ！」
サユリは笑顔で返事をした。
「はい。今日はコスパルエイドの空知副社長も一緒に行くみたいです。」
ミナママはミナの方を向いた。
「あんた粗相のない様にね！ 大丈夫？」
サナは口をとがらせてぼやいた。
「大丈夫よ。挨拶くらいできますから。」
皆がいつもの親子の会話を微笑ましく繰り広げていると、サユリのスマホに連絡が入った。
「はい、今から外に出ます。」
スマホを切るとサユリはみんなに伝えた。
「そろそろバスが着くそうなので外に出ましょうか。」
ミナママはみんなに尋ねた。
「荷物持った？ 忘れ物ない？」
サユリもみんなに確認した。
「みんな認証カードはあるかな？ これが無いとちょっと面倒くさい事になるから。」
全員手を挙げながら「はい！」答えた。サナも元気いっぱいの声で返事した。
「大丈夫です。カードもあります！」
みんながコップ等の片付けをしようとすると家政婦のクレハさんがそれを止めた。
「あ、片付けは私がやっておきますんで。皆さんはもう出発してください。」
みんなはクレハさんにお礼を言ってから居間を出た。
「どうもすみません。ごちそうさまでした。」
子どもたちもクレハさんにお礼を言った。
サユリはクレハさんに留守中のことをお願いした。
「それじゃあ昨日もお願いしましたけどサナの部屋のパソコンは電源を入れっぱなしにしておいてください。」
クレハさんは自信たっぷりに答えた。
「ええ大丈夫ですよ。安心して行ってらっしゃい。」
サユリは笑顔でクレハさんに挨拶すると家の外に出た。
【人物紹介】※参考なので読まなくてもいいです。
私（フィナ・エスカ）… 異世界に転生したら進化型ボーカロイドになっていた
【私のマネージャー】
本田サユリ … 私のマネージャー。大学生。サナの姉。しっかり者
本田サナ … 私のマネージャー。９歳。サユリの妹。歌が大好き
【本田家】
本田トオル … サナとサユリの父。国際宇宙ステーションの研究者
本田サエコ … サナとサユリの母。国際宇宙ステーションの研究者
三好クレハ … 本田家の家政婦
本田ススム … サナとサユリの叔父。トオルの弟
【サナの友だち】
山梨ユキナ … サナの友だち。９歳。優しい。母は料理上手。兄にサダオがいる
栗木ミナ … サナの友だち。９歳。元気。
桃園マナミ … サナの友だち。９歳。おしゃれ。
柿月ヨナ … サナの友だち。９歳。物静か。兄のユタカはアテナのマネージャー
【ファランクス】ボーカロイド４人のユニット
アテナ・グラウクス … マネージャーは柿月ユタカ（ヨナの兄）
メーティス・パルテ … マネージャーは星カナデ
ニーケ・ヴィクトリア … マネージャーは春日クルミ
ミネルヴァ・エトルリア（ミーネ） … マネージャーは大地ミノル
【私のナビゲーター】
斎藤節子 … ナビゲーター。部長
ナミエ … 正式名称C73EHT-R。ＡＩポリスの特殊捜査隊隊長。
新米ナビゲーター（仮）
山本春子 … ナビゲーター（自称）。私の喧嘩相手
【株式会社３Dボーカロイド】略して３Ｄボカロ
＜研究開発部＞
蟹江ジュン … 第１研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。２児の母
卯月カナメ … 第２研究開発部主任。
白鳥マイ … 第３研究開発部主任。天才。息子１人
熊谷トシロウ … 第４研究開発部主任。妻死去。息子１人娘１人。酒好き
午藤コウジ … 第５研究開発部主任。柔道４段。妻、息子１人
蛯名モコ … 第６研究開発部主任。ボカロ協会社内役員。
美人。ヲタク。蟹江の大学講師時代の教え子
未木タツヤ … 第７研究開発部主任。バンドVo.、ビリヤード
龍崎アヤネ … 第８研究開発部主任。文句大好き。彼氏あり
＜本部＞
金本センタロウ … 社長。ボカロ協会会長。空知モモエの幼馴染
波岡ギンペイ … 営業部部長
営業部社員 … 炭田ヒサエ、塩谷リュウイチ、海原セレン
銅崎ササエ … 人事部部長
人事部社員 … 白木ジン、水谷テナ
鯛島テツコ … 経理部部長。研究開発部担当
経理部社員 … 浪江リョウ、加硫ナツエ
【株式会社ツイストーラス】フィナとファランクスが所属する芸能事務所
小橋レイナ … 社長、代表取締役
黒木ナナ … 副社長。１児の母
須賀ユウタ … 専務。２児の父。車とバイク好き
佐山クロウ … 営業担当。体格がいい
大村マツリ … 営業担当。ナイスバディ。おしゃれ
下尾ライト … 制作担当。プラモデルが好き
竹ヒマリ … 制作担当。絵やイラストがうまい
栗原ユウヒ … イベント担当。妹と同居。バツ１
小宮山ネイネ … キャスティング担当。投資家
【株式会社コスパルエイド】大手ＩＴ企業。３Ｄボカロの親会社
十勝ジュンイチロウ … 会長。代表取締役。蟹江さんの叔父
川上リョウ … 社長
空知モモエ … 副社長。金本社長の元上司で幼馴染
宗谷マサコ … 取締役
【ボカロ協会】３Ｄボカロの金本（会長）、蟹江、蛯名も所属している。
市川タクマ … 理事。（株）市川電算の会長。出資者
杉田サラ … 副理事。西方大学の元教授
若益エイガ … 初期。（株）若益水産会長。出資者
大峰ダイタ … 西方大学理工学部の准教授
田所マリア … グラシア大学情報通信技術の元教授。１児の母
須田ユウキ … 放送事業者協会の理事
加藤アリシア … 国際音楽大学声楽科の教授
北野コウゾウ … （株）ムーンレコード情報メディア研究部所長。出資会社
